ディスコの2026年4〜6月期決算は、売上高1143億円(+27.1%)に対し、純利益は342億円(+44%)だった。利益の伸びが売上の伸びを大きく上回った。を「切る・削る」装置と、使うたびにすり減る消耗品の両方がAI半導体の生産拡大で売れる構造が、そのまま数字に表れている。

7月23日、ディスコは2027年3月期の第1四半期(2026年4〜6月)決算を発表した。回路を作り込む花形工程ではなく、「出来上がったウェハーを個々のチップに切り分け」、裏面を削って薄くする——それだけに特化した会社が、AIブームの利益を最も確実に取り込んでいる。半導体づくり全体の流れは「半導体とは何か」で入門から解説している。

ひとことで言うと(初心者向け)

半導体チップを大きな円盤(ウェハー)から切り出す装置と、薄く削る装置で世界トップ級の日本企業ディスコの決算が好調でした。AI用のメモリは、チップを薄く削って何段も積み重ねて作ります。つまりAIチップが増えるほど「切る・削る」仕事が増えます。しかも装置だけでなく、使うたびにすり減る刃や砥石が繰り返し売れるため、利益が安定して積み上がります。

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構造で言うと(投資家向け)

FY2027 Q1(2026年4-6月):売上高1143億800万円(YoY+27.1%)・営業利益490億3300万円(YoY+42.2%)・純利益342億2100万円(YoY+44%)。営業利益率は約43%。牽引はAI向け半導体製造装置+ブレード等消耗品。通期会社予想は慣行として非開示。QUICKコンセンサスはFY2027売上高5372億4500万円で、Q1実績の単純年換算(約4572億円)を上回る=市場は下期にかけての増収継続を織り込み(日本経済新聞・2026年7月23日)。

2026年4〜6月期の数字はどう読むのか

売上高は1143億800万円で前年同期比27.1%増、営業利益は490億3300万円で同42.2%増、純利益は342億2100万円で同44%増だった。牽引したのはAI向け半導体の製造装置と、ブレード(ウェハーを切断する刃)などの消耗品の販売である(日本経済新聞・2026年7月23日)。

注目すべきは伸び率の順番だ。が27%伸びる間に、は42%、は44%伸びた。つまり、売れば売るほど利益率が上がる状態にある。

売上高は商いの規模そのもの、営業利益は本業でどれだけ稼いだか、純利益は税金等まで差し引いて最終的に手元に残る儲けを指す。伸び率がこの順に高くなるほど、儲けの「質」が改善していることを示す。実際、この四半期のは約43%に達する。製造業全体で見れば10%を超えれば優良とされるなかで、突出した水準だ。

しかも、この決算は一時的な特需による瞬間風速ではない。装置が売れた後に消耗品が繰り返し売れるという、後述する二段構えの収益構造が背景にある(ディスコ「2027年3月期 第1四半期決算短信」・2026年7月23日)。

なぜ「切る・削る」だけの会社がAIブームで儲かるのか

ディスコの主力製品は2つある。ウェハーを個々のチップに切断するダイシングソー(切断装置)と、ウェハーの裏面を削って薄くするグラインダ(研削装置)だ。半導体の製造工程でいえば、回路を作り終えた後のの入口にあたる。

この2分野で、ディスコは世界シェア首位級の地位を握る。どういう会社なのかは「企業分析の記事」で詳しく取り上げている。

このニッチな加工工程が、AIブームの中心に置かれることになった。理由はAIサーバーに欠かせない(広帯域メモリ)の作り方にある。HBMはメモリチップ()を薄く研削し、それを何段も垂直に積み重ねて1つの製品にする。「積層のために髪の毛より薄くウェハーを削る工程」が必須であり、積む段数が増えるほど、削って切る回数も増える。

さらに、GPUとHBMを1つの基板上にまとめる先端パッケージング(複数チップの一体化技術)の普及も追い風だ。パッケージングの工程数が増えるということは、チップを個片化し、薄化し、加工する回数が増えるということであり、その多くの場面でディスコの装置が使われる。「AIの性能を決めていたのは、GPUより「メモリ」だった」を知ると、この会社の位置がよくわかる。

したがって、AIチップの「性能競争」がそのままディスコの「加工回数の増加」に変換される。これが、切って削るだけの会社がAIブームで確実に儲かる理由だ。

消耗品ビジネスはどれほど効いているのか

今回の決算で装置と並んで牽引役に挙がったのが、ブレードなどの消耗品だ。ダイシングソーに装着するブレードは人造ダイヤモンドを固めた極薄の刃で、ウェハーを切るたびにすり減る。グラインダ用の砥石も同じく消耗する。

この構造が収益の質を大きく変える。装置は一度売れば終わりだが、消耗品は顧客の工場が稼働している限り、繰り返し注文が入る。つまり、世界中の半導体工場が増産すればするほど、ディスコには装置の新規受注と消耗品のリピート注文が同時に積み上がる。刃と装置を同じ会社が作っているため、顧客が他社の消耗品に乗り換えにくいことも、高い利益率を支えている。

半導体装置業界は好不況の波(シリコンサイクル)が激しいことで知られる。しかし消耗品の売上は工場の稼働に連動するため、装置の受注が止まる局面でも一定の収益が残る。+44%という利益の伸びの裏には、この「二段構え」の設計がある。

言い換えれば、ディスコにとってAIブームは二重の追い風だ。第一に、HBMや先端パッケージングの立ち上げに伴う装置の新規需要。第二に、立ち上がった工場が高稼働を続けることによる消耗品需要の増加である。

前者は景気に左右されるが、後者は据え付けられた装置の台数が増えるほど厚くなっていく。四半期ごとの装置受注の増減だけを見ていると、この会社の収益力を見誤ることになる。

通期予想を出さない会社はどう読めばいいのか

ディスコの決算にはひとつ癖がある。同社は通期の業績予想を開示しない。半導体製造装置は需要の振れ幅が大きく、年間を確度高く見通すこと自体が難しいためで、これは同社の一貫した慣行だ。

では投資家は何を目安にすればいいのか。外部の物差しとして使われるのが、QUICKが集計するアナリストのコンセンサス予想(複数アナリストの予想平均)だ。2027年3月期通期の売上高コンセンサスは5372億4500万円である(日本経済新聞・2026年7月23日)。

今回のQ1売上高1143億円を単純に4倍すると約4572億円で、コンセンサスの5372億円には届かない。つまり市場は、下期にかけて四半期売上がさらに伸びていくことを前提に予想を置いている。今後の四半期決算では、実績がこのコンセンサスに向けたペースに乗っているかどうかが判断の軸になる。会社が予想を出さない以上、四半期実績とコンセンサスの差分こそが、事実上の「進捗率」になる。

この記事のまとめ

  • ディスコの2026年4〜6月期は売上高1143億800万円(+27.1%)・営業利益490億3300万円(+42.2%)・純利益342億2100万円(+44%)の大幅だった。
  • 牽引役はAI向け半導体の製造装置と、ブレードなどの消耗品。営業利益率は約43%に達した。
  • HBMはDRAMを薄く研削して積層するため、AIチップが増えるほど「切る・削る」工程の需要が構造的に増える。
  • 装置の販売と消耗品のリピート注文が同時に積み上がる二段構えの収益構造が、高い利益率と安定性を支える。
  • 通期予想は慣行として非開示。QUICKコンセンサス(通期売上高5372億4500万円)との差分が事実上の進捗の物差しになる。

この記事のまとめ

  • ディスコ2026年4〜6月期:売上高1143億800万円(+27.1%)・営業利益490億3300万円(+42.2%)・純利益342億2100万円(+44%)。
  • 牽引役はAI向け半導体の製造装置と、ブレード(切断刃)等の消耗品の販売。
  • HBMはDRAMを薄く研削して積層するため、ディスコの研削・切断工程の需要が構造的に増える。
  • 装置+消耗品の二本立てで、顧客工場が稼働する限り収益が積み上がるビジネスモデル。
  • 通期予想は慣行として非開示。QUICKコンセンサスは通期売上高5372億4500万円。
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よくある質問(FAQ)

Q.ディスコの2026年4〜6月期決算の主な数字は?+

売上高1143億800万円(前年同期比+27.1%)、営業利益490億3300万円(+42.2%)、純利益342億2100万円(+44%)でした。AI向け半導体の製造装置と、ブレードなどの消耗品の販売が堅調でした(日本経済新聞・2026年7月23日)。

Q.なぜディスコはAIブームで業績が伸びているのか?+

AI向けメモリのHBMは、DRAMを薄く研削してから何段も積層して作るため、ディスコが世界シェア首位級を持つ研削(グラインダ)・切断(ダイシングソー)工程の需要が増えるためです。先端パッケージングの工程数増加も、加工回数=装置と消耗品の消費量を押し上げています。

Q.ディスコが通期業績予想を出さないのはなぜ?市場予想はどれくらい?+

半導体製造装置は需要変動が大きいため、ディスコは通期予想を開示しない慣行をとっています。外部の目安としては、QUICKが集計するアナリストのコンセンサス予想があり、2027年3月期通期の売上高は5372億4500万円です。

Q.ディスコの消耗品ビジネスはなぜ強いのか?+

ダイシングソーに装着するブレード(切断刃)や、グラインダ用の砥石は、使うたびにすり減る消耗品です。装置を一度売れば、顧客工場の稼働が続く限りブレード・砥石が繰り返し売れるため、装置の売り切りに比べて収益が安定します。

用語集

HBM/ High Bandwidth Memory
DRAMを積み重ねて広帯域にした高性能メモリ。AI半導体とセットで使われる。
売上高/ revenue / net sales
会社が商品やサービスを売って得た金額の合計。利益を引く前の数字。
営業利益/ operating income
本業の売上から、原価と販売・管理にかかる費用を引いて残る儲け。
純利益/ net income
売上からすべての費用・税金を差し引いて、会社に最終的に残る儲け。
営業利益率/ operating margin
本業の儲け(営業利益)が、売上に対して何%あるかを示す割合。
前年同期比/ year-over-year (YoY)
去年の同じ時期と比べて、今どれくらい増えた・減ったかを示す割合。
増収増益/ revenue and profit growth
売上も利益も、前の期より両方増えている状態。
ウェハー/ wafer
半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。
後工程(OSAT)/ back-end / OSAT
ウェハーから切り出したチップを検査・組み立て・パッケージする工程。
DRAM/ Dynamic Random Access Memory
電源を切ると消える、高速な作業用メモリ。CPUやGPUが計算中のデータを一時的に置く。

参考資料・引用元

  1. ディスコの4〜6月期、純利益44%増 AI向け装置・消耗品が堅調報道
    日本経済新聞(2026-07-23)— 使用箇所: 2027年3月期Q1(2026年4-6月)実績:売上高1143億800万円(YoY+27.1%)・営業利益490億3300万円(+42.2%)・純利益342億2100万円(+44%)・AI向け半導体製造装置とブレード等消耗品が牽引・通期予想は非開示(同社慣行)・QUICKコンセンサス通期売上高5372億4500万円
    https://www.nikkei.com/article/DGXZRST0597094R20C26A7000000/
  2. 株式会社ディスコ IR情報(2027年3月期 第1四半期決算短信)一次情報
    株式会社ディスコ(2026-07-23)— 使用箇所: 決算短信一次資料の所在確認。ダイシングソー・グラインダで世界シェア首位級、装置+ブレード・砥石等消耗品の収益構造という事業概要の根拠
    https://www.disco.co.jp/jp/ir/

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