世界とつながる通信の多くは、(海の底に敷かれた光ファイバーの通信線)を通ります。必ずどこかで海から陸へ上がってきます。その出入口がです。日本の陸揚げ局がどこにあるかを知ると、なぜ特定の場所にが集まるのかも見えてきます(「半導体とは何か」から知りたい場合はこちら)。全体像は「海底ケーブルの総まとめ」を参照してください。
この記事で動かせる図解
- 01海底ケーブルの断面構造(3Dモデル)親指ほどの細さに、光ファイバー・給電の銅・保護の鋼線がどう詰まっているかを立体で確認
日本に来る海底ケーブルの多くは、千葉と三重の海岸に上がってきます。太平洋に近く、アメリカへ最短で行けるからです。ケーブルはとても細く、親指ほどの太さしかありません。その中に通信の光ファイバーが入っています。
構造で言うと(投資家向け)も見る
陸揚げ局は千葉(千倉・丸山)と三重(志摩)に集中し、東西2系統で冗長化されています。陸揚げ局近接は低遅延を生み、データセンター用地の価値を左右します。物理層は深海17〜21mm・16ペア240Tbps級まで高密度化し、給電と中継器が長距離系の技術障壁です。
順に事実を並べていくと、「そりゃそうなるわ」と納得できるはずです。
陸揚げ局とは何か
陸揚げ局とは、海底ケーブルが海から陸に上がってくる場所にある施設です。海中を走ってきたケーブルは、この陸揚げ局で陸上の通信網につながります。陸揚げ局は通信の玄関口であり、ここに近いほど世界とのやり取りが速く安定します。
陸揚げ局には、海から来たケーブルへ電気を送る給電装置や、信号を整える設備が置かれます。目立たない海辺の建物ですが、国際通信を支える要のインフラです。
日本のどこにケーブルが上がっているのか
日本の主な陸揚げ局を地図にすると、太平洋側の数か所に集まっていることが分かります。
日本の海底ケーブル陸揚げ局マップ(局をクリック)
太平洋を渡るケーブルの多くが、千葉(千倉・丸山)と三重(志摩)の2エリアに集中して陸揚げされています。位置は模式的な近似です。
主な陸揚げケーブル:SJC2・FASTER・SJC・Unity ほか
- ケーブル本数
- 約6本
- 設計容量の目安
- 約265Tbps級
- 容量の主役
- SJC2(126Tbps)・FASTER(60Tbps)
房総半島の先端。KDDIの中継所などが集まる、太平洋横断ケーブルの最大級のゲートウェイ。
この地図が示すこと:日本に来る太平洋横断ケーブルは、対米最短距離になる千葉県(千倉・丸山)と三重県(志摩)の2エリアに集中します。容量も丸山・志摩・千倉の3局が突出(いずれも数百Tbps級)。なお表示の容量は各ケーブルの設計容量を合計した目安で、実際の通信量(トラフィック)は公開されていません。
最も重要なのが、千葉県南房総市の千倉・丸山と、三重県の志摩です。このエリアが日本の二大ゲートウェイです。千倉にはFASTERやSJC2、丸山にはJUPITER(Meta・Amazon・NTTなど)やADC、志摩には対カナダのTopaz(Google)やFASTERなど、複数の大型ケーブルが陸揚げされています。
茨城県の北茨城はかつて日米間ケーブルの主要拠点でした。しかしJapan-US Cable Networkは2023年に退役し、いまはレガシー中心です(対カナダのTopazの茨城側は、隣の高萩市に上がります)。沖縄はアジア各地への分岐点です。なお、神奈川県の二宮はかつての歴史的な陸揚げ局ですが、現在は解体されています(Submarine Networks)。
なぜ千倉と志摩に集中するのか
理由は2つあります。ひとつは地理です。房総半島と志摩半島は太平洋へ最短で出られ、北米へ向かう経路に有利です。海に突き出した半島は、ケーブルを最短距離で深海へ導けます。
もうひとつはです。すべてを1か所に集めると、地震や津波、ケーブル切断で通信が共倒れになります。そこで東(千葉)と西(三重)の2系統に分け、片方が被災してももう一方で通信を維持できるようにしています。陸揚げ局への近接が立地を左右する理由は「海底ケーブルとデータセンター立地」で、立地条件の全体像は「データセンターはどこに建てられるか」で扱っています(Submarine Networks)。
各局にはどれくらいの容量が来ているのか
まず大事な前提として、各局を流れる「実際の通信量(トラフィック)」は公開されていません。そこで目安になるのが、その局に陸揚げされるケーブルの設計容量(理論上の最大通信量=ケーブルの「太さ」にあたる値)です。これを足し合わせると、局ごとの規模感が見えてきます。
| 局 | 主なケーブル数 | 設計容量の目安 | 容量の主役 |
|---|---|---|---|
| 志摩(三重) | 約6本+将来増 | 約440Tbps級 | Topaz(240Tbps) |
| 丸山(千葉) | 約7本 | 約400Tbps級 | ADC(160Tbps超) |
| 千倉(千葉) | 約6本 | 約265Tbps級 | SJC2(126Tbps) |
| 千葉県 合計(丸山+千倉) | 約13本 | 約665Tbps級 | ADC・JUPITER・SJC2 ほか |
| 北茨城(茨城) | 2〜3本 | 数Tbps級(レガシー中心) | APCN-2 ほか |
| 沖縄 | 地域系が中心 | 地域・レガシー中心 | SMW3・ASE支線 |
Tbps(テラビット毎秒)は1秒あたりに運べるデータ量の単位で、1Tbpsは高画質動画を数万本同時に流せる規模です。表のとおり、容量は志摩・丸山・千倉の3局が突出しており、いずれも数百Tbps級です。単独の局では志摩(約440Tbps級)が最大ですが、県単位で見ると、丸山と千倉を合わせた千葉県(約665Tbps級)が国内最大になります。——そりゃ日本のネットは千葉に集まるわ、と言いたくなる規模です。
新しい大容量ケーブル(2023年のTopaz、2024年のADC、2025年のSJC2)が次々とこの3局に集まっているのが近年の特徴です。一方、かつて主役だった北茨城や沖縄は、いまはレガシー(旧世代)や地域向けが中心です(Submarine Networks / TeleGeography)。
海底ケーブルはどれくらいの太さなのか
意外なほど細いです。実際、深海を走る部分は直径17〜21mmで、庭のホースや人の親指ほどしかありません。世界中の通信を運ぶ大動脈が、これほど細い線だというのは驚きです。
陸に近い浅い海では事情が変わります。錨や漁網による損傷が起きやすいため、鋼線の鎧装を巻いて補強し、最大約50mmまで太くします。つまり、ケーブルは場所に応じて太さを変えているのです。
ケーブルの中身はどうなっているのか
細いケーブルの断面は、内側から外側へ層が重なった同心円構造です。
- 光ファイバー束:いちばん内側にある通信の本体。髪の毛ほどの細さで、数〜十数ペアを束ねる。
- 鋼線(強度部材):敷設時の張力や水圧に耐える芯。
- 銅導体:陸からへ電気を送る通り道。3〜15kVの高電圧の直流を流す。
- ポリエチレン絶縁:高電圧を絶縁し、海水から守る厚い樹脂層。
- 鎧装(鋼線):浅い海でのみ巻く外装。深海では省かれ、ぐっと細くなる。
なぜ電気を送るのかというと、長い距離では光の信号が弱まるため、約50〜100kmごとに中継器を置いて信号を増幅する必要があるからです。そこで、その中継器を動かす電気を、陸から銅導体で送っています。1本あたりの通信容量も大きく、近年の幹線は16ペアで240Tbps(Topazの例)といった水準に達します。たった親指ほどの線が、これだけの役割を同時にこなしているのです(Hackaday)。
ここまで見れば、そりゃ日本のネットは千葉と三重に集まるわ、というほかありません。
この記事のまとめ
- 日本に来る太平洋横断ケーブルは、千葉(千倉・丸山)と三重(志摩)の2エリアに集中して陸揚げされる。
- 理由は対米最短の地理と、東西2系統に分けて被災時の共倒れを防ぐ冗長化。
- 設計容量も志摩(約440Tbps級)・丸山(約400Tbps級)・千倉(約265Tbps級)の3局が突出。新ケーブル(Topaz・ADC・SJC2)も集中し、実トラフィックは非公開。
- 深海部のケーブルは直径17〜21mm(親指ほど)。浅海の鎧装ケーブルは最大約50mm。
- 中身は内側から光ファイバー・鋼線・銅導体・絶縁・鎧装。中継器へは3〜15kVを陸から送り、約50〜100kmごとに信号を増幅する。
この記事のまとめ
- 日本に来る太平洋横断ケーブルは、千葉(千倉・丸山)と三重(志摩)の2エリアに集中して陸揚げされる。
- 理由は対米最短の地理と、東西2系統に分けて被災時に共倒れを防ぐ冗長化。
- 設計容量も志摩(約440Tbps級)・丸山(約400Tbps級)・千倉(約265Tbps級)の3局が突出し、新ケーブル(Topaz・ADC・SJC2)も集中。実トラフィックは非公開。
- 深海部のケーブルは直径17〜21mm(親指ほど)。浅海の鎧装ケーブルは最大約50mm。
- 中身は内側から光ファイバー・鋼線・銅導体・絶縁・鎧装。中継器へは3〜15kVの電気を陸から送り、約50〜100kmごとに信号を増幅する。
よくある質問(FAQ)
Q.日本の海底ケーブルはどこに陸揚げされていますか?+
日本に来る太平洋横断ケーブルの多くは、千葉県(千倉・丸山=南房総市)と三重県(志摩)の2エリアに集中して陸揚げされています。ほかに茨城県(北茨城のJapan-US Cable Networkや、Topazが上がる高萩)や沖縄も重要な陸揚げ地点です。神奈川県の二宮はかつての歴史的な陸揚げ局ですが、現在は解体されています。
Q.なぜ千倉と志摩に集中するのですか?+
房総半島と志摩半島は、太平洋へ最短で出られ、北米へ向かう経路に有利だからです。さらに、すべてを1か所に集めると災害や切断で共倒れになるため、東(千葉)と西(三重)の2系統に分けて冗長化しています。これにより片方が被災してももう一方で通信を維持できます。
Q.海底ケーブルはどれくらいの太さですか?+
深海を走る部分は直径17〜21mmで、庭のホースや人の親指ほどしかありません。陸に近い浅い海では、錨や漁網から守るために鋼線の鎧装を巻き、最大約50mmまで太くなります。その細さの中に、光ファイバーと給電用の銅、保護の鋼線が同心円状に詰まっています。
Q.どの陸揚げ局がいちばん容量が大きいですか?+
設計容量で見ると、三重県の志摩(約440Tbps級)、千葉県の丸山(約400Tbps級)、千倉(約265Tbps級)の3局が突出しています。Topaz(240Tbps)やADC(160Tbps超)、SJC2(126Tbps)など新しい大容量ケーブルがこの3局に集中しているためです。なお、各局の実際の通信量(トラフィック)は公開されておらず、これはケーブルの設計上の最大容量を足し合わせた目安です。
Q.日本の主な海底ケーブル陸揚げ局(陸揚局)の一覧を教えてください+
日本の主要な陸揚げ局は次の通りです。①千葉県千倉(NTT系・SJC2・ADCなど複数)②千葉県丸山(Topaz・FASTER・Transpacificなど大容量集中)③三重県志摩(FLAG・Unity・JUPITER・JGA-Nなど)④茨城県北茨城・高萩(PCCS・Topazの一部)⑤沖縄県那覇(アジア向けケーブルの主要拠点)——以上が代表的なものです。このほか福岡・宮崎・福島など複数の局が存在し、合計は30か所以上に上ります。
用語集
- 海底ケーブル/ submarine cable
- 海の底に敷かれた光ファイバーで、国際通信の大半を運ぶ。陸揚げする場所(陸揚局)の近くは通信が速い。
- 陸揚げ局/ cable landing station
- 海底ケーブルが海から陸に上がってくる場所にある施設。日本では千葉県の千倉・三重県の志摩などが代表。
- 中継器(リピータ)/ optical repeater
- 海底ケーブルの途中に数十kmおきに置かれ、弱くなった光の信号を増幅して遠くまで届ける装置。電気は陸から送る。
- データセンター/ data center
- 大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。
- 冗長化(N+1・2N)/ redundancy
- 1か所が壊れても止まらないよう、電源や設備を多めに用意しておく考え方。電気を2系統引くのもこれ。
参考資料・引用元
- 海底ケーブル陸揚局一覧報道denwakyoku.jp(電話局データベース)(2024)— 使用箇所: 日本の主な陸揚げ局(千倉・丸山・志摩・北茨城・沖縄ほか)の所在。二宮局は解体済。座標は局舎/町中心の近似https://denwakyoku.jp/landingstation.html
- FASTER Cable System — Chikura / Shima landing報道Submarine Networks(2016-06)— 使用箇所: FASTER(日本=千倉・志摩〜米国オレゴン)。6ファイバーペア・初期設計容量60Tbps。Google/KDDI/China Mobile/China Telecom/Global Transit/SingTelのコンソーシアム、2016年運用開始https://www.submarinenetworks.com/en/systems/trans-pacific/faster
- JUPITER Cable System報道Submarine Networks(2020)— 使用箇所: JUPITER(日本=丸山・志摩〜米国)。Meta・Amazon・NTT・SoftBank・PLDTのコンソーシアム。設計容量60Tbps級https://www.submarinenetworks.com/en/systems/trans-pacific/jupiter
- Google announces Topaz subsea cable connecting Canada and Japan報道Submarine Networks / Google(2022-04)— 使用箇所: Topaz(日本=三重・茨城〜カナダPort Alberni)。16ファイバーペア・240Tbps、アジア初のカナダ直結。Google単独所有、2023年RFShttps://www.submarinenetworks.com/en/systems/trans-pacific/topaz
- 日本陸揚げの主要ケーブル設計容量(FASTER/JUPITER/Topaz/APG/NCP 等)報道Submarine Networks / TeleGeography(2025)— 使用箇所: 各局の設計容量目安。丸山約400Tbps級(ADC160+/JUPITER60/APG~54/NCP70…)・志摩約440Tbps級(Topaz240/SJC2126/FASTER60…)・千倉約265Tbps級(SJC2126/FASTER60/SJC/Unity)。北茨城・沖縄はレガシー/地域系。実トラフィックは非公開https://www.submarinenetworks.com/en/stations/asia/japan
- ADC(Asia Direct Cable)が運用開始一次情報NEC / SoftBank(2024-12-19)— 使用箇所: ADC(アジア9拠点を結ぶ)設計容量160Tbps超・8ファイバーペア。日本側はSoftBankの丸山に陸揚げ。2024年12月運用開始https://www.nec.com/en/press/202412/global_20241219_02.html
- SEA-Japan Cable 2(SJC2)が運用開始一次情報NEC(2025-07-18)— 使用箇所: SJC2(東アジア〜東南アジア)設計144Tbps・8ペア(7ペア=126Tbpsを点灯)。日本側は千倉(KDDI第2)・志摩に陸揚げ。2025年7月運用開始https://www.nec.com/en/press/202507/global_20250718_03.html
- Subsea Cables — Design業界団体KIS-ORCA(2024)— 使用箇所: 海底ケーブルの太さ。深海用は直径17〜21mm(庭ホース/親指ほど)、浅海の鎧装ケーブルは最大約50mm。層=光ファイバ/鋼線(強度部材)/銅導体(給電)/ポリエチレン絶縁/鎧装鋼線https://kis-orca.org/subsea-cables/design/
- Under the Sea: Optical Repeaters for Submarine Cables報道Hackaday(2023-08-08)— 使用箇所: 中継器(リピータ)駆動のため約3,000〜15,000VDCの高電圧直流を両端から給電。リピータ間隔は約50〜80km(資料により50〜100km)https://hackaday.com/2023/08/08/under-the-sea-optical-repeaters-for-submarine-cables/
- Grace Hopper (submarine communications cable)報道Wikipedia(2024)— 使用箇所: 近年の幹線はファイバーペア数が増加(Grace Hopperは16ペア)。1本で数十〜数百Tbps級の容量https://en.wikipedia.org/wiki/Grace_Hopper_(submarine_communications_cable)
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