海底ケーブルを製造・敷設できるのは、世界で実質4社(ASN・SubCom・NEC・HMN)だけです。そして近年、ケーブルを「持つ」側は、通信会社の連合からGoogleやMetaといったハイパースケーラーへと移りました。作る会社が少なく、持つ会社が変わった——これが海底ケーブル産業のいまの姿です。

海底ケーブルは、ただの線ではありません。深海の水圧に耐え、数十年使われ、途中の中継器に電気まで送る精密な装置です。それを作れる会社も、敷ける船も、世界にごくわずかしかありません。全体像は「海底ケーブルの総まとめ」で確認できます。

ひとことで言うと(初心者向け)

海底ケーブルを作れる会社は世界に4社だけです。最近は、GoogleやMetaが自分でケーブルを持つようになりました。動画やクラウドで大量のデータを運ぶので、回線を他人任せにしたくないからです。

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構造で言うと(投資家向け)

製造はASN・SubCom・NEC・HMNの寡占で参入障壁が高く、ASN国有化に見るとおり安全保障案件化しています。所有はキャリア連合からハイパースケーラーへ移行(容量利用シェア71%超)。市場はAI/クラウド需要を背景に2030年へ二桁成長の見通し。

海底ケーブルは誰が作っているのか

海底ケーブルの製造・敷設は、次の4社が大半を占めます。

メーカー国シェアの目安特徴
ASNフランス新設で約34%(首位)世界最大手。2024年にNokiaから分離し国有化。
SubCom米国新設で約19%米系大手。Googleなどの大型案件を多く手がける。
NEC日本累計で約12.5%給電装置など要素技術も自社で持つ。
HMN Technologies中国新設で約10%旧ファーウェイ・マリン。欧米案件では敬遠される傾向。

注目すべきは、最大手のASNの動きです。ASNは2024年にフィンランドのNokiaから分離され、フランス政府が株式を取得して国有化しました(企業価値3.5億ユーロ規模)。海底ケーブルが「重要インフラ」と見なされ、国家が直接抱える対象になったことを象徴する出来事です。これは半導体をめぐる地政学と地続きの安全保障テーマです(Carnegie Endowment)。

日本のNECと敷設船の役割

ここで混同しやすいのが、「作る会社」と「敷く会社」の違いです。NECはケーブルや給電装置を製造するメーカーです。一方で、実際に海へ出てケーブルを敷設したり、切れたケーブルを引き上げて修理したりするのは敷設船の仕事です。

日本では、KDDIケーブルシップが運航する「KDDIケーブルインフィニティ」がこの役割を担います。全長133mの多目的敷設船で、通信ケーブルだけでなく電力ケーブルや観測機器の敷設にも対応し、災害時には海上の基地局にもなります。装置の世界で「日本は製造装置の要」であるのと同じように(「半導体は日本の装置がなければ作れない」)、海底ケーブルでも日本は製造と敷設の両面で存在感を保っています(KDDIケーブルシップ / KDDIニュースリリース)。

ケーブルは誰が所有しているのか

かつて海底ケーブルは、複数の通信会社が費用を出し合う「コンソーシアム」で建設・所有するのが普通でした。しかし、いまは構図が変わっています。GoogleやMeta、Microsoft、Amazonといったが、自前でケーブルを建設・所有するようになったのです。

事業者関与する海底ケーブル例
Google33本FASTER・Topaz・Apricot・Echo
Meta21本JUPITER・2Africa・Bifrost
Microsoft9本MAREA ほか
Amazon8本JUPITER ほか

4大事業者が使う国際海底容量のシェアは、2010年代前半の約10%から2024年には71%超へ跳ね上がりました。動画やクラウド、AIで大量のデータを運ぶ彼らにとって、回線を他社任せにせず自前で確保することが競争力に直結するからです(Verdict / TeleGeography)。

市場はどれくらいの規模で伸びているのか

海底ケーブル市場の規模は、調査会社によって定義が異なり数字が割れます。代表的な見通しを並べると次のとおりです。

調査会社基準年予測(2030年)年平均成長率
MarketsandMarkets182億ドル(2024)約338億ドル11.1%
Grand View Research317億ドル(2024)443億ドル5.6%

数字の幅はありますが、いずれも右肩上がりです。しかも新設の動きも活発で、2023〜2025の3年だけで約100億ドル・78システム・約30万kmが新設されたとされます。背景にあるのは、クラウドとAIによる国際トラフィックの急増です。AIデータセンターどうしを結ぶ通信需要は、今後さらにケーブル投資を押し上げると見られます(MarketsandMarkets)。

この記事のまとめ

  • 海底ケーブルを作れる主要メーカーは、ASN・SubCom・NEC・HMNの実質4社。
  • ASNは世界最大手で、2024年にNokiaから分離しフランス政府が国有化した。
  • NECはメーカー、ケーブルを敷く・直すのはKDDIケーブルインフィニティなどの敷設船という役割分担。
  • 所有はキャリア連合からハイパースケーラーへ。Googleは33本、Metaは21本のケーブルに関与する。
  • 市場規模は2030年に330〜440億ドル規模へ伸びる見通しで、AIとクラウドが投資を加速する。

なお本記事は投資助言ではありません。

この記事のまとめ

  • 海底ケーブルを作れる主要メーカーは、ASN・SubCom・NEC・HMNの実質4社。
  • ASNは世界最大手で、2024年にNokiaから分離しフランス政府が国有化した。
  • NECはメーカー、ケーブルを敷く・直すのはKDDIケーブルインフィニティなどの敷設船という役割分担。
  • 所有はキャリア連合からハイパースケーラーへ。Googleは33本、Metaは21本のケーブルに関与する。
  • 市場規模は調査会社で割れるが、2030年に330〜440億ドル規模へ伸びる見通し。AIとクラウドが投資を加速。
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よくある質問(FAQ)

Q.海底ケーブルはどの会社が作っているのですか?+

海底ケーブルを製造・敷設できる主要メーカーは、ASN(フランス)・SubCom(米国)・NEC(日本)・HMN Technologies(中国)の実質4社です。新設システムのシェアはASNが約34%で首位、SubComが約19%、HMNが約10%、NECは累計で約12.5%とされます。

Q.海底ケーブルは誰が所有しているのですか?+

かつては通信会社の連合(コンソーシアム)が中心でしたが、近年はGoogleやMetaなどのハイパースケーラーが所有・共有する割合が急増しました。4大事業者が使う国際容量のシェアは、2010年代前半の約10%から2024年には71%超に達しています。

Q.NECと敷設船はどういう関係ですか?+

NECはケーブルや給電装置を作る「メーカー」です。一方、海に出てケーブルを敷いたり修理したりするのは敷設船で、日本ではKDDIケーブルシップの「KDDIケーブルインフィニティ」などが担います。作る会社と、敷く会社は役割が分かれています。

用語集

海底ケーブル/ submarine cable
海の底に敷かれた光ファイバーで、国際通信の大半を運ぶ。陸揚げする場所(陸揚局)の近くは通信が速い。
ハイパースケール/ hyperscale
クラウド大手(Google・Amazon・Microsoftなど)が運営する超大規模なデータセンター。
陸揚げ局/ cable landing station
海底ケーブルが海から陸に上がってくる場所にある施設。日本では千葉県の千倉・三重県の志摩などが代表。

参考資料・引用元

  1. Securing Europe's Subsea Data Cables調査会社
    Carnegie Endowment(2024-12)— 使用箇所: 海底ケーブル製造シェア。新設システム(2020-24)でASN約34%・SubCom約19%・HMN約10%。累計システムではASN37.7%・SubCom21.1%・NEC12.5%・HMN10.3%
    https://carnegieendowment.org/research/2024/12/securing-europes-subsea-data-cables
  2. Alcatel Submarine Networks(フランス政府による取得)報道
    Wikipedia / Nokia・APE(2024-06-27)— 使用箇所: ASN(仏)は海底ケーブル製造の最大手。2024年6月にフランス政府(APE)がNokiaから株式80%を取得で合意(総企業価値3.5億ユーロ)、2024年12月に国有化完了
    https://en.wikipedia.org/wiki/Alcatel_Submarine_Networks
  3. ケーブルシップ「KDDIケーブルインフィニティ」一次情報
    KDDIケーブルシップ / KDDIニュースリリース(2018-09-04)— 使用箇所: KDDIケーブルインフィニティ=通信・電力・観測対応の多目的敷設船。全長133.16m・幅19.6m・ケーブルタンク2,300m³・乗員83名、三菱重工下関建造・2019年就航。NEC=メーカー、KCS=敷設/保守オペレーター
    https://www.k-kcs.co.jp/cableship/cable_infinity.html
  4. How hyperscalers are reshaping the subsea cable market調査会社
    Verdict / TeleGeography(2024)— 使用箇所: 国際海底容量の利用シェアが4大ハイパースケーラーで2010年代前半の約10%→2024年に71%超。コンテンツ事業者の参加ケーブル数は2017年20本→2024年59本
    https://www.verdict.co.uk/hyperscalers-subsea-cables-boom/
  5. A (Refreshed) List of Content Providers' Submarine Cable Holdings調査会社
    TeleGeography(2026-03)— 使用箇所: コンテンツ事業者の参加海底ケーブル本数(最新)Google 33・Meta 21・Microsoft 9・Amazon 8
    https://blog.telegeography.com/telegeography-content-providers-submarine-cable-holdings-list-new
  6. Submarine Cable System Market調査会社
    MarketsandMarkets(2025)— 使用箇所: 海底ケーブルシステム市場 2024年182億ドル→2030年約338億ドル、CAGR 11.1%(2025-2030)
    https://www.marketsandmarkets.com/Market-Reports/submarine-cable-system-market-184625.html
  7. Submarine Cables Market Size & Share Report調査会社
    Grand View Research(2024)— 使用箇所: 海底ケーブル市場 2024年317億ドル→2030年443.3億ドル、CAGR 5.6%(調査会社で定義が異なり数字が割れる)
    https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/submarine-cables-market

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