onsemi(オンセミ/ON Semiconductor)は、EV(電気自動車)と「車の目」になるセンサに賭けてきた米国の半導体メーカーです。モトローラの半導体部門を起源とし、いまはEV向けSiCパワー半導体(電気のムダを熱に変えず省エネにする半導体)と車載イメージセンサ(車載カメラの目となるチップ)の2本柱に事業を集中させています。設計から製造まで自社で行うIDM(垂直統合型メーカー)で、2024年の売上は70.8億ドルでした。本記事では、沿革・セグメント別売上・技術的強み・サプライチェーンでの役割・競争構造・リスクを、技術と市場の両面から徹底分析します。

EVやデータセンターの電源で電気のムダを減らすパワー半導体については、「EVもデータセンターも、電気の“ムダ”を減らす半導体で動いている」で基礎を解説しています。onsemiは、その主役であるSiCパワー半導体の世界上位企業です。

ひとことで言うと(初心者向け)

onsemiは、もともと携帯電話で有名だったモトローラの半導体部門が独立してできた会社です。いまは大きく2つのことに集中しています。1つはEVのモーターを効率よく回すための『パワー半導体』。電気のムダを減らして、同じ電池でより遠くまで走れるようにします。もう1つは自動運転やバックモニターに使う『車載カメラ用のチップ(イメージセンサ)』で、こちらは世界シェア4割超でトップです。自分で工場を持って作る会社(IDM)なので、車の厳しい品質基準にも応えやすいのが特徴です。

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構造で言うと(投資家向け)

onsemiはモトローラ半導体部門を起源とする米国のIDMで、車載・産業に事業を集中させた電力・センシング特化型だ。2024年売上は70.8億ドル(前年比-14.2%)で、PSG47%・AMG37%・ISG16%の3セグメント構成。市場構造の核心は2つで、第1にSiCパワー半導体での競争(首位STに次ぐ世界2位、競合はInfineon・Wolfspeed・ROHM、上位5社で約9割の寡占)、第2に車載イメージセンサでの約40%超の支配的シェアだ。最大のリスクは車載・産業の市況変動とEV普及の鈍化で、IDMゆえ需要減局面では工場稼働率の低下が利益を直撃する。Fab-Right戦略で旧式150mm工場を整理し300mm・200mm SiCへ集約、稼働率と利益率の回復を図っている。

onsemiとはどんな会社で、どう生まれたのか

onsemiとは、1999年にモトローラの半導体部門(Semiconductor Components Group)を分離して生まれた米国の半導体メーカーです。設計から製造まで自社で一貫して行うIDM(垂直統合型デバイスメーカー)という事業形態をとります。1999年8月、テキサス・パシフィック・グループ主導の約16億ドルの買収でモトローラから独立し、2000年4月にナスダックに上場しました(Wikipedia / onsemi)。

独立当初は、ダイオードや(電気を流したり止めたりするスイッチ素子)といった汎用の標準部品を大量供給する「ジェリービーン(汎用品)」中心の会社でした。そこから買収を重ねて事業を組み替え、2014年のAptina(画像センサ)、2016年のFairchild Semiconductor(パワー半導体)などを取り込み、車載・産業向けのパワーとセンシングに軸足を移していきました。

2021年にはブランド名を「ON Semiconductor」から小文字の「onsemi」へ刷新し、EV・自動運転・産業の電動化に的を絞る方針を鮮明にしました。半導体業界の中でonsemiがどの役割に位置するかは、「半導体メーカーは、6つの役割で見ると一気にわかる」もあわせて読むと全体像がつかめます。

onsemiの売上はどのセグメントで構成されるのか

onsemiの売上は、PSG・AMG・ISGの3つの事業セグメントに分かれます。2024年の総売上は70.8億ドルで、前年(82.5億ドル)から14.2%減りました。車載・産業の在庫調整と需要鈍化が響いた形です(onsemi IR)。

セグメント別の内訳は次の通りです。

セグメント2024年 売上全体比主な中身
PSG(パワーソリューション)33.5億ドル47%SiC等パワー半導体・ディスクリート
AMG(アナログ&ミックスドシグナル)26.1億ドル37%電源IC・接続・アナログ製品
ISG(インテリジェントセンシング)11.3億ドル16%車載・産業用イメージセンサ

(出典:onsemi / SEC)

この表が示すのは「パワー半導体への重心」です。PSG(パワーソリューション、EVのモーター駆動などで電気のムダを減らす半導体群)が売上の半分近くを占め、ISG(インテリジェントセンシング、車載カメラ用のイメージセンサ)が画像の目を担います。さらに最終用途で見ると、売上の過半は車載で、次いで産業向けが大きく、この2市場でonsemiの大半の売上が生まれています。

つまりonsemiの業績は、EVと自動運転、そして産業の電動化という3つの流れに連動する構造になっています。

onsemiの技術的な強みはどこにあるのか

onsemiの技術的強みは、EV向けSiCパワー半導体と車載イメージセンサという2つの分野で世界上位を占める点にあります。

第1の柱はSiC(炭化ケイ素)パワー半導体です。SiCとは、従来のシリコンより高い電圧・高い温度に耐え、電気のムダ(電力損失)を減らせる次世代の半導体材料のことです。EVのインバーター(電池の直流をモーター用の交流に変える装置)に使うと、同じ電池でより遠くまで走れます。

しかもonsemiは、SiCの基板(ウェハー)の引き上げから完成チップまで自社で一貫生産する体制を持ち、2023年のSiCパワーデバイス市場でSTMicroelectronicsに次ぐ世界2位に立ちました(Semiconductor Today / TrendForce)。

第2の柱は車載イメージセンサです。イメージセンサとは、レンズが捉えた光を電気信号の画像に変えるチップのことです。onsemiはバックモニター・ADAS(先進運転支援システム)・自動運転に使う車載カメラ向けで、2023年に世界シェア約40%超を握る首位とされます(TechInsights)。

この2つに共通する強みが、IDMという一貫生産体制です。半導体には製造工程で良品が取れる割合を示すがありますが、SiCは加工が難しく歩留まりを上げにくい材料です。onsemiは基板からチップまで内製することで品質と歩留まりを自社で管理し、故障が許されない車載品質に応えています。先端の微細(回路の細かさの世代)を競う演算チップとは違い、パワーとセンシングという「材料とアナログの作り込み」で勝負しているのが特徴です。

サプライチェーンの中でonsemiはどんな役割か

onsemiは、設計から製造・組立までを自社で担うIDMとして、EV・ADAS・産業のサプライチェーンに部品を供給する位置にいます。半導体には、設計だけのファブレス、製造だけのファウンドリ、その両方を持つIDMがあり、onsemiはIDMにあたります(Wikipedia / onsemi)。

供給先は、自動車メーカーやそのティア1(一次部品メーカー)が中心です。EVではインバーターやオンボードチャージャー(車載充電器)にSiCパワー半導体を、ADAS・自動運転ではカメラにイメージセンサを供給します。データセンターの電源向けにもパワー半導体を展開しており、AIの普及で増える電力需要に応えています。AIインフラの電力制約については「AIの本当のボトルネックは、半導体ではなく電気だった」で詳しく解説しています。

IDMの強みは、車載が求める長期の安定供給と品質保証を一貫体制で約束できる点です。一方で、自社工場の固定費を抱えるため、需要が落ちると工場の稼働率低下が利益を圧迫する弱点も併せ持ちます。

onsemiの市場ポジションと競争構造はどうなっているか

onsemiの市場ポジションは、SiCパワー半導体で世界2位、車載イメージセンサで世界首位という「車載特化の上位プレイヤー」です。SiCパワーデバイス市場は、首位STMicroelectronics(2023年シェア約32.6%)にonsemi・Infineon・Wolfspeed・ROHMが続き、上位5社で約9割を占める寡占市場です(Semiconductor Today / TrendForce)。

この競争環境を、「誰と、どんな力関係で戦っているか」という5つの視点で整理すると次の通りです。

競争の視点相手強さ中身
既存競合STMicroelectronics・Infineon強SiC首位ST・パワー全般で強いInfineonと直接競合
買い手の交渉力自動車メーカー・ティア1中〜強車載顧客は大口で価格交渉力が強い
売り手の交渉力SiC基板・装置メーカー中SiC基板を内製化し依存を低減
代替品の脅威シリコンIGBT・Wolfspeed中安価なシリコンIGBTやSiC専業が代替に
新規参入の脅威(技術・資本障壁)弱SiC一貫生産と車載認証の障壁が参入を阻む

この表が示す要点は2つです。1つは、既存競合の強さです。SiCではSTがシェア首位、パワー半導体全般ではInfineonが強く、さらにSiC専業のWolfspeedが価格で攻めるため、onsemiは複数の強敵と同時に競合します。もう1つは、買い手である自動車メーカーの交渉力です。車載は大口・長期契約ゆえに価格圧力が強く、EV市況が鈍ると値下げ要求も強まります。一方で、SiC基板からの一貫生産と車載認証の高い障壁が、新規参入を抑える防壁になっています。

onsemiの弱みとリスクは何か

onsemi最大のリスクは、売上が車載と産業という景気変動の大きい市場に集中していることです。2024年の売上は前年比14.2%減の70.8億ドルと、車載・産業の在庫調整で大きく落ち込みました。EV普及が当初の想定より鈍化したことが、SiC需要の伸び悩みに直結しています(onsemi IR)。

第2のリスクはSiCの価格下落と競争激化です。SiCは各社が増産に動いた結果、供給が需要を上回りつつあり、価格競争が起きています。また、安価なシリコンIGBT(従来型のパワー半導体)への置き換えも一部で進み、SiCの伸びを抑える要因になります。

第3のリスクはIDM特有の稼働率リスクです。onsemiは自社工場を持つため、需要が落ちると工場の稼働率低下が固定費を回収できず、利益率を直接圧迫します。実際、2024年は工場の稼働率低下が利益を押し下げました。

onsemiの最近の動向はどうなっているか

最近のonsemiは、需要鈍化に対応する事業の集中と工場再編を進めています。2025年には「Fab-Right」と呼ぶ戦略のもと、効率の低い旧式の150mm(ウェハーの直径6インチ相当)工場を整理し、生産を高効率な300mmシリコン工場と200mm SiC工場へ集約する方針を打ち出しました。あわせて約2,400人規模の人員削減も実施しています(Power Electronics News)。

技術面では、第4世代のSiC MOSFET(SiC製のスイッチ素子)で効率を高め、800VへのEV高電圧化に合わせてSiCの採用拡大を狙っています。さらに2024年に発表した「Treo」(アナログ回路とデジタル回路を1つのチップに混載できる共通の設計基盤)を、車載・産業・AIデータセンターの電源向けに広げています。EVと「車の目」に賭けてきたonsemiは、市況の谷を工場再編で乗り切りつつ、電動化と自動運転の次の波に備える段階にあります。

この記事のまとめ

  • onsemiは1999年にモトローラ半導体部門から分離した米国のIDMで、車載・産業向けへ事業を集中させてきた。
  • 2024年売上は70.8億ドル(前年比-14.2%)で、PSG47%・AMG37%・ISG16%の3セグメント構成だ。
  • 強みはEV向けSiCパワー半導体(世界2位)と車載イメージセンサ(世界シェア40%超で首位)の2本柱にある。
  • 競争構造分析では、ST・Infineon・WolfspeedとのSiC競合と、車載顧客の交渉力が市場構造の核心になる。
  • リスクは車載・産業市況とEV鈍化、SiC価格下落。Fab-Right戦略で工場を再編し、稼働率と利益率の回復を狙っている。

この記事のまとめ

  • onsemiは1999年にモトローラ半導体部門から分離した米国のIDMで、車載・産業向けへ事業を集中させてきた。
  • 2024年売上は70.8億ドル(前年比14.2%減)。PSG(パワー)47%・AMG(アナログ/ミックスドシグナル)37%・ISG(センシング)16%の3セグメント構成だ。
  • 強みはEV向けSiCパワー半導体(世界2位)と車載イメージセンサ(世界シェア40%超で首位)の2本柱にある。
  • 競争構造では、ST・Infineon・WolfspeedとのSiC競合と、車載顧客の交渉力が市場構造の核心になる。
  • リスクは車載・産業市況とEV鈍化、SiC価格下落。Fab-Right戦略で工場を再編し、稼働率と利益率の回復を狙っている。
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よくある質問(FAQ)

Q.onsemi(オンセミ)とはどんな会社ですか。+

onsemiとは、1999年にモトローラの半導体部門(Semiconductor Components Group)を分離して生まれた米国の半導体メーカーです。設計から製造まで自社で行うIDM(垂直統合型メーカー)で、現在はEV・自動運転などの車載と産業向けに事業を集中させています。SiCパワー半導体(省エネ半導体)と車載イメージセンサ(車載カメラ用チップ)で世界上位に立ち、2024年の売上は70.8億ドルでした。

Q.onsemiの強みはどこにありますか。+

EV向けSiC(炭化ケイ素)パワー半導体と、車載イメージセンサの2つで世界上位を占める点です。SiCパワー半導体ではSTMicroelectronicsに次ぐ世界2位(2023年シェア約2割)、車載イメージセンサでは世界シェア約40%超で首位とされます。基板から完成チップまで自社で一貫生産するIDM体制で、車載品質と安定供給を武器にしています。

Q.onsemiの弱みやリスクは何ですか。+

売上が車載と産業という景気変動の大きい市場に集中している点です。2024年の売上は前年比14.2%減の70.8億ドルと、車載・産業の在庫調整で大きく落ち込みました。EV普及が想定より鈍化するとSiC需要も鈍り、価格競争も激化します。自社工場を持つIDMゆえ、需要が減ると工場の稼働率低下が利益を圧迫します。

用語集

トランジスタ/ transistor
電気のスイッチ。オン/オフで「0と1」を表し、計算と記憶の最小単位になる。
ウェハー/ wafer
半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。
データセンター/ data center
大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。
歩留まり/ yield ヨミ:ぶどまり
1枚のウェハーから取れるチップのうち、欠陥のない良品の割合。
ノード(プロセス)/ process node
製造プロセスの世代を表す呼び名(例:3nm)。小さいほど高性能・省電力になりやすい。
ASIC(カスタムチップ)/ Application-Specific Integrated Circuit
特定の用途だけに特化して作る専用チップ。汎用品より無駄がなく、決まった処理を安く・省電力でこなせる。

参考資料・引用元

  1. onsemi — Company History報道
    Wikipedia / onsemi(2025-01)— 使用箇所: モトローラ半導体部門起源・1999年設立・2000年IPO・IDM
    https://en.wikipedia.org/wiki/Onsemi
  2. onsemi Reports Fourth Quarter and Full Year 2024 Results一次情報
    onsemi IR(2025-02)— 使用箇所: 2024年通期売上70.8億ドル(-14.2%)
    https://investor.onsemi.com/news-releases/news-release-details/onsemi-reports-fourth-quarter-and-full-year-2024-results
  3. ON Semiconductor Form 10-K (segment revenue PSG/AMG/ISG)一次情報
    onsemi / SEC(2025-02)— 使用箇所: 2024年セグメント PSG33.5億(47%)・AMG26.1億(37%)・ISG11.3億ドル(16%)
    https://investor.onsemi.com/sec-filings
  4. SiC power device market share 2023 (onsemi #2)調査会社
    Semiconductor Today / TrendForce(2024-06)— 使用箇所: SiCで首位ST32.6%・onsemi2位・上位5社で約91.9%
    https://www.semiconductor-today.com/news_items/2024/jun/trendforce-200624.shtml
  5. Automotive Image Sensor Market Share 2023: onsemi Leads調査会社
    TechInsights(2023-08)— 使用箇所: 車載イメージセンサ世界シェア約40%超で首位(2023)
    https://www.techinsights.com/blog/automotive-image-sensor-market-share-2023-onsemi-leads-over-40-share
  6. Onsemi's 2025 Strategy: Fab Utilization, SiC, and Market Recovery報道
    Power Electronics News(2025)— 使用箇所: Fab-Right戦略(300mm/200mm SiC集約)・第4世代SiC MOSFET
    https://www.powerelectronicsnews.com/onsemis-2025-strategy-fab-utilization-sic-and-market-recovery/

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