私たちは通信が当たり前につながると思っていますが、それは膨大な冗長化(よぶんに備えを持たせること)の上に成り立っています。インターネット全体が「網の網」である話は「あなたのメッセージは世界の網を渡っていた」で扱いました。ここでは日本国内の通信網に絞ります。
日本の通信網は、同じ場所へ行くのに何本も道を用意しています(二重化)。だから1本切れても、自動で別の道を通って通信が続きます。電話局や鉄塔も地震や台風に耐える作りで、停電に備えた電源も持っています。
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NTTの国内中継網はメッシュ/リングで多ルート化され、障害時はIP/伝送レイヤで自動迂回(自己修復は数十ms級)。重要通信ビルの地理的分散、耐災設計、予備電源・移動電源車で可用性を担保。IOWN/APNが低遅延の新レイヤを追加します。
日本の通信網はどんな構造なのか
日本の通信網は、階層構造になっています。利用者の回線(アクセス網)が、まず近くの電話局(収容局)に集まります。そこから県内・県間をつなぐ中継網を通って、全国、そして世界へとつながっていきます。
現在この基幹を担うのが、NGN(次世代ネットワーク=従来の電話網をIP技術で置き換えた統合網)です。NTT東日本・西日本が構築・運用し、音声もデータも映像も1つの網で扱います。NGNは回線や装置をあらかじめ二重に持つ(冗長化する)ことで、高い信頼性を実現しています(NTT東日本)。
なぜ1本切れても通信は止まらないのか
ここが核心です。NTTの国内中継伝送路は「網目のように」構築されており、1つのルートが被災しても自動的に他のルートへ切り替わります。下の図で、ケーブルを切ってみてください。
なぜ1本切れても通信は止まらないのか(切断してみる)
中継ルートは網目状に二重化され、1ルートが切れると自動的に別ルートへ迂回します。
通常は最短ルート(黄色)で「発」局から「着」局へデータが流れています。下のボタンで途中を切ってみましょう。
NTTの国内中継伝送路は網目状に二重化され、重要通信ビルも分散配置。通信ビル・鉄塔は震度7・風速60m/sに耐える設計で、予備電源も備えます。
この図が示すこと:日本の通信網が簡単に止まらないのは、ルートを二重化し、切れたら自動で迂回する設計だからです。リング型の自己修復は数十ミリ秒で切り替わります。
ポイントは、目的地への道が1本ではないことです。通常は最短ルートを使いますが、そこが切れると、データはぐるりと反対回りの別ルートへ迂回します。とくにリング型(環状)のネットワークでは、この切り替えが数十ミリ秒という短さで自動的に行われ、利用者はほとんど気づきません。これを「自己修復」と呼びます(NTTグループ)。
災害に強いのはなぜか
迂回路を用意するだけでは、災害には足りません。日本の通信網は、物理的にも徹底して守られています。
第一に、です。重要な局舎を地理的に分散させ、複数が同時に被災する危険を避けています。第二に、建物・設備の頑丈さ。通信ビルや鉄塔は、震度7クラスの地震や風速60m/sの大型台風に耐える設計です。第三に、電源の備え。停電に備えてバッテリーや発電機の予備電源を持ち、それでも足りなければ最大2,000kVA級の移動電源車を派遣します。また、が被災した地域には、可搬型の移動基地局を運び込んで通信を復旧させます。
大手町に集まりすぎてはいないか
一方で、日本の通信には「集中しすぎ」という課題もあります。主要な相互接続点(IX)やデータセンターが東京・大手町周辺に集まっており、ここが被災すると影響が大きいと指摘されてきました。事業者間がどこでつながっているかは「事業者をまたいでつながるしくみ(IX・DNS)」で、データセンターの集積と地方分散は「日本一データセンターが集まる街は印西だった」で扱っています。
NTTはこのリスクに対し、重要拠点の分散という思想で備えています。さらに近年は、IOWN/APN(光を最大限に使う超低遅延の新しいネットワーク)の専用線サービスを2024年に開始し、拠点間をより速く・確実につなぐ取り組みも進めています。日本海側を含む経路の多重化は、「海底ケーブルとデータセンター立地」とも地続きのテーマです(NTTコミュニケーションズ)。
この記事のまとめ
- NTTの国内中継網は網目状に二重化され、1ルートが切れると自動的に別ルートへ迂回する。
- リング型ネットワークの自己修復は数十ミリ秒で切り替わり、利用者はほとんど気づかない。
- 現在の基幹はNGNというIPベースの統合網で、回線・装置を冗長化して高信頼を実現。
- 重要通信ビルを分散配置し、建物・鉄塔は震度7・風速60m/sに耐え、予備電源や移動電源車も備える。
- 通信を支えるには、迂回路・分散・耐災・電源という多重の備えが欠かせない。
この記事のまとめ
- NTTの国内中継網は網目状に二重化され、1ルートが切れると自動的に別ルートへ迂回する。
- リング型ネットワークの自己修復は数十ミリ秒で切り替わり、利用者はほとんど気づかない。
- 現在の基幹はNGNというIPベースの統合網で、回線・装置を冗長化して高信頼を実現。
- 重要通信ビルを分散配置し、建物・鉄塔は震度7・風速60m/sに耐え、予備電源や移動電源車も備える。
- 通信を支えるには、迂回路・分散・耐災・電源という多重の備えが欠かせない。
よくある質問(FAQ)
Q.なぜケーブルが1本切れても通信は止まらないのですか?+
NTTの国内中継伝送路は網目状に二重化されているからです。1つのルートが地震や事故で切れても、データは自動的に別のルートへ迂回します。リング型のネットワークでは、この切り替えが数十ミリ秒という短さで行われ、利用者はほとんど気づきません。
Q.日本の通信網はどんな構造になっていますか?+
利用者の回線(アクセス網)が電話局(収容局)に集まり、そこから県内・県間をつなぐ中継網を通って全国・世界へつながります。現在はNGN(次世代ネットワーク)というIPベースの統合網が中心で、回線や装置を冗長化して高い信頼性を実現しています。
Q.災害のときに通信を守る工夫は何ですか?+
重要な通信ビルを分散配置して同時被災を避け、通信ビルや鉄塔は震度7クラスの地震や風速60m/sの台風に耐える設計にしています。停電に備えてバッテリーや発電機の予備電源を備え、足りなければ移動電源車や可搬型の基地局を派遣して通信を確保します。
用語集
- 冗長化(N+1・2N)/ redundancy
- 1か所が壊れても止まらないよう、電源や設備を多めに用意しておく考え方。電気を2系統引くのもこれ。
- 基地局/ base station
- スマホと電波をやり取りするアンテナ設備。担当エリア(セル)ごとに置かれ、移動すると隣の基地局へ接続が引き継がれる(ハンドオーバー)。
- データセンター/ data center
- 大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。
参考資料・引用元
- ネットワークの信頼性向上(中継伝送路の多ルート化・重要ビル分散)一次情報NTTグループ(2024)— 使用箇所: 国内の中継伝送路は網目状に構築され、1ルートが被災しても自動的に他ルートへ切替。重要通信ビルを分散配置。通信ビル・鉄塔は風速60m/s・震度7に耐える設計+予備電源https://group.ntt/jp/disaster/3principles/nw.html
- NGNとは(次世代ネットワーク)一次情報NTT東日本(2024)— 使用箇所: NGNはPSTNを置き換えるIPベースの統合網。通信回線・装置の冗長化と品質クラス分けで高信頼を実現https://www.ntt-east.co.jp/aboutus/ngn_about.html
- APN専用線プラン powered by IOWN 提供開始一次情報NTTコミュニケーションズ(2024-02-29)— 使用箇所: IOWN/APN(オールフォトニクス・ネットワーク)による超低遅延の専用線を2024年商用提供開始https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2024/0229.html
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