インターネットを束ねる本社や中央サーバは、どこにも存在しません。世界中の通信事業者が、IX(相互接続点)で互いに直接つなぎ合うことで、全体が一つのネットワークになっています。ここでは「会社をまたいでつながるしくみ」と、名前を住所に変える「DNS」を見ていきます。

データが複数の網を渡り歩く話は「あなたのメッセージは世界の網を渡っていた」で扱いました。では、その「別々の会社の網」は、どうやって一つにつながっているのでしょうか。

ひとことで言うと(初心者向け)

インターネットには中心の会社がありません。たくさんの通信会社が、お互いの回線を直接つなぎ合って成り立っています。つなぎ方には『無料で対等に交換する(ピアリング)』と『お金を払って全部につないでもらう(トランジット)』の2つがあります。住所を調べる電話帳がDNSです。

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構造で言うと(投資家向け)

インターネットは自律システム(AS, 約7.9万)がBGPで経路交換する分散構造。相互接続はsettlement-freeなピアリングと有償トランジットの組み合わせで、IX近接とピアリング戦略がコスト・遅延を左右。名前解決はDNSの階層委任+キャッシュで分散化。

インターネットに「中心」はあるのか

ありません。インターネットは、AS(自律システム=それぞれが独自の方針で運用する個々のネットワーク)が、互いに接続し合った集合体です。通信事業者や大学、大企業などがそれぞれASを持ち、世界には経路情報を交換しているASが約7.9万あります。

それぞれのASは、BGP(事業者間で「どこへ行くにはどの隣に渡せばよいか」を教え合うルール)を使って経路情報をやり取りします。中央の管理者が全体を制御しているのではなく、隣どうしが情報を教え合う結果として、世界中どこへでも道がつながるのです(IETF)。

ピアリングとトランジットはどう違うのか

ASどうしのつなぎ方には、2種類あります。下の図で切り替えて比べてみましょう。

ピアリングとトランジットの違い(切り替え)

インターネット全体上位(トランジット)事業者料金を払って全体への到達性を買うIX(相互接続点)ISP AISP BISP CIXで互いに無償で直接交換(自社の利用者あて)

ピアリングは、対等な事業者どうしがIXで互いのトラフィックを無償で直接交換するしくみです。自社や顧客あての通信に限られますが、近くて速く、コストも抑えられます。

この図が示すこと:インターネットは多数の事業者(AS)が、無償のピアリングと有償のトランジットを組み合わせて相互接続した集合体です。どこと直接つなぐかが、速さとコストを左右します。

ひとつがピアリング。対等な事業者どうしが、IX(相互接続点=多数の網が物理的に集まってつながる拠点)で、互いのトラフィックを無償で直接交換します。近くて速く、コストも抑えられますが、交換できるのは自社や顧客あての通信に限られます。

もうひとつがトランジット。上位の事業者に料金を払って、「インターネット全体への到達性」を買います。ピアリングしていない相手にも届きますが、経路が遠回りになりコストもかかります。なお、トランジットを一切買わず、他のすべてと相互ピアリングだけで全体に届く最上位の事業者を「Tier-1」と呼びます。

日本では1997年に最初の商用IXが大手町に置かれて以来、主要IXとデータセンターが東京・大手町に集積しました。この相互接続の密度が立地価値を生むことは「日本一データセンターが集まる街は印西だった」でも触れています。動画事業者が自前で「CDN」を置きピアリングするのも、この経済性が理由です(JPNIC)。

ドメイン名はどうやって住所(IP)に変わるのか

私たちは「example.jp」のような名前でアクセスしますが、機械が使うのは(数字の住所)です。この名前を住所に変換するのがDNS(ドメインネームシステム=インターネットの電話帳)です。

名前解決は、階層をたどって進みます。

  1. あなたの端末が、まずリゾルバ(代理で調べてくれるサーバ)に「example.jp の住所は?」と尋ねる。
  2. リゾルバがルートサーバに尋ね、「.jp の担当(TLDサーバ)はここ」と教わる。
  3. 次に.jp の TLDサーバに尋ね、「example.jp の担当(権威サーバ)はここ」と教わる。
  4. 最後に権威サーバから、最終的なIPアドレスを受け取る。
  5. リゾルバはその結果を一定時間キャッシュ(一時保存)し、次回は素早く返す。

ルートサーバは「A〜M」の13の識別子しかありませんが、実体は世界中の数百〜千超の場所に分散して置かれており、1か所が止まっても困らないようになっています(IANA)。

IPアドレスはなぜ足りなくなったのか

住所であるIPアドレスには、古い規格のIPv4と新しいIPv6があります。IPv4は32ビットで表され、作れる住所は約43億個。しかしインターネットの爆発的な普及でこれが足りなくなり、世界の在庫は2011年に枯渇しました。

そこで登場したのがIPv6です。128ビットで表され、作れる住所は約3.4×10³⁸個(事実上無限)。日本でもIPv6への移行が進み、普及率はGoogleの測定で約50%(2026年)に達しています。つまり住所が尽きないことは、これからもあらゆる機器がネットにつながり続けるための前提です(Wikipedia / IANA・APNIC)。

この記事のまとめ

  • インターネットに中心はなく、AS(自律システム)が互いに接続し合った集合体。約7.9万のASがBGPで経路を教え合う。
  • ピアリングは対等な事業者がIXで無償で直接交換。トランジットは上位事業者に料金を払い全体への到達性を買う。
  • DNSはドメイン名をIPアドレスに変換。ルート→TLD→権威サーバの階層をたどり、結果はキャッシュされる。
  • IPv4は32ビット=約43億で2011年に在庫枯渇。IPv6は128ビット=事実上無限で移行が進む。
  • 主要IXやデータセンターが大手町に集中しており、相互接続の密度が立地価値を生む。

この記事のまとめ

  • インターネットに中心はなく、AS(自律システム)が互いに接続し合った集合体。約7.9万のASがBGPで経路を教え合う。
  • ピアリングは対等な事業者がIXで無償で直接交換。トランジットは上位事業者に料金を払い全体への到達性を買う。
  • DNSはドメイン名をIPアドレスに変換。ルート→TLD→権威サーバの階層をたどり、結果はキャッシュされる。
  • IPv4は32ビット=約43億で2011年に在庫枯渇。IPv6は128ビット=事実上無限で移行が進む。
  • 主要IXやデータセンターが大手町に集中しており、相互接続の密度が立地価値を生む。
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よくある質問(FAQ)

Q.インターネットに中心や本社はあるのですか?+

ありません。インターネットは、AS(自律システム=独自に運用される個々のネットワーク)が互いに接続し合った集合体です。世界には経路情報を交換しているASが約7.9万あり、BGPというルールで「どこへ行くにはどの隣へ渡すか」を教え合っています。中央の管理者はいません。

Q.ピアリングとトランジットの違いは何ですか?+

ピアリングは、対等な事業者どうしがIX(相互接続点)で互いのトラフィックを無償で直接交換するしくみです。トランジットは、上位の事業者に料金を払って『インターネット全体への到達性』を買うしくみです。ピアリングは近くて速く安いが相手が限られ、トランジットは誰にでも届くが遠回りでコストがかかります。

Q.ドメイン名はどうやってIPアドレスに変わるのですか?+

DNS(ドメインネームシステム)というしくみが変換します。リゾルバが、ルートサーバ→TLDサーバ(.jpや.comの担当)→権威サーバの順にたどって、最終的なIPアドレスを突き止めます。一度調べた結果は一定時間キャッシュ(一時保存)され、次回は素早く返されます。

用語集

DNS/ Domain Name System
ドメイン名(例:example.jp)を、機械が使うIPアドレス(住所)に変換する「電話帳」のしくみ。
IPアドレス/ IP address
インターネット上の「住所」。データはこの番号を頼りに相手まで届く。IPv4(約43億個)とIPv6(事実上無限)がある。
パケット/ packet
データを小さく分けた「小包」。インターネットでは情報をパケットに分割し、1個ずつ宛先まで運んで、相手側で元に戻す。

参考資料・引用元

  1. インターネット10分講座(IX・ピアリング・トランジット・AS)一次情報
    JPNIC(2023)— 使用箇所: IX(相互接続点)の役割、ピアリング(無償の相互接続)とトランジット(有償で全インターネットへの到達性を購入)の違い。1997年にJPIXが日本初の商用IX
    https://www.nic.ad.jp/ja/newsletter/No55/0320.html
  2. RFC 4271 — A Border Gateway Protocol 4 (BGP-4)一次情報
    IETF(2006-01)— 使用箇所: AS(自律システム)間のルーティングプロトコルBGP-4の規格。インターネットの経路情報を事業者間で交換するしくみ
    https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc4271
  3. CIDR Report(BGPに出現するAS数)業界団体
    CIDR Report(2026)— 使用箇所: BGPに経路広告しているAS数は約7.9万(2026、日次変動)。ASNは32ビット拡張で約42.9億個
    https://www.cidr-report.org/
  4. RFC 1034/1035 — Domain Names一次情報
    IETF(1987-11)— 使用箇所: DNSの規格。ルート→TLD→権威サーバの階層、再帰リゾルバとキャッシュ(TTL)による名前解決のしくみ
    https://www.rfc-editor.org/rfc/rfc1034
  5. Root Servers一次情報
    IANA(2024)— 使用箇所: DNSルートサーバは13の識別子(A〜M)。実体はAnycastで世界数百〜千超のインスタンスに分散。ICANN/IANAが最上位を管理
    https://www.iana.org/domains/root/servers
  6. IPv4 address exhaustion報道
    Wikipedia / IANA・APNIC(2011)— 使用箇所: IPv4(32ビット・約43億)のIANA中央在庫は2011年2月に枯渇。IPv6(128ビット・約3.4×10³⁸)への移行が進む
    https://en.wikipedia.org/wiki/IPv4_address_exhaustion

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