データセンターの中身そのものは「データセンターの中身は、こうなっている」で整理しました。そのなかでサーバーとサーバー、(サーバーを収納する棚)とラックをつなぐのが大量の光ファイバです。光ファイバがなぜデータを運べるのかは「髪より細いガラスが世界中のデータを運んでいる」で確認できます。フジクラは、その光ファイバを「作り」「つなぐ」両方を担う会社です。
フジクラは、光ファイバや、それを現場でつなぐ機械を作っている1885年創業の老舗メーカーです。AIが普及してデータセンターの中で大量のデータをやり取りするようになり、その通信を担う光ファイバの配線部品が足りなくなっています。フジクラは光ファイバを現場でつなぐ機械で世界一。AIの追い風で2025年3月期は売上9,794億円と過去最高を記録しました。
構造で言うと(投資家向け)も見る
2025年3月期は連結売上高9,794億円・営業利益1,355億円でともに過去最高。けん引役は情報通信事業(売上の約46%)で、AIデータセンター向け光配線需要を背景に同事業の営業利益は922億円とグループ利益の過半を占める。光ファイバ融着接続機で世界首位、多心光コネクタや細径高密度ケーブルSWR/WTCで世界トップ級。競合は住友電工・古河電工・Corning。情報通信・AI需要への依存と市況変動が構造的リスク。
フジクラとはどんな会社か
フジクラとは、光ファイバ・光コネクタ・電線・自動車部品などを手がける日本の電線・光接続部品メーカーです。住友電工・古河電工と並ぶ「電線御三家」の一角で、特に光ファイバを「つなぐ」分野で世界的な強みを持ちます。東証プライム上場(証券コード5803)です。
創業は1885年で、藤倉善八が東京・神田で巻線(電気を通す絶縁電線)の製造を始めたのが出発点です。そして1910年に藤倉電線株式会社を設立し、電力・通信用の電線メーカーとして成長しました。その後、1980年代に光ファイバの量産を開始し、銅の電線から光通信部品へと事業の軸足を広げてきました(株式会社フジクラ)。
2025年3月期(FY2025)の連結は9,794億円、は1,355億円、親会社株主に帰属する当期は911億円で、すべて過去最高を更新しました。長く主力だった電線事業ではなく、光ファイバを核とする情報通信事業がこの最高益をけん引した点が、いまのフジクラの特徴です(株式会社フジクラ)。
フジクラの売上はどの事業で構成されているか
フジクラの事業は、大きく5つのセグメントで構成されています。光ファイバ・光配線を担う「情報通信」、FPC(フレキシブルプリント基板=折り曲げられる回路基板)などの「エレクトロニクス」、ワイヤーハーネス(車内の配線束)などの「自動車」、電力ケーブルなどの「エネルギー」、そして「不動産」です。
2025年3月期の連結売上高9,794億円のセグメント別構成は次の通りです(情報通信は決算開示値、他は構成比からの概算)。
| セグメント | 主な製品 | 売上高(2025年3月期) | 構成比 |
|---|---|---|---|
| 情報通信 | 光ファイバ・光ケーブル・光コネクタ・融着接続機 | 約4,513億円 | 約46% |
| エレクトロニクス | FPC(フレキシブルプリント基板)・電子部品 | 約1,860億円 | 約19% |
| 自動車 | ワイヤーハーネス・車載部品 | 約1,760億円 | 約18% |
| エネルギー | 電力ケーブル・電線 | 約1,470億円 | 約15% |
| 不動産・その他 | 賃貸・その他 | 約190億円 | 約2% |
(出典:Biz/Zine)
注目すべきは情報通信事業の伸びです。2025年3月期の同事業は売上高4,513億円(前期比約51.8%増)、営業利益922億円(同約135.2%増)と急拡大し、グループ全体の営業利益1,355億円の過半を一事業で稼ぎました。向けの光配線需要が、この急伸の主因です(Biz/Zine)。
長年赤字だった自動車事業も、構造改革とコスト転嫁で2024年度(2025年3月期)に営業利益58億円まで回復しました。とはいえ、いまのフジクラの収益エンジンは明確に情報通信、すなわち光です。
フジクラの技術的な強みはどこにあるか
フジクラの技術的な強みは、光ファイバを「作る」だけでなく「つなぐ」技術を一貫して握っている点にあります。光ファイバはガラスの中で光をさせて信号を運びますが、ファイバ同士を低損失でつなぐ工程が通信品質を左右します。フジクラはこのつなぐ工程で世界をリードしています。半導体そのものの基礎は「半導体とは何か」を参照してください。
第一の柱が光ファイバ融着接続機です。とは、2本の光ファイバの端面を放電の熱で溶かして一体化する接続方法で、損失が小さく信頼性が高いのが特徴です。実際、フジクラの融着接続機は世界首位で、世界シェアは5割を超えるとされ、通信網やデータセンターの建設現場で事実上の標準機になっています(日経ビジネス)。
第二の柱が多心光コネクタと細径高密度ケーブルです。多心光コネクタとは、多数の光ファイバを一括で抜き差しできる接続部品で、フジクラはその心臓部であるフェルール(ファイバを正確に固定する部品)で世界トップシェアを握ります。さらに細径高密度ケーブルSWR/WTCは、最大6,912本もの光ファイバを細い1本のケーブルに収め、データセンターの限られた空間に膨大な回線を通せます(株式会社フジクラ)。
これらを組み合わせた「光配線ソリューション」が、フジクラの差別化の核です。ファイバ・コネクタ・融着接続機・施工エンジニアリングを一社でそろえ、データセンター事業者が高密度な光配線を素早く確実に構築できるようにしています。チップ間を光でつなぐ次の技術は「電気の限界を光で超える、次世代チップ間通信」で解説しています。
サプライチェーンの中でフジクラはどんな役割か
フジクラはサプライチェーンの中で、「光をつなぐ」インフラ部品の供給者という役割を担います。データセンターの内部、データセンター間、そして大陸間の海底——光が通るあらゆる場所で、フジクラの光ファイバや接続部品が使われます。
具体的には3つの層で役割を果たします。第一にデータセンター内(DC内)で、サーバー・スイッチ間を多心光コネクタと細径ケーブルでつなぎます。第二にデータセンター間(DC間)で、拠点をまたぐ長距離の光ケーブルを供給します。納入先はと呼ばれる巨大クラウド事業者が中心です。
第三がの層です。フジクラは海底ケーブルに使う光ファイバや関連部品を供給しています。海底ケーブルの製造・敷設そのものはNEC系のOCCや住友電工などが中心ですが、その内部を通る光ファイバはフジクラのような専業メーカーが支えています。海底ケーブルの全体像は「海底ケーブルは、誰が作り誰が持っているのか」で詳しく扱っています。
AIの普及は、この3層すべての需要を押し上げています。生成AIの・はデータセンター内外で膨大な通信を生み、光ファイバの細径化・高密度化・超多心化を加速させています。その結果、より多くのファイバとより速い接続技術が必要になり、フジクラの光配線ソリューションに追い風が吹いています(日本経済新聞)。
フジクラの市場ポジションと競争構造はどうなっているか
フジクラは光接続部品の複数分野で世界トップ級に立ちます。光ファイバ融着接続機で世界首位、多心光コネクタのフェルールで世界トップシェア、細径高密度ケーブルで先行という強みを軸に、「光をつなぐ」総合力で差別化しています。
光ファイバ・光配線市場の競争構造を、「誰と、どんな力関係で戦っているか」という5つの視点で整理すると次のようになります。
| 力 | 主体 | 強さ | 理由 |
|---|---|---|---|
| 競合 | 住友電工・古河電工・Corning(米) | 高 | 光ファイバは日本の電線御三家と米Corningの寡占。AI需要で各社が増産投資を競い、上位争いは激しい |
| 買い手の交渉力 | ハイパースケーラ・通信事業者 | 中〜高 | 大口で価格圧力はあるが、融着接続機やコネクタは現場の標準化・認定が進み簡単には乗り換えにくい |
| 供給者の交渉力 | 石英ガラス原料・銅・樹脂・希少金属 | 中 | 原料市況に左右されるが、フジクラはプリフォーム(光ファイバの母材)から内製でき依存度を抑えやすい |
| 新規参入 | — | 低 | 母材製造・高密度量産・接続技術の蓄積と顧客認定に長期を要する高い壁 |
| 代替品 | 銅配線・無線・別方式接続 | 低 | 高速・長距離・大容量では光に代替がなく、AIデータセンターでは光化がむしろ進む |
(出典:株式会社フジクラ)
光ファイバそのものは住友電工・古河電工・米Corningとの寡占市場ですが、ファイバを「つなぐ」融着接続機やコネクタではフジクラの存在感が際立ちます。共通する参入障壁は、母材から接続までの一貫した量産技術と、顧客の現場標準としての地位で、いったん採用されると乗り換えが難しい構造です。
フジクラが抱える弱み・リスクは何か
最大のリスクは、情報通信・AI需要への依存度が高まっている点です。2025年3月期はグループ利益の過半を情報通信事業が稼ぎました。つまり、AIデータセンター投資が腰折れすれば、最大の収益源が直撃を受ける構造です。需要の波が大きい市況連動型のビジネスである点は、構造的な弱みです。
もう一つが原料・市況の変動です。電線・ケーブルは銅や石英ガラス、樹脂の価格に収益が左右されます。電力ケーブルなどのエネルギー事業や自動車事業は汎用色が強く、価格転嫁が遅れると採算が薄くなりやすい構造です。情報通信の好調が他事業の市況変動を覆い隠している面もあります。
加えて、競合各社が一斉に増産へ動いている点もリスクです。住友電工・古河電工・Corningがいずれもデータセンター向け光ファイバの能力を増やしており、AI需要が一巡すれば供給過剰と価格下落を招く可能性があります。フジクラの価値はあくまで接続技術と高密度化の差別化にあり、汎用ファイバの価格競争に巻き込まれない設計が課題になります。
フジクラの最近の動向はどうか
最近のフジクラは、AIデータセンター特需を取り込む増産投資を加速しています。2026年5月には、データセンター向け光ファイバケーブルの増産に向けて米国で最大2,600億円を投資すると発表し、国内投資400億円とあわせて投資額は最大3,000億円規模になります。AIインフラの拡大が、光配線事業を会社の主役に押し上げています(日本経済新聞)。
製品面でも超多心化に対応しています。フジクラは2026年4月に新型の多心光融着接続機「100R」を発売し、単心から最大16心の間欠固定テープ心線(細いテープ状にまとめた多心ファイバ)の接続に対応しました。国内でも約450億円を投じて千葉県に光ファイバの次世代工場を新設し、2029年度の稼働を予定しています(OPTRONICS ONLINE / 日本経済新聞)。
「電線屋」として140年を歩んできたフジクラは、銅から光へと主役を入れ替えながら、AI時代の通信インフラを支える会社へと姿を変えつつあります。派手な完成品やチップは作りませんが、AIが生むデータが増えるほど、それを運ぶ光をつなぐフジクラの役割は静かに重みを増しています。
この記事のまとめ
- フジクラは1885年創業の電線御三家の一角で、光ファイバ・光コネクタ・融着接続機などの光接続部品に強みを持つ日本のメーカーである。
- 2025年3月期の連結売上高は9,794億円・営業利益1,355億円でいずれも過去最高で、情報通信事業が売上の約46%・営業利益の過半を占める。
- 強みは光ファイバ融着接続機の世界首位、多心光コネクタのフェルール世界トップ、細径高密度ケーブルSWR/WTCを束ねたAIデータセンター向け光配線ソリューションにある。
- AIデータセンターの拡大で光配線需要が急伸し、米国最大2,600億円・千葉新工場450億円を含む増産投資で生産能力を増強している。
- リスクは情報通信・AI需要への依存と市況変動、住友電工・古河電工・Corningとの競争、銅・石英ガラスなど原料価格の変動である。
この記事のまとめ
- フジクラは1885年創業の電線御三家の一角で、光ファイバ・光コネクタ・融着接続機などの光接続部品に強みを持つ。
- 2025年3月期の連結売上高は9,794億円・営業利益1,355億円でいずれも過去最高。情報通信事業が売上の約46%・利益の過半を占める。
- 強みは光ファイバ融着接続機の世界首位、多心光コネクタ、細径高密度ケーブルSWR/WTCを束ねたAIデータセンター向け光配線ソリューション。
- AIデータセンターの拡大で光配線需要が急伸し、米国最大2,600億円・千葉新工場450億円を含む増産投資で能力を増強している。
- リスクは情報通信・AI需要への依存と市況変動、住友電工・古河電工・Corningとの競争、銅・光の価格変動である。
よくある質問(FAQ)
Q.フジクラとはどんな会社ですか?+
フジクラは、1885年創業の日本の電線・光ファイバメーカーです。住友電工・古河電工と並ぶ「電線御三家」の一角で、光ファイバ、光コネクタ、光ファイバ融着接続機などの光接続部品に強みを持ちます。2025年3月期の連結売上高は9,794億円、営業利益は1,355億円で、いずれも過去最高でした。AIデータセンター向けの光配線需要が事業をけん引しています。
Q.フジクラはAIデータセンターとどう関係していますか?+
フジクラは、AIデータセンターの内部を走る光配線を支える部品を供給しています。生成AIの普及でデータセンター内の通信量が急増し、光ファイバケーブルは細径・高密度・超多心化が進んでいます。フジクラは細径高密度ケーブルSWR/WTC、多心光コネクタ、世界首位の融着接続機を組み合わせた「光配線ソリューション」でこの需要に対応し、情報通信事業がグループ利益の過半を占めるまでになりました。
Q.フジクラの光ファイバ融着接続機はどれくらいのシェアですか?+
フジクラの光ファイバ融着接続機(光ファイバを現場で溶かしてつなぐ機器)は世界首位で、世界シェアは5割を超えるとされます。融着接続は光ファイバ同士を熱で溶融して一体化する接続方法で、損失が小さく信頼性が高いのが特徴です。フジクラはこの分野で長年の実績を持ち、データセンターや通信網の現場で事実上の標準機として使われています。
用語集
- データセンター/ data center
- 大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。
- 海底ケーブル/ submarine cable
- 海の底に敷かれた光ファイバーで、国際通信の大半を運ぶ。陸揚げする場所(陸揚局)の近くは通信が速い。
- 融着接続/ fusion splicing
- 2本の光ファイバーの断面を合わせ、放電の熱で溶かしてつなぐ技術。海底ケーブルの修理は船の上でこれを行う。
- 全反射/ total internal reflection
- 光が屈折率の高い物質から低い物質へ、浅い角度で当たると、境界で100%跳ね返る現象。光ファイバーが光を外へ逃さず運べる原理。
- ハイパースケール/ hyperscale
- クラウド大手(Google・Amazon・Microsoftなど)が運営する超大規模なデータセンター。
- ラック/ server rack
- サーバーを縦に積み重ねて収める棚。高さの単位は「U」(1U=約4.4cm)で、42Uサイズが一般的。
- 売上高/ revenue / net sales
- 会社が商品やサービスを売って得た金額の合計。利益を引く前の数字。
- 営業利益/ operating income
- 本業の売上から、原価と販売・管理にかかる費用を引いて残る儲け。
- 純利益/ net income
- 売上からすべての費用・税金を差し引いて、会社に最終的に残る儲け。
- 学習(トレーニング)/ training
- 大量のデータからAIモデルを作り込む処理。膨大な計算力を一度に必要とし、巨大なGPUクラスタを使う。
- 推論(インファレンス)/ inference
- 学習済みのAIを実際に使って答えを出す処理。質問に答える・文章を生成するなど、利用時の計算がこれにあたる。
参考資料・引用元
- 2025年3月期 決算短信(連結)一次情報株式会社フジクラ(2025-05)— 使用箇所: FY2025連結売上9,794億円・営業利益1,355億円・純利益911億円(過去最高)https://www.fujikura.co.jp/ir/
- フジクラ FY2025は全利益項目で過去最高・26年度営業利益2,000億円超へ報道Biz/Zine(2025-05)— 使用箇所: 情報通信事業 売上4,513億円(+51.8%)・営業利益922億円(+135.2%)、セグメント構成比https://bizzine.jp/news/detail/13074
- フジクラの歴史(1885年〜)一次情報株式会社フジクラ(2024)— 使用箇所: 1885年創業・電線御三家・光ファイバ量産への歩みhttps://www.fujikura.co.jp/history/1885/index.html
- フジクラ岡田社長インタビュー(融着接続機・光ファイバ)報道日経ビジネス(2025-08)— 使用箇所: 光ファイバ融着接続機 世界首位・世界シェア5割超https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00662/082000012/
- データセンタ用光ケーブリングシステム/MPOコネクタ一次情報株式会社フジクラ(2026)— 使用箇所: MPOフェルール世界トップシェア・細径高密度ケーブルSWR/WTC(最大6,912心)https://www.fujikura.co.jp/products/optical/datacentercablingsystem/
- フジクラ、米に最大2600億円投資 DC向け光ファイバー増産報道日本経済新聞(2026-05)— 使用箇所: 米最大2,600億円+国内400億円=最大3,000億円規模の増産投資・AI DC需要https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC195210Z10C26A5000000/
- フジクラ、新型多心光融着接続機を発売/千葉新工場450億円報道OPTRONICS ONLINE / 日本経済新聞(2026-03)— 使用箇所: 新型多心光融着接続機「100R」・千葉次世代工場450億円・2029年度稼働https://optronics-media.com/news/20260324/108410/
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