半導体メーカーは、6つの役割で見ると一気にわかります。チップを「設計する会社」「製造する会社」「メモリを作る会社」「製造装置を作る会社」「材料を作る会社」「設計ソフト(EDA)を作る会社」です。NVIDIAもTSMCもASMLも信越化学も、すべてこの6つのどこかに位置しています。1社で全部やる会社はもう存在せず、各役割を別々の企業が分け合っているのが、この産業の最大の特徴です。

「半導体メーカーといえばどこ?」と聞かれて、NVIDIA・TSMC・Intel・Samsungあたりは浮かんでも、その関係はわかりにくいものです。実はこの4社は、まったく違う役割を担っています。この記事は、半導体業界を役割別に整理した「全体地図」です。各役割の代表企業と、2024年の売上・シェアの数字を並べ、どこをどの会社が握っているか、そして日本企業がどこで世界の急所を押さえているかを一望できるようにします。

ひとことで言うと(初心者向け)

半導体の会社は6種類に分かれます。設計だけする会社(NVIDIA)、作る会社(TSMC)、メモリ専門(SK hynix)、製造に使う機械を作る会社(ASML・東京エレクトロン)、材料を作る会社(信越化学)、設計用ソフトを作る会社(Synopsys)です。1社で全部はやらず、世界中の会社が役割を分け合って1個のチップを作っています。日本は機械と材料で世界トップクラスです。

構造で言うと(投資家向け)も見る
構造で言うと(投資家向け)

役割ごとに資本構造と堀が異なります。設計(ファブレス)は低capex・高粗利、製造(ファウンドリ)は巨額capex×規模、装置(ASML露光独占)・EDA(Synopsys+Cadenceで6割超)・材料(信越/SUMCOがウェハー過半)は寡占による高い参入障壁が特徴。2024年売上首位はNVIDIA(767億ドル)、製造受託はTSMCがシェア67.1%。日本勢は装置・材料という上流の独占ポイントで高い競争力を持ちます。

半導体メーカーは、どんな役割に分かれているのか

半導体メーカーは、大きく6つの役割に分かれます。設計(ファブレス)、製造(ファウンドリ・IDM)、メモリ、製造装置、材料、EDA(設計ソフト)です。1個のチップは、この6つの役割を担う別々の会社が分業して初めて完成します。

下の表が、半導体業界の全体地図です。「どの役割を、どの会社が担っているか」を一望できます。

役割何をするか代表企業日本企業
① 設計(ファブレス)チップを設計し製造は外注NVIDIA, AMD, Qualcomm, Broadcom, Apple(少数)
② 製造(ファウンドリ)他社の設計を受託製造TSMC, Samsung, Intel Foundryラピダス(建設中)
② 製造(IDM)設計も製造も自社Intel, Texas Instrumentsルネサス, ソニー(イメージセンサ)
③ メモリDRAM・NANDを設計製造Samsung, SK hynix, Micronキオクシア
④ 製造装置チップを作る機械ASML, Applied Materials, Lam, KLA東京エレクトロン, アドバンテスト, ディスコ
⑤ 材料ウェハー・薬品・ガス(海外比率低い)信越化学, SUMCO, JSR, レゾナック, 味の素, JX金属
⑥ EDA設計用ソフトSynopsys, Cadence, Siemens(少数)

役割ごとに、儲け方も参入障壁もまったく違います。設計は身軽で高利益、製造は巨額の設備投資が必要、装置・材料・EDAは少数の会社が市場を握る寡占——この構造を、ここから1つずつ見ていきます。3つのビジネスモデルの違いは「半導体は、設計する会社と作る会社に分かれている」で詳しく整理しています。

設計を担うのはどの会社か

設計を担うのは、工場を持たず設計だけを行う企業です。ファブレスとは、チップの回路を設計し、製造は外部の工場に委託する会社のことです。

代表はNVIDIA・AMD・Qualcomm・Broadcom・Appleです。NVIDIAはAI向けGPUで、2024年に半導体売上767億ドルを記録し世界1位になりました(Gartner)。AMDはCPUとGPU、Qualcommはスマホの頭脳となる統合チップ(SoC)を設計します。Broadcomは通信チップと特定用途向けに専用設計したカスタムチップ、AppleはiPhone・Mac用の自社チップを手がけます。いずれも自社工場を持たず、製造はTSMCなどに委託しています。

ファブレスの強みは、数兆円かかる工場を建てずに済むため資本が軽く、利益率が高いことです。つまり、設計の付加価値がそのまま利益に変わります。AI向けチップの中身は「最新チップは、たった3社のソフトがなければ設計できない」とあわせて読むと、設計から製造への流れがつかめます。

製造を担うのはどの会社か

製造を担うのは、とIDMの2タイプです。ファウンドリとは、自社製品を持たず他社の設計を受託して製造だけを行う会社のことです。

ファウンドリの代表はTSMC・Samsung・Intel Foundryです。TSMCは2024年第4四半期にファウンドリ世界シェア67.1%を記録し、独走状態にあります(TrendForce)。2位のSamsungは8.1%、3位の中国SMICは5.5%で、先端品で勝てるのは実質TSMCだけです。なぜTSMC1社に集中したのかは「世界は、台湾の1社がなければスマホもAIも作れない」で解説しています。

一方IDM(Integrated Device Manufacturer=設計から製造まで自社で一貫して行う垂直統合型メーカー)の代表はIntelとTexas Instrumentsです。日本ではルネサス(車載・産業用マイコン)やソニー(で世界首位)がこのタイプにあたります。製造の全体像と工程の分業は「半導体産業はどう動くのか」で図解しています。

半導体バリューチェーン(工程をクリック)

上流から下流へ、工程をクリックすると主要企業が表示されます。

ファウンドリ(製造)参入障壁 極めて高い台湾 / 韓国

設計図どおりにシリコン上へ回路を作り込む(前工程)

主要企業
TSMC / Samsung / Intel / SMIC
地政学リスク
最先端は台湾TSMCに集中。地政学リスクの中心

色は主たる生産地域。半導体は1社・1国で完結しない国際分業です。
※ メモリ(DRAM/NAND)は「工程」ではなく製品の種類なので、この流れには含めていません。

製造後のチップを切り出して封止する工程は、(このような工程を専門に受託する企業。台湾ASEや米Amkorが代表)が担います。AIチップで重要性が増した先端は「微細化が限界でも、チップはまだ速くなる」で扱っています。

メモリを作るのはどの会社か

メモリを作るのは、Samsung・SK hynix・Micron・キオクシアの少数の会社です。メモリとは、データを記憶する半導体で、主に(高速で一時記憶する作業用メモリ)と(電源を切っても消えない保存用メモリ)の2種類があります。

DRAMはSamsung・SK hynix・Micronの3社でほぼ独占、NANDはこの3社にキオクシア(旧東芝メモリ)とWestern Digitalが加わります。SK hynixはAI向けの高速メモリで先行し、2024年に半導体売上を大きく伸ばしました(Gartner)。

メモリは設計と製造を一貫して自社で行うIDM型で、価格が需給で大きく上下する「市況産業」です。実際、2024年はAIサーバー向け需要でメモリ価格が急回復し、Samsungが半導体売上657億ドルで世界2位に返り咲きました(Gartner)。なぜAIでメモリが奪い合いになったかは「AIが買い占めたのはGPUだけじゃなかった」で詳しく解説しています。日本のNAND大手キオクシアの攻めの投資局面は「Kioxiaが3年で1.4兆円投資。北上に第3棟も、日本のNANDが復活する局面」で扱っています。

製造装置を作るのはどの会社か

製造装置を作るのは、ASML・Applied Materials・Lam Research・東京エレクトロン・KLAの「5強」です。製造装置とは、チップを作る各工程(回路パターンの転写・薄膜の形成・不要部分の削り取り・洗浄・検査など)で使う精密機械のことです。

特にオランダのASMLは、最先端チップに必須の露光装置(回路パターンを光で焼き付ける装置)を独占しており、2024年の売上は283億ユーロでした(ASML / Applied Materials / KLA)。米Applied Materialsは薄膜形成や微細加工など最も幅広い装置を手がけ、2024会計年度の売上は271.8億ドルでした。米Lamは微細加工と薄膜形成、米KLAは検査・計測で同年98.1億ドルを記録しました(ASML / Applied Materials / KLA)。

日本勢も装置の急所を握ります。東京エレクトロンは薄膜形成・微細加工・塗布現像で世界上位にあり、2025年3月期の売上は約2.43兆円でした(Tokyo Electron Ltd.)。さらにアドバンテストは完成したチップを検査するテスタで世界シェア約58%、ディスコはウェハーの切断・研削装置で高シェアを握ります(Advantest Corporation)。日本の装置産業の全体像は「半導体は、日本の装置がなければ作れない」でまとめています。市場全体の最新統計は「世界の半導体製造装置、2四半期連続で過去最高——2026年4-6月期405億ドル、前年比23%増」で扱っています。

材料を作るのはどの会社か

材料を作るのは、日本企業が圧倒的に強い分野です。半導体材料とは、チップの土台になるシリコンや、製造工程で使う薬品・ガス・絶縁材などのことです。

シリコンウェハーでは信越化学とSUMCOが世界シェアの過半を握ります。回路を焼き付ける際に塗る感光材(レジスト)では、JSR・東京応化工業・信越化学など日本勢が世界をほぼ独占します。さらに半導体パッケージの絶縁材ABF(味の素ビルドアップフィルム)は味の素が世界シェアのほぼ全量を供給し、研磨材やめっき薬品でもレゾナックやJX金属が強みを持ちます。

材料は1つひとつの部材市場は小さくても、特定の品目を数社で独占する「急所」になっています。半導体製造が止まるとサーバーからスマホまで作れなくなるため、この上流の独占は地政学的にも重要です。日本の材料企業の全体像は「チップの土台も塗る薬も、ほとんど日本製だった」で詳しく解説しています。

EDA(設計ソフト)を作るのはどの会社か

EDA(設計ソフト)を作るのは、Synopsys・Cadence・Siemens EDAの3社です。とは、数百億個という膨大な数の回路素子を持つチップを人手では設計できないため、回路設計・検証・配置配線を自動化するソフトウェアのことです。

EDA市場はこの3社にほぼ集約され、2024年の世界シェアはSynopsysが31%、Cadenceが30%、Siemens EDAが13%で、3社合計で約74%を占めます(TrendForce)。NVIDIAやAppleのような最先端チップは、この3社のソフトなしには設計できません。

EDAは、半導体産業の「最上流」にあたります。装置や材料より目立ちませんが、ここを米国の数社が押さえていることが、輸出規制の効きやすさにもつながっています。設計の自動化の中身は「最新チップは、たった3社のソフトがなければ設計できない」で詳しく扱っています。

この記事のまとめ

  • 半導体メーカーは6つの役割に分かれる。設計(ファブレス)・製造(ファウンドリ/IDM)・メモリ・製造装置・材料・EDAで、それぞれ別の会社が世界を分け合っている。
  • 売上の世界1位は2024年にNVIDIA(767億ドル)。2位Samsung(657億ドル)、3位Intel(498億ドル)。製造受託に限ればTSMCが世界シェア67.1%で独走している。
  • 製造装置はASML(露光を独占)・Applied Materials・東京エレクトロン・Lam・KLAの5強、設計ソフトのEDAはSynopsys・Cadence・Siemensの3社にほぼ集約されている。
  • 日本企業は装置(東京エレクトロン・アドバンテスト・ディスコ)と材料(信越化学・SUMCO・JSR・味の素)で世界の急所を握る。最終製品より上流の部材で強い。
  • 役割によって利益率と参入障壁が大きく異なる。設計は高利益率、製造は巨額の設備投資、装置・材料・EDAは寡占による高い堀が特徴になる。

この記事のまとめ

  • 半導体メーカーは6つの役割に分かれる。設計(ファブレス)・製造(ファウンドリ/IDM)・メモリ・製造装置・材料・EDAで、それぞれ別の会社が世界を分け合っている。
  • 売上の世界1位は2024年にNVIDIA(767億ドル)。2位Samsung(657億ドル)、3位Intel(498億ドル)。製造受託に限ればTSMCが世界シェア67.1%で独走している。
  • 製造装置はASML(露光を独占)・Applied Materials・東京エレクトロン・Lam・KLAの5社、設計ソフトのEDAはSynopsys・Cadence・Siemensの3社にほぼ集約されている。
  • 日本企業は装置(東京エレクトロン・アドバンテスト・ディスコ)と材料(信越化学・SUMCO・JSR・味の素)で世界の急所を握る。最終製品より上流の部材で強い。
  • 投資の見方は『どの役割を担う会社か』で利益率と参入障壁が変わる点。設計は高利益率、製造は巨額capex、装置・材料・EDAは寡占による高い堀が特徴になる。
スポンサーリンク

よくある質問(FAQ)

Q.半導体メーカーは、どんな役割に分かれていますか?+

大きく6つに分かれます。(1)設計だけを行うファブレス(NVIDIA・AMD・Qualcomm・Broadcom・Apple)、(2)製造を受託するファウンドリ(TSMC・Samsung・Intel Foundry)、(3)メモリ(Samsung・SK hynix・Micron・キオクシア)、(4)製造装置(ASML・Applied Materials・東京エレクトロン)、(5)材料(信越化学・SUMCO・JSR)、(6)設計ソフトのEDA(Synopsys・Cadence)です。

Q.世界最大の半導体メーカーはどこですか?+

売上ベースでは、2024年にNVIDIAが半導体売上767億ドルで世界1位になりました(Gartner、2025年4月発表)。AI向けデータセンター需要が急増したためです。2位はSamsung(657億ドル)、3位はIntel(498億ドル)です。製造の受託(ファウンドリ)に限ればTSMCが2024年第4四半期に世界シェア67.1%で圧倒的な首位です。

Q.日本の半導体メーカーはどこで強いですか?+

製造装置と材料の分野で世界トップクラスです。装置では東京エレクトロン(成膜・エッチング・塗布現像)、アドバンテスト(テスタで世界シェア約58%)、ディスコ(切断・研削)が強みを持ちます。材料では信越化学・SUMCOがシリコンウェハーで世界シェアの過半、JSR・東京応化がフォトレジスト、味の素がパッケージ用絶縁材ABFで高シェアを握ります。メモリではキオクシアがNANDの主要メーカーです。

用語集

ファブレス/ fabless
自社で工場を持たず、設計だけを行う会社。製造はファウンドリに委託する。
ファウンドリ/ foundry
他社が設計した半導体を、受託して製造する工場。代表はTSMC。
DRAM/ Dynamic Random Access Memory
電源を切ると消える、高速な作業用メモリ。CPUやGPUが計算中のデータを一時的に置く。
NAND(NANDフラッシュ)/ NAND flash
電源を切ってもデータが消えない記憶装置。SSDやスマホのストレージに使われる。
ウェハー/ wafer
半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。
EDA/ Electronic Design Automation
半導体の回路を設計するための専用ソフトウェア。これなしに最新チップは作れない。
OSAT/ Outsourced Semiconductor Assembly and Test
チップの組み立て(パッケージング)と検査を専門に請け負う会社。後工程の外部委託先。
イメージセンサ/ image sensor / CMOS
光を電気信号に変換して画像にする半導体。スマホやデジタルカメラの「目」にあたり、現在はCMOS型が主流。
パッケージング(先端パッケージング)/ advanced packaging
切り出したチップを基板に載せ、配線し、保護する工程。複数のチップを高密度につなぐ先端版もある。

参考資料・引用元

  1. Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 21% in 2024調査会社
    Gartner(2025-04)— 使用箇所: 2024年の半導体メーカー売上世界ランキング(NVIDIA767億ドルで1位、Samsung657億ドル、Intel498億ドル)
    https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2025-04-10-gartner-says-worldwide-semiconductor-revenue-grew-21-percent-in-2024
  2. 4Q24 Global Top 10 Foundries Set New Revenue Record, TSMC Leads in Advanced Process Nodes調査会社
    TrendForce(2025-03)— 使用箇所: 2024年Q4のファウンドリ世界シェア(TSMC67.1%、Samsung8.1%、SMIC5.5%)
    https://www.trendforce.com/presscenter/news/20250310-12510.html
  3. ASML 2024 Annual Results / Applied Materials FY2024 / KLA FY2024一次情報
    ASML / Applied Materials / KLA (IR)(2025)— 使用箇所: 製造装置主要各社の2024年売上(ASML283億ユーロ、AMAT271.8億ドル、KLA98.1億ドル、Lam約143億ドル)
    https://www.asml.com/en/news/press-releases/2025/q4-2024-financial-results
  4. Tokyo Electron Integrated Report 2025 / Financial Review一次情報
    Tokyo Electron Ltd. (IR)(2025)— 使用箇所: 東京エレクトロンの2025年3月期売上(約2.43兆円)と装置領域での世界的地位
    https://www.tel.com/ir/library/report/index.html
  5. Advantest Investors Guide April 2025一次情報
    Advantest Corporation (IR)(2025-04)— 使用箇所: アドバンテストのテスタ(ATE)世界シェア約58%およびFY2024売上
    https://www.advantest.com/document/en/investors/ir-library/investors-guide/Investors_Guide_2504E.pdf
  6. EDA market shares 2024: Synopsys 31% / Cadence 30% / Siemens 13%調査会社
    TrendForce(2025-06)— 使用箇所: EDA市場の2024年世界シェア(Synopsys31%、Cadence30%、Siemens EDA13%、3社合計74%)
    https://www.trendforce.com/news/2025/06/02/news-china-revenue-at-risk-as-u-s-curbs-slam-eda-giants-impact-on-synopsys-cadence-and-more/

この記事をシェア

XFacebookLINEB!はてブ

コメント

GitHub アカウントでログインしてコメントできます。