サムスンのファウンドリ(受託製造)事業は、「Samsung、半導体受託の黒字化は2028年。2nm歩留まりで見えたTSMCとの差」で扱ったように、苦戦が続いてきました。今回の提携は、その2nmプロセスに新たな動きをもたらすものです。半導体そのものの基本的な仕組みは「半導体とは、電気を「通す・通さない」を切り替えられる物質——それだけの性質が世界を動かしている」で解説しています。
サムスンとArmが、スマホの中でAIを直接処理する『頭脳』チップを、最先端の2nmという技術で一緒に作ると報じられました。Armは設計の中核部分を、サムスンは実際にチップを作る部分を担当します。OpenAIが採用するという観測が報じられていますが、当事者の確認はありません。
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報道ベースでSamsung×Armがオンデバイス向けAIアクセラレータを2nm GAAで共同開発(2026年9月報道)。ArmがNREを8月末承認し正式始動。役割はArm=アーキテクチャ/RTL、Samsung System LSI=設計統合、Samsung Foundry=製造・商用化。OpenAI採用観測は3社とも未確認、2026年6月のSamsung-OpenAI交渉停滞報道と整合しない点に留意。Arm株はプレマーケットで2.5〜3%上昇と報道。サムスンファウンドリの2nm実績積み上げ材料となり得る。
なぜサムスンとArmは今、2nmでAIチップを共同開発するのか
サムスン電子とArmは、2nmプロセスを使ったオンデバイスAI向けSoC(システムオンチップ)の共同開発を進めていると複数メディアが報じています。Armが開発費(NRE:Non-Recurring Engineering、量産前の設計・検証にかかる一時費用)を8月末に承認し、研究が正式に始動したとTradingKeyが報じています。
プロセスには2nmの(Gate-All-Around)が採用される計画と報じられています。2nmという数字が何を意味するかは「2nmは、もう「2ナノの長さ」を意味していなかった」で解説しています。
何がArmの担当で、何がサムスンの担当なのか
報道によれば、役割分担は明確です。Armがオンデバイス向けAIアクセラレータのアーキテクチャや(回路の設計データ)など中核の設計技術を提供し、サムスンのSystem LSI部門が設計統合を、部門が製造・商用化を担う構図です。
なぜ「オンデバイスAI」を狙うのか
オンデバイスAIとは、クラウドのサーバーに頼らず、スマートフォンなどの端末内でAI処理を完結させる方式です。応答速度が速く、通信環境に左右されにくいという利点があります。端末内でAI処理を担うNPU(AI専用回路)の進化は「スマホに搭載されて7年——NPUが0.6TOPSから50TOPSへ成長した理由」で扱っており、今回の2nmチップも、その延長線上にある取り組みです。
OpenAIが顧客候補と噂される背景は何か
一部メディアは、OpenAIが今回のチップの採用候補になり得るとの観測を報じています。ただし、サムスン・Arm・OpenAIのいずれも、2026年9月時点でこの観測を公式には確認していません。
むしろ2026年6月には、サムスンとOpenAIのカスタムAIチップ交渉が「戦略的な相違」で行き詰まっているとの報道もありました。時系列的に整合しない情報であり、OpenAI採用の観測は確定事実ではなく、あくまで報道ベースの噂として扱う必要があります。
なお、OpenAI Koreaのハリソン・キム氏は2026年9月9日のソウル記者会見で、サムスンとの次世代チップ共同開発・研究に言及したとTechTimesが報じました。ただしこれは、Broadcomを介したデータセンター向けAI推論アクセラレータをSamsung Foundryで製造する別件です。本記事が扱うArm設計のオンデバイス向け2nmチップとは異なるプロジェクトであり、この発言でOpenAI採用が確認されたことにはなりません。
TSMC追撃に苦しむサムスンファウンドリにとって、この提携はどんな意味を持つのか
サムスンのファウンドリ事業は、2nmのでTSMCに劣後し、黒字化が2028年にずれ込むと見られてきました。Armという有力な設計パートナーを2nmプロセスに迎えられれば、受託製造の実績・信頼性を積み上げる材料になり得ます。複数の報道によれば、発表を受けてArm株価は市場で2.5〜3%程度上昇したと伝えられています。
Armの命令セット設計がスマホの省電力性を支えてきた仕組みは「「x86」と「Arm」——命令セットが違うだけで、スマホとPCの消費電力がこれほど変わる」で扱っています。
この記事のまとめ
- サムスン電子とArmは、2nmプロセスでオンデバイスAI向けSoCを共同開発すると2026年9月前後に複数メディアが報じた。
- Armがオンデバイス向けAIアクセラレータのアーキテクチャ・RTLなど中核設計技術を提供し、サムスンが設計統合・製造・商用化を担う役割分担とされる。
- プロセスは2nmのGAA(Gate-All-Around)トランジスタを採用する計画と報じられている。
- OpenAIが採用するとの観測が一部で報じられているが、サムスン・Arm・OpenAIいずれも公式には確認していない。
- 報道を受け、Arm株価は市場で2.5〜3%程度上昇したと伝えられた。
この記事のまとめ
- サムスン電子とArmは、2nmプロセスでオンデバイスAI向けSoCを共同開発すると2026年9月前後に複数メディアが報じた。
- Armがオンデバイス向けAIアクセラレータのアーキテクチャ・RTLなど中核設計技術を提供し、サムスンが設計統合・製造・商用化を担う役割分担とされる。
- プロセスは2nmのGAA(Gate-All-Around)トランジスタを採用する計画と報じられている。
- OpenAIが採用するとの観測が一部で報じられているが、サムスン・Arm・OpenAIいずれも公式には確認していない。
- 報道を受け、Arm株価は市場で2.5〜3%程度上昇したと伝えられた。
よくある質問(FAQ)
Q.サムスンとArmは何を共同開発するのですか?+
2nmプロセスを使ったオンデバイスAI向けSoC(システムオンチップ)です。報道によれば、Armがオンデバイス向けAIアクセラレータのアーキテクチャ・RTL(回路設計データ)など中核の設計技術を提供し、サムスンのSystem LSI部門が設計統合を、Foundry部門が製造・商用化を担う役割分担とされています。
Q.なぜ「オンデバイスAI」を狙うのですか?+
オンデバイスAIとは、クラウドのサーバーに頼らず、スマートフォンなどの端末内でAI処理を完結させる方式です。応答速度が速く、通信環境に左右されにくいという利点があります。端末内でAI処理を担うNPU(AI専用回路)の進化は[スマホに搭載されて7年——NPUが0.6TOPSから50TOPSへ成長した理由](/articles/npu-on-device-ai)で扱っています。
Q.OpenAIが採用するというのは本当ですか?+
2026年9月時点で確認できていません。一部メディアはOpenAIが顧客候補になり得るとの観測を報じていますが、サムスン・Arm・OpenAIのいずれも公式には確認していません。むしろ2026年6月には、サムスンとOpenAIのカスタムAIチップ交渉が「戦略的な相違」で行き詰まっているとの報道もあり、時系列的に整合しない情報として注意が必要です。なお、OpenAI Korea幹部が2026年9月9日にサムスンとの次世代チップ協業に言及したと報じられました。ただしこれはBroadcom経由のデータセンター向けAI推論アクセラレータの話で、今回のオンデバイス向け2nmチップとは別のプロジェクトです。
Q.この提携はサムスンのファウンドリ事業にとってどんな意味がありますか?+
サムスンのファウンドリ(受託製造)事業は、2nmの歩留まりでTSMCに劣後し黒字化が2028年にずれ込むと見られています。Armという有力な設計パートナーを2nmプロセスに迎えられれば、受託製造の実績・信頼性を積み上げる材料になり得ます。
用語集
- GAA(ゲートオールアラウンド)/ Gate-All-Around
- チャネルを上下左右の全周からゲートで囲む最先端トランジスタ。FinFETよりさらに電気の漏れを抑えられる。
- ファウンドリ/ foundry
- 他社が設計した半導体を、受託して製造する工場。代表はTSMC。
- IP(設計資産)/ Intellectual Property
- 再利用できる回路の設計図。CPUの基本設計などを各社にライセンスする。
- 歩留まり/ yield ヨミ:ぶどまり
- 1枚のウェハーから取れるチップのうち、欠陥のない良品の割合。
- トランジスタ/ transistor
- 電気のスイッチ。オン/オフで「0と1」を表し、計算と記憶の最小単位になる。
参考資料・引用元
- Arm, Samsung working together on next-gen 2nm chips, will co-optimize Cortex-A and Cortex-X cores for Gate-All-Around transistors報道Tom's Hardware(2026-09)— 使用箇所: サムスン・Armによる2nm GAAプロセスでのオンデバイスAIチップ共同開発の報道見出し(本文はペイウォールのため一部未確認)https://www.tomshardware.com/pc-components/cpus/arm-samsung-working-together-on-next-gen-2nm-chips-will-co-optimize-cortex-a-and-cortex-x-cores-for-gate-all-around-transistors
- Samsung Electronics partners Arm to develop next-generation on-device AI chip報道TradingKey(2026-09)— 使用箇所: Armの開発費(NRE)8月末承認、役割分担(Arm=アーキテクチャ提供、Samsung=設計統合・製造)、Arm株価上昇(2.5〜3%)の報道https://www.tradingkey.com/analysis/stocks/us-stocks/262151206-amsung-electronics-partners-arm-develop-next-generation-device-ai-chip-tradingkey
- Arm, Samsung AI chip 2nm collaboration報道CryptoBriefing(2026-09)— 使用箇所: Arm株価上昇に関する裏付け、OpenAI顧客候補観測が未確認情報であることの確認https://cryptobriefing.com/arm-samsung-ai-chip-2nm-collaboration/
- OpenAI Confirms Samsung Chip Program, Samsung Has Half Its Best Node Reserved For Its Own Memory報道TechTimes(2026-09-10)— 使用箇所: OpenAI Korea幹部Harrison Kim氏が2026年9月9日のソウル記者会見でサムスンとの次世代チップ共同開発・研究に言及したと報道。対象はBroadcom経由のデータセンター向けAI推論アクセラレータ(Samsung Foundry製造)で、オンデバイス向けではない点、Samsung 4nmの過半が自社HBM4向けに予約済みである点を報道(報道ベース)https://www.techtimes.com/articles/327186/20260910/openai-confirms-samsung-chip-program-samsung-has-half-its-best-node-reserved-its-own-memory.htm
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