後工程は、回路を作り終えたウェハーを薄く削り、1枚ずつのチップに切り分け、組み立てて製品にする工程です。この「削る・切る」を担う装置で、日本のディスコが世界約7〜8割を握ります。

「検査・計測装置とKLA」までで、回路を作る前工程の装置を見てきました。回路ができたウェハーは、そのままでは使えません。薄くして、切り分けて、組み立てて——初めて「使えるチップ」になります。それが後工程です。製造工程の全体像は「半導体まとめ・入門ロードマップ」で確認できます。

この記事で動かせる図解

  1. 01製造工程フロー(後工程)薄化・個片化など、ディスコが担う後工程の位置づけを確認
ひとことで言うと(初心者向け)

後工程は、完成したウェハーを薄く削り、1つずつのチップに切り分け、組み立てる工程です。この『削る・切る』装置で、日本のディスコが世界約7〜8割を握ります。

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構造で言うと(投資家向け)

後工程の研削・ダイシングはディスコが世界約7〜8割。AI半導体の生産・先端パッケージング需要で拡大し、2025年3月期 売上約3,933億円(過去最高)。装置+消耗品の一貫体制で高い参入障壁を持ちます。

後工程とは何か、ディスコはどこを担うのか

「半導体とは何か」でも見た製造工程のうち、回路を作るのが前工程、それを製品にするのがです(前工程と後工程の違いそのものは「半導体の前工程と後工程は、何が違うのか」で整理しています)。下のフロー図で後工程に進むと、ディスコの主戦場が分かります。

チップができるまで(前工程 → 後工程の一本道)

前工程:回路を作る成膜→露光→エッチングを層の数だけ繰り返す

後工程:製品にする①バックグラインドは前工程の続き

前工程1 / 12

※ この断面図は、1枚のウェハーに並ぶ何百個のチップのうち“1つ分”を拡大したものです。

Si↑ウェハーの1チップを拡大中
膜レジストシリコン

前工程 ① 成膜・塗布

ウェハー表面に、配線や絶縁体のもとになる薄い膜を一様につける。液体を塗る『塗布』もこの仲間。

主な企業・装置
東京エレクトロン / Applied Materials / Lam Research

図1の多層構造は前工程(①〜⑥の繰り返し)で作られ、その後の後工程(薄化→個片化→組み立て→封止→検査)を経て、初めて「使えるチップ」になります。

後工程の入り口が、ウェハーの裏面を削って薄くする「グラインダ(研削)」と、ウェハーを格子状に切って1枚ずつのチップに分ける「ダイシング(切断)」です。どちらもディスコが世界約7〜8割を握るとされ、装置だけでなく切断用のブレード(消耗品)まで一貫して手がけています(Senrigan Analytics)。

バックグラインドとは何か。なぜウェハーを薄く削るのか

バックグラインドとは、回路を作り終えたウェハーの裏面を砥石で研削して薄くする工程です。製造中のウェハーは割れずに搬送できるよう約775μm(300mmウェハーの場合)の厚みがありますが、製品にはそれほどの厚みは不要です。パッケージを薄くする、熱を逃がしやすくする、チップを何段も積み重ねる——こうした目的のために、用途に応じて100μm前後、積層メモリ向けでは数十μmまで削り込みます。

薄くするほど割れやすくなるため、研削の精度と、削った後のウェハーを傷めずに扱う技術が問われます。そしてディスコはこのグラインダでも世界首位とされ、ダイシングと合わせて「薄く削って、切り分ける」の両方を押さえています。スマホの薄型化や、「HBM」のようにチップを10段以上積む製品の広がりが、バックグラインドの難度と価値を引き上げています。

バックグラインドとダイシングは、何がどう違うのか

2つの工程は、ウェハーに加える加工が違います。バックグラインドは削って薄くする工程、ダイシングは切って個片にする工程です。

項目バックグラインドダイシング
加工ウェハーの裏面を砥石で研削するウェハーを格子状に切断する
結果ウェハーが薄くなる(100μm前後〜数十μm)1枚ずつのチップ(ダイ)に分かれる
使う装置グラインダ(研削装置)ダイサ(ダイシングソー)

ディスコは、この両方の装置で世界約7〜8割を握るとされます。

ディスコは後工程のどこを握っているのか

後工程装置でディスコが独占的な地位にあるのは、ウェハーを削るグラインダとチップに切り分けるダイシングの両方で世界シェア約7〜8割を握り、装置と消耗品を一貫供給しているためです。ディスコが握るのは、後工程の入り口にあたる「削る」と「切る」の2工程です。グラインダ(研削装置)はウェハーの裏面を砥石で削って薄くし、ダイサ(ダイシングソー、切断装置)はウェハーを格子状に切って1枚ずつのチップに個片化します。つまり、回路を作り終えたウェハーが製品になるために最初に通る加工を、両方ともディスコの装置が担っています。

シェアが高い理由は3つあります。第一に、切る・削る精度が(良品率)を直接左右するため、長年の量産実績で積み上げた信頼が決定的に効きます。第二に、装置だけでなくダイヤモンドブレードや砥石(消耗品)まで自社で一貫供給し、加工条件をセットで最適化できます。第三に、極薄ウェハーや積層チップのような難度の高い加工ほどノウハウの差が大きく出ます。したがって、この工程への新規参入はほぼ不可能とされています。

しかも消耗品(精密加工ツール)は売上の約2割を占め、顧客の装置が稼働するたびに継続的に消費されます。装置を売って終わりではなく、その後も収入が積み上がるこの両輪の構造が、ディスコの安定した収益基盤です。1937年創業からの歩みや事業構成、競争構造の分析は「チップを"切って削って磨く"工程を、世界でほぼ独占する日本企業(ディスコ徹底分析)」で深掘りしています。

なぜ後工程の重要性が高まっているのか

かつて後工程は前工程ほど注目されませんでした。しかし近年、複数のチップを高密度に束ねる(など)が、AI半導体の性能を左右する主戦場になっています。

微細化が物理的に難しくなる中、「束ねる技術」で性能を伸ばす流れが強まり、後工程の価値が高まっています。GPUと「HBM(広帯域メモリ)」を一枚の土台の上で一体化する実装は、その代表例です。

ディスコのダイシング・グラインダは、こうしたAI半導体の生産拡大に直結します。実際、2025年3月期の売上は約3,933億円で過去最高でした。日本勢全体の位置づけは「半導体は日本の装置がなければ作れない」で扱っています。

投資・市場の観点では何が重要か

後工程装置は、AI半導体の生産量と先端パッケージングの拡大に連動します。前工程ほど装置単価は高くありませんが、ディスコのように装置と消耗品を一貫して持つ企業は、安定した収益基盤を築いています。需要のドライバーであるAI向け生産と、対中規制の影響を確認するのが要点です。なお本記事は投資助言ではありません(SEMI)。

この記事のまとめ

  • 後工程は、回路を作り終えたウェハーを薄化・個片化し、組み立てて製品にする工程。
  • グラインダ(削る)とダイシング(切る)は後工程の入り口で、日本のディスコが世界約7〜8割を握るとされる。
  • ディスコは装置と消耗品(ブレード)を一貫して持ち、AI半導体の生産拡大で2025年3月期 売上約3,933億円(過去最高)。
  • 近年は複数チップを束ねる先端パッケージング(CoWoS等)が重要になり、後工程の価値が高まっている。
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よくある質問(FAQ)

Q.後工程の装置とは何ですか?+

回路を作り終えたウェハーを、薄く削る(バックグラインド)、1枚ずつのチップに切り分ける(ダイシング)、基板に組み立てて封止する、といった「製品にする」工程の装置です。前工程(回路を作る)に対して、後工程は組み立て・加工を担います。

Q.ダイシングとグラインダとは何ですか?+

グラインダはウェハーの裏面を削って薄くする研削装置、ダイシングはウェハーを格子状に切って1枚ずつのチップに分ける切断装置です。どちらも後工程の入り口にあたる重要な工程です。

Q.バックグラインドとは何ですか?+

回路を作り終えたウェハーの裏面を砥石で研削して薄くする工程です。製造中のウェハーは約775μm(300mm品)の厚みがありますが、パッケージの薄型化や放熱、チップの積層のために、用途に応じて100μm前後、積層メモリ向けでは数十μmまで削ります。

Q.ディスコはなぜ強いのですか?+

日本のディスコは、ダイシング装置・グラインダ・ブレード(消耗品)まで一貫して手がけ、ダイシング装置で世界約7〜8割を握るとされます。AI半導体の生産拡大で需要が伸び、2025年3月期の売上は約3,933億円と過去最高でした。

Q.バックグラインドとダイシングは何が違いますか?+

バックグラインドは、ウェハーの裏面を砥石で削って薄くする工程です。ダイシングは、ウェハーを格子状に切って1枚ずつのチップに分ける工程です。どちらもディスコが世界約7〜8割を握るとされます。

Q.ディスコは前工程と後工程のどちらの会社ですか?+

ディスコは主に後工程(の入り口)の装置メーカーです。回路を作り終えたウェハーを薄く削るグラインダ(研削)と、1枚ずつのチップに切り分けるダイシング(切断)を手がけ、いずれも世界約7〜8割を握るとされます。回路をシリコンに作り込む前工程(露光・成膜・エッチング)とは、担当する工程そのものが異なります。

Q.後工程でディスコのシェアはどれくらいですか?+

後工程の入り口にあたるグラインダ(研削)とダイシング(切断)で、ディスコはそれぞれ世界シェア約7〜8割を握ります。装置に加えてダイヤモンドブレードや砥石といった消耗品まで一貫供給する体制が、このシェアを支えています。

用語集

後工程(OSAT)/ back-end / OSAT
ウェハーから切り出したチップを検査・組み立て・パッケージする工程。
パッケージング(先端パッケージング)/ advanced packaging
切り出したチップを基板に載せ、配線し、保護する工程。複数のチップを高密度につなぐ先端版もある。
CoWoS(コーワス)/ Chip on Wafer on Substrate
GPUと記憶用のHBMなど複数のチップを、1枚の土台(インターポーザ)の上に並べて1つのパッケージにまとめるTSMCの先端パッケージング技術。
歩留まり/ yield ヨミ:ぶどまり
1枚のウェハーから取れるチップのうち、欠陥のない良品の割合。
ウェハー/ wafer
半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。

参考資料・引用元

  1. DISCO 企業分析(IR数値に基づく集計)報道
    Senrigan Analytics(2025-09)— 使用箇所: DISCO 2025年3月期 約3,933億円・ダイシング装置の世界シェア(要一次確認)
    https://senrigan.tech/en/report/6146_20250906
  2. Global Total Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach Record $109 Billion in 2024業界団体
    SEMI(2024)— 使用箇所: 2024年 前工程装置(WFE)約1,010億ドル・総装置約1,090億ドル(過去最高)
    https://www.semi.org/en/semi-press-releases/global-total-semiconductor-equipment-sales-forecast-to-reach-record

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