「インターネットは空(衛星)でつながっている」と思われがちですが、実際は海の底のケーブルがほとんどです。この記事では、海底ケーブルとは何か、誰が作り誰が持っているのか、日本のどこに上がっているのかまでを順番に整理します。
世界中のデータは、海の底のケーブルを通って行き来しています。NetflixやYouTubeは、その負担を減らすために動画を日本国内のサーバーにためています。ケーブルを作れる会社はごくわずかで、最近はGoogleやMetaが自前のケーブルを持つようになりました。日本では千葉と三重が玄関口です。
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国際通信の物理層は海底ケーブルが独占し、容量・遅延ともに衛星を圧倒します。CDN(Open Connect/GGC)が横断トラフィックを肩代わりし、所有はキャリア連合からハイパースケーラーへ移行(容量利用シェア71%超)。製造はASN・SubCom・NEC・HMNの寡占で、陸揚げ局近接がデータセンター立地価値を左右します。
海底ケーブルとは何か
海底ケーブルとは、大陸と大陸を海の底で結ぶ光ファイバーの通信ケーブルです。は、大陸をまたぐインターネット通信のほぼすべてを運んでおり、衛星が担う割合はごくわずかです。なお、TeleGeographyは「正確な数値は計算しにくい」としつつ、衛星トラフィックは国際容量のごく一部にとどまると指摘しています。
世界には稼働中と建設中を合わせて約600本の海底ケーブルがあり、その総延長は地球を何周もする規模です。クラウドやAIが国境を越えてデータをやり取りするとき、その大部分はこの海底ケーブルを通ります。つまり海底ケーブルは、現代のインターネットの背骨です(TeleGeography)。
なぜクラウドとAIに海底ケーブルが必要なのか
クラウドもAIも、世界中のデータセンターとデータをやり取りして成り立っています。その通信を物理的に支えているのが海底ケーブルです。データの応答速度(レイテンシ)は距離に縛られるため、ケーブルが陸に上がるの近くは、世界とのやり取りが速く安定する好立地になります。
電力・水と並んで、通信もまたデータセンターの立地を決める条件です。立地の全体像は「データセンターはどこに建てられるか」で、通信と立地の関係は「海底ケーブルとデータセンター立地」で扱っています。
Netflixやネット動画はどう運ばれているのか
意外なことに、人気の動画の多くは海底ケーブルを越えていません。NetflixやYouTube(Google)は、よく見られる動画をあらかじめ日本国内のサーバーにためておくという仕組みを使っています。再生のたびに米国の大元まで取りに行かないので、速く、海底ケーブルも混みません。
この「動画を国内にためる」仕組みと、(ネット経由で動画などを届ける配信事業者)がどう海底ケーブルを節約しているのかは、「Netflix・YouTubeはどう配信しているのか」で詳しく解説します。
海底ケーブルは誰が作り、誰が持っているのか
海底ケーブルを作れる主要メーカーは、実質4社しかありません。ASN(フランス)・SubCom(米国)・NEC(日本)・HMN(中国)です。そして近年、ケーブルを「持つ」側は通信会社の連合から、GoogleやMetaといったへと移りました。実際、4大事業者が使う国際容量のシェアは、2010年代前半の約10%から2024年には71%超に達しています。
誰が作り、誰が持っているのか、市場はどれだけ伸びているのかは、「海底ケーブルは誰が作り、誰が持っているのか」にまとめています(Verdict / TeleGeography)。
作ったケーブルを海底に敷く「敷設船」も、供給が限られる設備です。日本政府はこの船の確保に動いており、総務省が2027年度予算で敷設船の調達費(1隻400億円超)の半額補助と、総額1,000億円規模の確保を目指すと日本経済新聞が2026年8月に報じました。経緯と制度の中身は海底ケーブル敷設船に総務省が支援へで解説しています。
日本にはどこにケーブルが上がっているのか
日本に来る太平洋横断ケーブルの多くは、千葉県(千倉・丸山)と三重県(志摩)の2エリアに集中して陸揚げされています。対米最短になる地理と、災害時に共倒れしないための東西2系統の冗長化が理由です。
また、深海を走るケーブルの太さは直径17〜21mm(親指ほど)しかありません。その細さの中に、通信の本体である光ファイバーと給電・保護の層が同心円状に詰まっています。日本の陸揚げ局の地図とケーブルの中身は、「日本のどこに海底ケーブルは上がっているのか」で、地図と3Dモデルを使って解説します。
どこから読めばいいか
海底ケーブルを深く知るには、次の順で読むのがおすすめです。
- 「Netflix・YouTubeはどう配信しているのか」:CDNが海底ケーブルの負担をどう肩代わりするか。
- 「海底ケーブルは誰が作り、誰が持っているのか」:製造の4社寡占、所有のハイパースケーラー化、市場規模。
- 「日本のどこに海底ケーブルは上がっているのか」:陸揚げ局の地図と、ケーブルの太さ・構造。
- 海底ケーブル敷設船に総務省が支援へ:ケーブルを「敷く」船がなぜ不足し、国がどう支えようとしているか。
この記事のまとめ
- 大陸をまたぐ通信のほぼすべては、衛星ではなく海底ケーブルを通っている。
- NetflixやYouTubeは人気動画を国内のサーバー(CDN)にため、海底ケーブルを跨がずに配信する。
- ケーブルを作れるのは実質ASN・SubCom・NEC・HMNの4社。所有はGoogleやMetaへ移りつつある。
- 日本では千葉(千倉・丸山)と三重(志摩)の2エリアに、太平洋横断ケーブルが集中して陸揚げされる。
- 深海部の太さは直径17〜21mm(親指ほど)。その細さに光ファイバーと給電・保護の層が詰まっている。
なお本記事は投資助言ではありません。
この記事のまとめ
- 大陸をまたぐ通信のほぼすべては、衛星ではなく海底ケーブルを通っている。
- NetflixやYouTubeは人気動画を国内のサーバー(CDN)にためるため、海底ケーブルを跨がずに配信できる。
- ケーブルを作れるのは実質ASN・SubCom・NEC・HMNの4社。所有はGoogleやMetaへ移りつつある。
- 日本では千葉(千倉・丸山)と三重(志摩)の2エリアに、太平洋横断ケーブルが集中して陸揚げされている。
- 深海部の太さは直径17〜21mm(親指ほど)。その細さに光ファイバーと給電・保護の層が詰まっている。
よくある質問(FAQ)
Q.海底ケーブルの太さはどれくらいですか?+
深海を走る部分(深海部)は直径約17〜21mm(親指ほどの細さ)です。コアには光ファイバー数十本・鋼線・給電用の銅管などが詰まっています。水深約2,000m未満の浅い海では漁網や錨から守るため鋼線アーマー(鎧線)を2層以上巻くため、直径は50〜70mm程度まで太くなります。軽量な深海部に対し、浅海部の方が頑丈で重い構造です。
Q.海底ケーブルとは何ですか?+
海底ケーブルとは、大陸と大陸を海の底で結ぶ光ファイバーの通信ケーブルです。大陸をまたぐインターネット通信のほぼすべてがこのケーブルを通っており、衛星が運ぶ割合はごくわずかです。クラウド・AI・動画配信の国際的なやり取りは、事実上この海底ケーブルが支えています。
Q.海底ケーブルは衛星より優れているのですか?+
用途によります。海底ケーブルは容量が桁違いに大きく(1本で数十〜数百Tbps)、遅延も小さいため、大陸間の大量通信は海底ケーブルが担います。衛星は地上に基地局を置けない海上・山間部や緊急時の補完に向いており、両者は役割分担しています。
Q.Netflixの動画も海底ケーブルを通っているのですか?+
通る場合もありますが、人気の動画の多くは通りません。NetflixやGoogleは、よく見られる動画をあらかじめ日本国内のサーバー(CDN)にためておきます。そのため再生のたびに海底ケーブルを越える必要がなく、回線の混雑を抑えています。
用語集
- 海底ケーブル/ submarine cable
- 海の底に敷かれた光ファイバーで、国際通信の大半を運ぶ。陸揚げする場所(陸揚局)の近くは通信が速い。
- CDN(コンテンツ配信網)/ Content Delivery Network
- 動画や画像のコピーを、利用者に近い場所のサーバーに置いておく仕組み。遠くの大元まで取りに行かずに済むので速く、回線も混みにくい。
- 陸揚げ局/ cable landing station
- 海底ケーブルが海から陸に上がってくる場所にある施設。日本では千葉県の千倉・三重県の志摩などが代表。
- データセンター/ data center
- 大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。
- ハイパースケール/ hyperscale
- クラウド大手(Google・Amazon・Microsoftなど)が運営する超大規模なデータセンター。
- OTT(動画配信)/ Over-The-Top
- テレビ局の電波ではなく、インターネット回線を通じて映像を届けるサービス。Netflixやディズニープラスなどが該当する。
参考資料・引用元
- 海底ケーブル敷設船、総務省が調達支援を検討報道日本経済新聞(2026-08-25)— 使用箇所: 総務省による敷設船調達費の半額程度補助検討、1隻400億円超という調達コスト、2027年度予算で総額1,000億円規模の確保を目指す方針、概算要求への事項要求としての計上方針、AI需要拡大・中国勢台頭という背景(会員限定記事のため本文の一部のみ確認)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA215LV0R20C26A8000000/
- Do Submarine Cables Account For Over 99% of Intercontinental Data Traffic?調査会社TeleGeography(2023-05-04)— 使用箇所: 大陸間データトラフィックのほぼすべてが海底ケーブル経由(俗に99%)。TeleGeography自身は『衛星トラフィックの公的データが2013年以降なく正確な計算は不能』と注記。2013年参考値で衛星は米国際容量の0.37%https://blog.telegeography.com/2023-mythbusting-part-3
- Submarine Cable Map 2025調査会社TeleGeography(2025)— 使用箇所: 稼働+建設中で約597システム・1,712陸揚げ点(2025年版)。2023-2025の新設で約300,000km・78システム・約100億ドル規模https://submarine-cable-map-2025.telegeography.com/
- Open Connect Appliances / How Open Connect works一次情報Netflix Open Connect(2024)— 使用箇所: Open ConnectのOCAをIX設置(NetflixがOPEX負担)/ ISP内組み込み(embedded・機器無償)の2形態。オフピークに人気予測でプロアクティブ補充。1台ストレージ最大350TB・最大750W・10Gbpsポート2〜6https://openconnect.netflix.com/en/appliances/
- How hyperscalers are reshaping the subsea cable market調査会社Verdict / TeleGeography(2024)— 使用箇所: 国際海底容量の利用シェアが4大ハイパースケーラーで2010年代前半の約10%→2024年に71%超。コンテンツ事業者の参加ケーブル数は2017年20本→2024年59本https://www.verdict.co.uk/hyperscalers-subsea-cables-boom/
- Subsea Cables — Design業界団体KIS-ORCA(2024)— 使用箇所: 海底ケーブルの太さ。深海用は直径17〜21mm(庭ホース/親指ほど)、浅海の鎧装ケーブルは最大約50mm。層=光ファイバ/鋼線(強度部材)/銅導体(給電)/ポリエチレン絶縁/鎧装鋼線https://kis-orca.org/subsea-cables/design/
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