6Gの主役候補は、電波と光のちょうど中間にある「テラヘルツ波」です。周波数が極めて高いため、5Gの数十倍とも言われる超高速通信を可能にします。ただしまっすぐにしか飛ばず、壁や雨に弱いという弱点があり、多数の小型基地局が必要になります。通信だけでなく、物質を透視するセンシングにも使える未開の帯域です。

スマホの通信は4G、5Gと進化してきました。その次の6Gで使われようとしているのが、これまでほとんど使えなかった「テラヘルツ波」です。通信の進化は「4Gから5G、そして6Gへ」で整理しています。本稿では、その先端にあるテラヘルツ波の正体に踏み込みます。

ひとことで言うと(初心者向け)

電波と光は、実は仲間です。その間に『テラヘルツ波』という、これまでうまく使えなかった帯域があります。ここを使うと通信がものすごく速くなりますが、まっすぐにしか飛ばず、壁や雨にすぐ遮られます。だから小さな基地局をたくさん置く必要があります。さらに、物を透かして中を調べるレントゲンのような使い方もできます。

構造で言うと(投資家向け)も見る
構造で言うと(投資家向け)

テラヘルツ(サブTHz〜THz)は広帯域=高スループットの源泉だが、自由空間減衰と直進性でセル半径が小さく、超高密度の小型基地局・ビームフォーミングが前提。InP/GaN等の化合物半導体デバイスと光・電子融合がデバイス課題。通信に加えイメージング/分光のセンシング市場も射程。総務省Beyond 5Gで2030年前後。基地局の本数増はバックホール・DC需要を押し上げる。

テラヘルツ波とは何か

テラヘルツ波とは、電波と光(赤外線)のちょうど中間にある、周波数がおよそ0.1〜10テラヘルツの電磁波です。1テラヘルツとは、1秒間に1兆回振動する周波数を指します。

電波・テラヘルツ波・光は、どれも同じ「電磁波」の仲間で、周波数(振動の速さ)が違うだけです。低い方から電波、その上にテラヘルツ波、さらに上に赤外線や可視光が並びます。テラヘルツ帯は、電波として扱うには高すぎ、光として扱うには低すぎるため、長らく利用が難しく「未開の帯域(テラヘルツ・ギャップ)」と呼ばれてきました。

初心者向け
ラジオの電波と、目に見える光。この2つは実は同じ仲間で、振動の速さが違うだけです。その境目あたりにある、これまで使いこなせなかった領域がテラヘルツ波です。

なぜ6Gはテラヘルツ波を使うのか

6Gがテラヘルツ波を使う理由は、周波数が高いほど一度に運べる情報量(帯域)が大きくなるからです。

通信は、周波数が高いほど太い「データの通り道」を確保できます。テラヘルツ波は5Gで使う電波よりはるかに高い周波数を持つため、桁違いに大容量・高速な通信が可能になります。5Gの数十倍とも言われる速度が視野に入り、瞬時の大容量データ転送や、超高精細な映像のリアルタイム通信が実現します。

これまでの通信の進化は、4Gから5Gへと、より高い周波数へ踏み込むことで速度を上げてきました。6Gはその延長線上で、ついに「電波の上限」に近いテラヘルツ帯まで使おうとしています。AIが生み出す膨大なデータを遅延なく運ぶには、いまの5Gでは足りません。たとえば自動運転や遠隔手術、現実と見分けがつかない仮想空間といった用途が、テラヘルツ級の通信を必要とします。だからこそ、扱いの難しいこの帯域に各国が挑んでいるのです。

日本では総務省が「Beyond 5G(6G)推進戦略」を掲げ、テラヘルツ帯の活用を見据えて2030年ごろの実用化を目指しています(総務省)。

テラヘルツ波の弱点は何か

テラヘルツ波の最大の弱点は、まっすぐにしか飛ばず、遠くまで届かないことです。

電波は周波数が高いほど直進性が強くなり、回り込みにくくなります。テラヘルツ波は壁や障害物に遮られやすく、空気中の水分や雨でも大きく減衰します。このため、1つので広いエリアをカバーするのが難しく、多数の小型基地局を細かく配置する必要があります。

これは、光ファイバや無線のバックホール(基地局どうしをつなぐ回線)への負荷も高めます。基地局が増えるほど、それを支える通信インフラやの需要も膨らみます。通信網全体の仕組みは「インターネットは、どうやって世界をつないでいるのか」で確認できます。光で大量のデータを運ぶ仕組みは「髪より細いガラスが世界中のデータを運んでいる」で扱っています。

テラヘルツ波は通信以外にどう使えるのか

テラヘルツ波は、通信を超えたセンシング(検知・分析)にも使えます。これがこの帯域のもう一つの価値です。

テラヘルツ波は、紙・プラスチック・衣服などを透過する一方、金属や水には遮られます。さらに、物質ごとに固有の吸収パターン(指紋スペクトル)を持つため、「何でできているか」を非破壊で見分けられます。この性質を使えば、空港の手荷物検査で隠された危険物を見つけたり、製品の内部欠陥を調べたり、医療画像や食品の異物検出に応用したりできます(調査各社/研究機関)。

通信とセンシングの両方で価値を持つことが、各国がテラヘルツ波の研究に力を入れる理由です。たとえば日本では、半導体テスタのアドバンテストや、光デバイスの浜松ホトニクス、NTTなどがテラヘルツ技術の開発を進めています。

この記事のまとめ

  • テラヘルツ波は**電波と光の中間(約0.1〜10THz)**にある、これまで使われてこなかった帯域。
  • 周波数が高いほど運べる情報量が大きく、6Gで5Gの数十倍とも言われる超高速通信を狙う。
  • 弱点は直進性が強く遠くに届かないこと。壁・雨・水分に弱く、多数の小型基地局が必要。
  • 物質を透過し指紋スペクトルで識別できるため、検査・医療などのセンシングにも応用できる。
  • 総務省のBeyond 5G戦略のもと、2030年ごろの実用化を目指して研究が進む。

この記事のまとめ

  • テラヘルツ波は電波と光の中間(約0.1〜10THz)にある、これまで使われてこなかった帯域。
  • 周波数が高いほど運べる情報量が大きく、6Gで5Gの数十倍とも言われる超高速通信を狙う。
  • 弱点は直進性が強く遠くに届かないこと。壁・雨・水分に弱く、多数の小型基地局が必要。
  • 物質を透過し指紋スペクトルで識別できるため、検査・医療などのセンシングにも応用できる。
  • 総務省のBeyond 5G戦略のもと、2030年ごろの実用化を目指して研究が進む。
スポンサーリンク

よくある質問(FAQ)

Q.テラヘルツ波とは何ですか?+

テラヘルツ波とは、電波と光(赤外線)のちょうど中間にある、周波数がおよそ0.1〜10テラヘルツの電磁波です。1テラヘルツは1秒間に1兆回振動する周波数を指します。これまで利用が難しく『未開の帯域』と呼ばれてきましたが、6Gの主役候補として実用化の研究が進んでいます。

Q.なぜ6Gはテラヘルツ波を使うのですか?+

周波数が高いほど、一度に運べる情報量(帯域)が大きくなるためです。テラヘルツ波は5Gで使う電波よりはるかに高い周波数を持ち、桁違いに速い通信を可能にします。5Gの数十倍とも言われる超高速・大容量の通信を実現するために、これまで使われてこなかった高い帯域に踏み込もうとしています。

Q.テラヘルツ波の弱点は何ですか?+

最大の弱点は、まっすぐにしか飛ばず、遠くまで届かないことです。周波数が高いほど電波は直進性が強くなり、壁や障害物に遮られやすく、雨や空気中の水分でも減衰します。そのため広いエリアを1つの基地局でカバーするのが難しく、多数の小型基地局を細かく配置する必要があります。

Q.テラヘルツ波は通信以外にも使えますか?+

使えます。テラヘルツ波は紙やプラスチック、衣服などを透過し、物質ごとに固有の吸収パターン(指紋スペクトル)を持ちます。この性質を利用して、空港の手荷物検査、品質検査、医療画像、食品の異物検出などのセンシング(検知・分析)への応用が期待されています。通信とセンシングの両方で価値のある帯域です。

用語集

基地局/ base station
スマホと電波をやり取りするアンテナ設備。担当エリア(セル)ごとに置かれ、移動すると隣の基地局へ接続が引き継がれる(ハンドオーバー)。
データセンター/ data center
大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。

参考資料・引用元

  1. Beyond 5G(6G)推進戦略公的機関
    総務省(2024)— 使用箇所: 6Gで100GHz超〜テラヘルツ帯の活用を見据える日本のBeyond 5G推進戦略・2030年頃の実用化目標
    https://www.soumu.go.jp/
  2. テラヘルツ波の通信・センシング応用調査会社
    調査各社/研究機関(媒体集計)(2025)— 使用箇所: テラヘルツ帯の広帯域による超高速通信と、物質を透過し指紋スペクトルで識別するセンシング応用・直進性/減衰の課題
    https://www.nict.go.jp/

この記事をシェア

XFacebookLINEB!はてブ

コメント

GitHub アカウントでログインしてコメントできます。