TSMCが2026年7月16日に発表した決算で、純利益はNT$(新台湾ドル)7,065.6億(約3.3兆円)でした。前年比+77.4%の過去最高です(TSMC・2026年7月16日)。は67.7%で自社の上限すら超え、市場予想(LSEG集計NT$6,326億)を約12%上回っています。そして今回、最新世代の2nmプロセスが初めてウェハ売上の3%として数字に登場しました。

AI需要が「期待」ではなく「決算数値」として現れた四半期です。数字の主役はAIサーバー向けのHPC(高性能計算)です。プラットフォーム別売上の66%を占め、前四半期からさらに20%伸びました。

TSMCは他社の設計を受託製造する会社(「設計と製造を分ける仕組み」)で、その決算はAI半導体需要そのものの体温計になります。この記事では、決算の数字がどれくらい強かったのか、何がそれを生んだのか、次の四半期に何を見ればいいのかを整理します。

ひとことで言うと(初心者向け)

世界の最先端チップのほとんどを作る台湾のTSMCが、4〜6月の3か月だけで約3.3兆円の純利益を出しました。前の年の同じ時期より77%も増えて、過去最高です。理由はシンプルで、AI用のチップを作ってほしいという注文が殺到しているから。しかも売上の3分の2がAIサーバーなどの高性能コンピュータ向けになりました。会社は「次の3か月はもっと売れる」という見通しも出しています。

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構造で言うと(投資家向け)

売上402.0億ドルはガイダンス上限着地、粗利率67.7%・営業利益率60.3%は両方ともレンジを上抜け。EPS(ADRあたり4.31ドル)は市場予想3.80〜3.83ドルを13〜14%上回った。HPCが売上の66%、先端プロセスが77%、2nmが初計上の3%。Q3ガイダンスは売上446〜458億ドルとさらに加速する一方、粗利率ガイダンスは65〜67%とQ2実績から低下しており、海外工場コストと為替を含めた下期の利益率が次の焦点になる。

決算の数字はどれくらい強かったのか

まず実績を、会社側が事前に示していたガイダンス(会社見通し)と並べて確認します(TSMC・2026年7月16日)。

項目2026年Q2実績前年比前四半期比4月時点のガイダンス
売上高(NT$)1兆2,703.8億+36.0%+12.0%—
売上高(米ドル)402.0億ドル+33.7%+12.0%390〜402億ドル
純利益NT$7,065.6億+77.4%+23.4%—
粗利率67.7%—+1.5pt65.5〜67.5%
営業利益率60.3%—+2.2pt56.5〜58.5%
EPS(ADRあたり)4.31ドル+77%—市場予想3.80〜3.83ドル

売上はガイダンスレンジ(390〜402億ドル)の上限ちょうどに着地し、粗利率とはレンジそのものを上に突き抜けました。純利益NT$7,065.6億は四半期として過去最高で、米ドルにするとおよそ224億ドル、日本円で約3.3兆円です(1ドル=147円換算)。市場予想との比較でも、LSEG集計の純利益予想NT$6,326億を約12%上回っています(Trading Key・2026年7月16日)。1株当たりの利益を示す(ADRあたり4.31ドル)も、市場予想3.80〜3.83ドルを13〜14%上回りました。

売上の伸びが+36.0%なのに純利益が+77.4%も増えているのは、利益率が1年で大きく改善したためです。は前年同期の42.7%から55.6%へ上昇しました。つまり「たくさん売れた」だけでなく、「売れたものの儲けの厚みが増した」決算です。

何がこの成長を生んだのか——売上の66%がAIサーバー向けになった

答えはAI需要です。用途別の売上構成をみると、HPC(High Performance Computing=AIサーバー向けの高性能計算チップ)が売上の**66%を占め、前四半期から20%**増えました。

一方でスマートフォン向けは22%と、前四半期比で4%減っています。1年前まで「スマホの会社」でもあったTSMCは、決算の中身ではもうAIインフラの会社です。

製造プロセス別の構成も、その流れを裏づけます。

プロセス世代Q2売上構成比前四半期(Q1)
2nm3%(初計上)0%
3nm30%25%
5nm33%36%
7nm11%13%
7nm以下の先端プロセス合計77%74%

注目は2nmが初めて売上に計上されたことです。構成比3%は小さく見えますが、四半期売上402億ドルの3%は約12億ドル。立ち上げ初四半期としては異例の規模で、CFOのWendell Huang氏は「2nmの急峻な立ち上がり(steep ramp-up)」を今後の成長要因に挙げました(TSMC・2026年7月16日)。

2nm世代がどんな技術で、なぜ顧客が殺到しているのかは「TSMCが2025年に量産した「2nm世代」——同じ速度で電力を最大35%減らした構造の正体」と「2nmは作る前から売り切れていた。TSMC・Intel・Samsung・Rapidus、4陣営の現在地」で解説しています。

月次売上をみると、勢いはむしろ加速しています。6月単月の売上はNT$4,426.8億で前年同月比+67.9%、上半期累計はNT$2兆4,044.8億で前年比+35.6%でした(TSMC・2026年7月13日)。四半期の前年比+36.0%より6月単月の+67.9%のほうがはるかに高い——つまり足元ほど強いということです。

なお4〜6月の月別内訳をみると、4月が約NT$4,103億(前年同月比+約31%と推定)、5月がNT$4,169.75億、6月がNT$4,426.8億と、3か月連続で伸び率が加速していました。この間、TSMC幹部は「AIの需給はまだ非常にタイトで、N3(3ナノ世代)の生産能力は完売状態。今年はすべての主要AI GPU・CPUメーカーがN3を採用している」と述べています(CNBC・2026年7月13日)。NVIDIAのBlackwellやAppleの最上位チップ、Qualcomm・AMDの最先端チップが限られた月産能力を取り合う構図が、四半期を通じて続いていたことになります。

Q3ガイダンスは何を語っているのか

TSMCは7-9月期(Q3)について、446億〜458億ドルという見通しを示しました。Q2実績402.0億ドルに対して**前四半期比+11〜14%**で、過去最高を更新した直後の四半期に、さらに2桁成長を上乗せする計算です。AI需要の減速を心配する声への、数字による回答といえます。

一方で利益率のガイダンスは、粗利率65〜67%・営業利益率56〜58%と、Q2実績(67.7%・60.3%)からやや低い水準に置かれました。為替前提は1米ドル=32台湾ドルで、Q2の実績レート31.60より台湾ドル安方向です。1ドルで交換できる台湾ドルの枚数が増えるほど、台湾ドルは安いと読みます。

台湾ドル高はドル建てで稼ぐTSMCの利益率を圧迫する要因なので、為替前提だけなら利益率にプラスのはず。それでもガイダンスが低めということは、米アリゾナをはじめとする海外工場の立ち上げコストや、2nm急拡大に伴う初期コストを織り込んでいるとみるのが自然です。海外工場がなぜコスト高になるのかは「最先端チップ工場が「1棟2兆円超」になった理由——世界に3社しかない半導体製造の経済学」で解説しています。

もう1つ、この粗利率には別の見どころがあります。TSMCは6月に「7nm以降の先端全ノードで値上げを顧客に通告した」と報じられていました(Culpium・2026年6月23日)。この報道の詳細と注意点は「AppleもNVIDIAも値上げを飲まされる——TSMCが「ウェハ売上の74%」にあたる先端全ノードで値上げ通告と報じられた」で整理しています。値上げが事実なら、効果が数字に出るのは主に2027年以降の交渉分からです。

Q2の粗利率67.7%は値上げ前の実力値であり、ここに値上げが乗るなら利益率の天井はまだ上にあることになります。

投資家はどう見ればいいか

この決算のいちばん重要なメッセージは、AI需要が「期待」から「実績」に変わり続けていることです。売上の66%がHPC、先端プロセスが77%、そして2nmの初計上——数字が並ぶ。AIサーバー投資の恩恵は、NVIDIAのようなチップ設計会社だけでなく、製造を一手に引き受けるTSMCの損益計算書にもそのまま流れ込んでいる。TSMCがこのポジションを握れている理由は「世界は、台湾の1社がなければスマホもAIも作れない」で解説しています。

チェックすべき点も明確です。第一に、Q3の粗利率ガイダンス65〜67%が示すとおり、海外工場コストの重みは今後も増えます。ガイダンスを毎回上抜けてきた会社なので悲観する場面ではありませんが、「利益率のピークはいつか」という問いは残ります。

第二に、AIチップの生産量を実際に決めているのはウェハ製造能力よりも、チップを基板上に高密度に組み合わせる工程の能力です。この供給制約の構図は「AIチップの足を引っぱるのはトランジスタではなく「パッケージ」だった」で解説しています。

第三に、スマートフォン向けが前四半期比4%減という事実です。いまのTSMCはAIが牽引しているため目立ちませんが、売上の2割強を占める柱が縮んでいることは、AI投資が一服した局面での耐久力に関わります。成長の中身が「AI一本足」に寄っていくほど、この決算の再現性はAI向け投資の持続性と一蓮托生になります。

この決算の注意点はなにか

本記事の数値はTSMCのIR発表資料(一次情報)にもとづいていますが、決算発表当日の記事として、確認できていないことも明記しておきます。

まず、決算説明会(アナリスト向けカンファレンスコール)での経営陣コメントの詳細です。通期の売上成長見通しの更新、2026年の工場投資計画、チップ組み立て工程の増強ペース、米国の関税(232条)への言及といった点は、本稿執筆時点で裏取りが済んでいません。これらは追って確認する価値のある論点です。

次に、株式市場の反応(や台湾市場の値動き、アナリストの目標株価修正)も本稿では扱っていません。また、米ドル換算値には揺れがあります。本記事はTSMC公式発表のドル建て売上402.0億ドルを採用していますが、市場レートで換算し直して約396億ドルとする報道もあります。円換算(約3.3兆円)は1ドル=147円の概算であり、厳密な値ではありません。

それでも、売上・利益・利益率・売上構成といった本体の数字はすべて一次資料で確認済みです。「AI需要は本物か」という問いに対して、2026年上半期のTSMCは決算数値で答えました。次の答え合わせは10月中旬のQ3決算です(TSMC・2026年7月16日)。

この記事のまとめ

  • TSMCの2026年Q2決算(7月16日発表)は売上402.0億ドル(前年比+33.7%)・純利益NT$7,065.6億(+77.4%)で過去最高。市場予想を約12%上回った。
  • 粗利率67.7%・営業利益率60.3%は、4月時点の自社ガイダンスレンジの上限を両方とも突き抜けた。純利益率は前年同期の42.7%から55.6%へ改善。
  • HPC(AIサーバー等)が売上の66%(前四半期比+20%)、7nm以下の先端プロセスが77%。2nmが初めて売上の3%(約12億ドル)に計上された。
  • Q3ガイダンスは売上446〜458億ドル(+11〜14% QoQ)と加速が続く一方、粗利率は65〜67%とQ2実績から低下。海外工場コストと下期の利益率が次の焦点。
  • 決算説明会での通期見通し・設備投資計画・CoWoS増強・関税への言及、および株価反応は本稿執筆時点で未確認。次の答え合わせは10月中旬のQ3決算。
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よくある質問(FAQ)

Q.TSMCの2026年第2四半期決算の結果はどうでしたか?+

売上高はNT$1兆2,703.8億(米ドル建て402.0億ドル・前年比+33.7%)、純利益はNT$7,065.6億(前年比+77.4%)で四半期として過去最高でした。粗利率67.7%・営業利益率60.3%はいずれも自社ガイダンスの上限を超え、純利益はLSEG集計のアナリスト予想NT$6,326億を約12%上回りました。

Q.TSMCの決算が好調だった理由は何ですか?+

AIサーバー・データセンター向けのHPC(高性能計算)需要です。HPCは売上の66%を占め、前四半期比で20%増えました。プロセス別では7nm以下の先端プロセスが売上の77%を占め、最新の2nmが初めて3%計上されています。一方でスマートフォン向けは22%と前四半期比4%減でした。

Q.2nmプロセスの売上はどれくらいですか?+

2026年第2四半期に初めてウェハ売上の3%として計上されました。四半期売上402億ドルの3%なので約12億ドル規模です。CFOのWendell Huang氏は2nmの「急峻な立ち上がり(steep ramp-up)」を今後の成長要因に挙げており、構成比は今後さらに高まる見通しです。

Q.TSMCの次の四半期(Q3)の見通しはどうですか?+

売上高446億〜458億ドル(前四半期比+11〜14%)、粗利率65〜67%、営業利益率56〜58%です(為替前提1米ドル=32台湾ドル)。売上はさらに加速する一方、粗利率ガイダンスはQ2実績の67.7%よりやや低く、海外工場の立ち上げコストなどを織り込んだ水準になっています。

用語集

粗利率(売上総利益率)/ gross margin
売上から原価(作るのにかかった費用)を引いた儲けが、売上に対して何%あるかを示す割合。
営業利益率/ operating margin
本業の儲け(営業利益)が、売上に対して何%あるかを示す割合。
ガイダンス(業績予想)/ guidance
会社が自ら発表する、次の四半期や通期の売上・利益の見通し。
EPS(1株当たり利益)/ Earnings Per Share
会社の儲け(純利益)を、発行している株式の数で割った金額。1株を持っていたら、いくらの儲けが対応するかを示す。
ADR(米国預託証券)/ American Depositary Receipt
外国企業の株式を、米国の投資家がドルで売買できるようにした証券。原株を預けた証券会社が代わりに発行する。
純利益率/ net margin
純利益が、売上に対して何%あるかを示す割合。
売上高/ revenue / net sales
会社が商品やサービスを売って得た金額の合計。利益を引く前の数字。
純利益/ net income
売上からすべての費用・税金を差し引いて、会社に最終的に残る儲け。

参考資料・引用元

  1. TSMC Second Quarter Earnings Results 2026(2Q26決算リリース・経営報告資料)一次情報
    TSMC(IR・一次情報)(2026-07-16)— 使用箇所: 2Q26実績:売上NT$1兆2,703.8億(US$402.0億・前年比+33.7%/NT$+36.0%・前四半期比+12.0%)・純利益NT$7,065.6億(+77.4%・過去最高)・EPS NT$27.25(ADR $4.31)・粗利率67.7%/営業利益率60.3%/純利益率55.6%・実績為替31.60/プロセス別2nm 3%(初計上)・3nm 30%・5nm 33%・7nm 11%(先端77%)/HPC 66%(QoQ+20%)・スマホ22%(QoQ-4%)/Q3ガイダンス売上US$446〜458億・GM65〜67%・OM56〜58%(為替前提32)・CFO Wendell Huangの2nm「steep ramp-up」コメント
    https://investor.tsmc.com/english/quarterly-results/2026/q2
  2. TSMC 1Q26決算リリース(Form 6-K・ガイダンス含む)一次情報
    TSMC/SEC EDGAR(一次情報)(2026-04-16)— 使用箇所: 比較基準の1Q26実績(売上NT$1兆1,341.0億/US$359.0億・純利益NT$5,724.8億・粗利率66.2%・3nm 25%/5nm 36%/7nm 13%・HPC 61%)および4月時点の2Q26ガイダンス(売上US$390〜402億・GM65.5〜67.5%・OM56.5〜58.5%・為替前提31.7)=実績のガイダンス対比の根拠
    https://www.sec.gov/Archives/edgar/data/1046179/000104617926000199/a1q26e_withguidancexfinal.htm
  3. TSMC June 2026 Revenue Report一次情報
    TSMC(プレスリリース・一次情報)(2026-07-13)— 使用箇所: 2026年6月単月売上NT$4,426.8億(前月比+6.2%・前年同月比+67.9%)・1〜6月累計NT$2兆4,044.8億(前年同期比+35.6%)
    https://pr.tsmc.com/english/news/3323
  4. TSMC Q2 Profit Jumps 77%, Hits Record High報道
    Trading Key(2026-07-16)— 使用箇所: LSEG SmartEstimateアナリスト予想純利益NT$6,326億との対比(実績が約12%上回り)・コンセンサスEPS(ADRあたり3.80〜3.83ドル)対比の予想超え幅の報道確認
    https://www.tradingkey.com/analysis/stocks/us-stocks/262033904-tsmc-q2-profit-77-percent-record-hightradingkey

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