地上の通信は「海底ケーブル」や「基地局」が支えますが、海の上や山間部、被災地ではそれらが届きません。そこを埋めるのが衛星通信です。
この記事で動かせる図解
- 01衛星インターネットと衛星間レーザー(3Dモデル)低軌道(LEO)の衛星群がレーザーでつながる様子と、遠い静止軌道(GEO)との違いを立体で確認
昔の通信衛星は約36,000kmも上にいたので、通信に時間がかかりました。Starlinkは約550kmと地球のすぐ近くを飛び、たくさんの衛星でリレーします。衛星同士はレーザーでつながっていて、地上の中継基地がない海の上でもつながります。
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GEO(約36,000km・往復0.5秒超)からLEO(約550km・25〜50ms)へ。LEOはフットプリントが狭く数千基のコンステレーション+ハンドオーバーが前提。ISL(衛星間レーザー)で地上局非依存の宇宙中継を実現し、真空伝搬の優位で長距離はファイバー比で低遅延になりうる。
衛星通信とは何か
衛星通信とは、宇宙にある人工衛星を中継してデータをやり取りする通信です。地上にアンテナを置けない海上・山間部・離島・被災地でも、空さえ見えればつながるのが最大の利点です。
衛星通信には、衛星をどの高さに置くかで大きく2種類あります。遠くて広く覆える静止軌道(GEO)と、近くて速い低軌道(LEO)です。この違いが、通信の速さ(遅延)を大きく分けます。
なぜStarlinkは低い軌道を飛ぶのか
下の3Dモデルで、2つの軌道の違いを見てみましょう。
静止軌道(GEO)は約36,000kmという非常に高い位置にあります。地球の自転と同じ速さで回るため空に止まって見え、1基で広い範囲を覆えます。しかし遠すぎるため、光が往復するだけで約0.5秒以上の遅延が生じ、テレビ会議やゲームには向きません。
そこでStarlinkは、約550kmという低軌道(LEO)を選びました。近いぶん遅延は25〜50msと小さく、地上の回線に近い感覚で使えます。ただし低いと1基が覆える範囲が狭く、しかも高速で周回してすぐ視界から外れます。そのため常時つなぐには、数千基規模の衛星群(コンステレーション)と、衛星から衛星へ接続を引き継ぐしくみが必要です(Wikipedia)。
衛星どうしをレーザーでつなぐとは(ISL)
Starlinkの大きな特徴が、です。各衛星はレーザー端末を備え、隣の衛星と光でつながって網を作ります。
これがなぜ重要かというと、地上局を経由せずに、宇宙空間だけでデータを中継できるからです。海の上や砂漠、極地など、近くに地上の中継基地がない場所でも、データは衛星から衛星へレーザーで運ばれ、地上局のある場所まで届きます。1つのレーザーリンクで最大100Gbps級、最大約5,400km先の衛星とつなげます(2024年初時点で約9,000基以上のレーザーが稼働)(SpaceX / Hackaday)。
なぜ宇宙のほうが光ファイバーより速いのか
イーロン・マスクがよく語るのが、この点です。光は真空中をいちばん速く進みます。ところが光ファイバーのガラスの中では、光速の約3分の2(約20万km/s)まで遅くなります。一方、宇宙空間(真空)では光速のまま、つまり地上のファイバーより約47%速く進めます。
そのため、低軌道の衛星をレーザーでつないだ網は、長距離になるほど光ファイバーより低遅延になりうるのです。実際、大陸間の長距離通信ではLEOレーザー網がファイバーを上回るという学術研究も発表されています。海底ケーブルが担ってきた長距離通信に、宇宙という新しい選択肢が加わりつつあります(arXiv 2106.07737)。
スマホが直接衛星とつながる時代
また、衛星通信は、専用アンテナだけのものではなくなりました。5Gの規格に衛星を組み込むNTN(非地上系ネットワーク=衛星などを通信網に統合するしくみ)が標準化され、ふつうのスマホが直接衛星とつながり始めています。
日本では、KDDI/auが「au Starlink Direct」を2025年4月に開始しました。空が見えれば、基地局の電波が届かない山間部や海上でも、特別な機器なしにメッセージなどをやり取りできます。このように、地上の「基地局」を補い、「圏外」をなくす方向へ通信は進んでいます(KDDI)。
この記事のまとめ
- 静止軌道(GEO)は約36,000kmと遠く遅い(往復約0.5秒以上)。低軌道(LEO)は約550kmで遅延25〜50msと速い。
- LEOは1基の覆う範囲が狭いため、常時つなぐには数千基規模の衛星群(コンステレーション)が必要。
- Starlinkは衛星どうしをレーザー(ISL)でつなぎ、地上局なしで宇宙空間を中継できる。1リンク最大100Gbps級。
- 真空中の光はファイバー(光速の約2/3)より速いため、長距離ではLEOレーザー網がファイバーに勝つこともある。
- 5G NTNにより、スマホが直接衛星とつながる時代に(日本ではau Starlink Directが2025年開始)。
この記事のまとめ
- 静止軌道(GEO)は約36,000kmと遠く遅い(往復約0.5秒以上)。低軌道(LEO)は約550kmで遅延25〜50msと速い。
- LEOは1基の覆う範囲が狭いため、常時つなぐには数千基規模の衛星群(コンステレーション)が必要。
- Starlinkは衛星どうしをレーザー(ISL)でつなぎ、地上局なしで宇宙空間を中継できる。1リンク最大100Gbps級。
- 真空中の光はファイバー(光速の約2/3)より速いため、長距離ではLEOレーザー網がファイバーに勝つこともある。
- 5G NTNにより、スマホが直接衛星とつながる時代に(日本ではau Starlink Directが2025年開始)。
よくある質問(FAQ)
Q.静止軌道(GEO)と低軌道(LEO)の衛星は何が違うのですか?+
高さが違います。静止軌道(GEO)は約36,000kmと非常に高く、1基で広い範囲を覆えますが、遠いぶん往復で約0.5秒以上の遅延が生じます。低軌道(LEO)はStarlinkで約550kmと低く、遅延は25〜50msと小さい一方、1基が覆う範囲が狭いため、常時つなぐには数千基規模の衛星群が必要です。
Q.Starlinkの衛星間レーザー(ISL)とは何ですか?+
衛星どうしをレーザー光で直接つなぐ通信です。地上局を経由せず、宇宙空間でデータを衛星から衛星へ中継できます。海の上や遠隔地など、近くに地上局がない場所でもつながるのが利点です。1リンクで最大100Gbps級、最大約5,400km先の衛星とつなげます。
Q.なぜ宇宙の通信が光ファイバーより速いことがあるのですか?+
光は真空中をいちばん速く進むからです。光ファイバーの中では光速の約3分の2(約20万km/s)まで落ちますが、宇宙空間(真空)では光速のまま進みます。そのため、低軌道の衛星をレーザーでつないだ網は、長距離では光ファイバーより低遅延になりうると、学術研究でも示されています。
用語集
- 衛星間光通信(ISL)/ inter-satellite laser link
- 衛星どうしをレーザー光で直接つなぐ通信。地上局を経由せず宇宙空間で中継できるので、海上や遠隔地でもつながる。
- 基地局/ base station
- スマホと電波をやり取りするアンテナ設備。担当エリア(セル)ごとに置かれ、移動すると隣の基地局へ接続が引き継がれる(ハンドオーバー)。
- 海底ケーブル/ submarine cable
- 海の底に敷かれた光ファイバーで、国際通信の大半を運ぶ。陸揚げする場所(陸揚局)の近くは通信が速い。
参考資料・引用元
- Geostationary orbit報道Wikipedia(2024)— 使用箇所: 静止軌道(GEO)の高度は約35,786km。片道の光伝搬だけで約119ms、往復レイテンシは約500〜600ms以上https://en.wikipedia.org/wiki/Geostationary_orbit
- Improving Starlink's Latency / Starlink Statistics一次情報SpaceX / J. McDowell(2026)— 使用箇所: Starlink(LEO・高度約550km)の遅延は中央値25〜50ms。軌道上の衛星数は2026年時点で1万基超(速報値・要更新)https://www.starlink.com/public-files/StarlinkLatency.pdf
- Starlink Inter-Satellite Laser Links(SPIE Photonics West 発表ほか)報道SpaceX / Hackaday(2024-02)— 使用箇所: 各衛星に通常3基のレーザー、1リンク最大100Gbps級・最大約5,400km。2024年初時点で9,000基超のレーザーが1日42PB・合計5.6Tbpsを中継(速報・要更新)https://hackaday.com/2024/02/05/starlinks-inter-satellite-laser-links-are-setting-new-record-with-42-million-gb-per-day/
- Optical Wireless Satellite Networks versus Optical Fiber調査会社arXiv 2106.07737(Carleton大)(2021)— 使用箇所: LEOレーザー網は大陸間長距離の全シナリオでファイバーより低遅延と結論。理由は真空(自由空間)伝搬がファイバー(約2/3c)より速いことと経路短縮https://arxiv.org/pdf/2106.07737
- Calculating Optical Fiber Latency業界団体M2 Optics(2024)— 使用箇所: 光ファイバー中の信号速度は約204,000km/s(真空中光速の約2/3、屈折率約1.47)。約4.9µs/km。レイテンシの物理的下限の根拠https://www.m2optics.com/blog/bid/70587/calculating-optical-fiber-latency
- au Starlink Direct 提供開始一次情報KDDI(2025-04-10)— 使用箇所: KDDI/auがStarlink衛星とスマホの直接通信「au Starlink Direct」を2025年4月開始。空が見えれば圏外でもSMS等が可能(5G NTN/3GPP Release 17の枠組み)https://newsroom.kddi.com/news/detail/kddi_nr-943_4353.html
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