「半導体とは何か」で見たように、チップは円盤状のの上に回路を作り込んで生まれます。しかし回路ができたウェハーは、そのままでは厚すぎて製品になりません。薄く削り、切り分けて、組み立てる——この「製品にする」工程がで、その入り口がバックグラインドです。
バックグラインドは、回路を作り終えたウェハーの裏面を削って薄くする工程です。約775μmのシリコンを用途に応じて100μm前後〜数十μmまで削ります。パッケージを薄くし、熱を逃がし、チップを積み重ねるために欠かせません。
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ウェハー薄化は後工程の入り口で、HBM積層・先端パッケージング需要に直結する。グラインダ・ダイシングともディスコが世界約7〜8割を握り、装置+消耗ブレードの一貫体制とTAIKO・DBGなど反り対策技術が参入障壁を形成する。
バックグラインドとは
バックグラインドとは、回路を作り終えたウェハーの裏面(回路のない側)を砥石で研削して薄くする工程です。製造中の300mmウェハーは、搬送や加工で割れないよう約775μmの厚みを持っています。しかし完成したチップにそれほどの厚みは不要で、むしろ厚いままだと不都合が生じます。
薄く削る理由は、大きく3つあります。
- パッケージを薄くする——スマートフォンやカードなど、薄さが価値になる製品にチップを収めるため。
- 熱を逃がしやすくする——シリコンが薄いほど、チップ裏面から熱が抜けやすくなる。
- チップを積み重ねる——複数のチップを縦に積む構造では、薄くしないと高さが収まらない。
製造工程の全体像は「1枚のシリコンがチップになるまで」で、後工程の装置は「後工程装置とディスコ」で詳しく扱っています。
どこまで薄く削るのか。HBMが薄化を極端にした
削り込む厚みは用途で変わります。一般的なパッケージ用途では100μm前後ですが、チップを積層する用途では数十μmまで薄くします。髪の毛の太さが約80〜100μmなので、積層用のチップは髪の毛より薄いことになります。
この薄化を極端に押し進めたのが、AI向けの(広帯域メモリ)です。HBMはのチップを縦に積み重ねて作られ、最新世代では12段積んで36GBを実現します。しかも8段品と同じ高さに収めるため、1枚1枚をさらに薄く削る必要があります。積んだチップどうしは、シリコンを縦に貫く微細な配線でつなぎ、薄いチップを精密に積み上げます(Samsung Semiconductor)。
AIの性能がメモリで決まる理由は「AIの性能を決めるのはメモリだった」で解説しています。そしてHBM需要の拡大は、そのまま薄化技術の難度と価値を引き上げています。
薄くするほど割れやすい。ディスコのTAIKOとDBG
ウェハーは薄くするほど反りやすく、割れやすくなります。そのため、紙のように薄いシリコンを傷つけずに扱うのは難しく、ここに後工程の技術的な勝負どころがあります。
代表的な対策が、ディスコが開発したTAIKO(タイコ)プロセスです。TAIKOプロセスとは、ウェハーの外周に幅約3mmのリング(縁)を残し、内側だけを薄く削る方法です。和太鼓のように「縁が厚く、中央が薄い」形にすることで、薄化後の反りや割れを抑え、ハンドリングを容易にします(DISCO CORPORATION)。
もう一つが、削る順序を入れ替える先ダイシング(DBG=Dicing Before Grinding)です。先に浅く切り込みを入れてから裏面を削ることで、薄いウェハーを切断する際の欠けや割れを減らします。バックグラインドで薄くしたウェハーは、続くで1つずつのチップに切り分けられ、組み立て工程へ進みます。
なぜ日本のディスコが世界を握るのか
ウェハーを「薄く削る」グラインダと「切り分ける」ダイシングは、どちらも日本のディスコが世界約7〜8割を握るとされます。装置だけでなく、研削砥石や切断ブレードといった消耗品まで一貫して手がけている点が強みです。
微細化が物理的に難しくなるなか、複数のチップを高密度に束ねる先端が、AI半導体の性能を左右する主戦場になっています。GPUとHBMを一体化するCoWoSのような実装が広がるほど、その入り口にあるバックグラインドとダイシングの価値も高まります。ディスコの企業分析は「“切って削って磨く”を独占する日本企業」で扱っています。後工程装置全体の市場規模は、世界の半導体製造装置(2024年 総額約1,090億ドル)の一角を占めます(SEMI)。
なお本記事は技術解説であり、投資助言ではありません。
この記事のまとめ
- バックグラインドは、回路を作り終えたウェハーの裏面を削って薄くする後工程の入り口。
- 約775μmのウェハーを、パッケージ用途で100μm前後、積層用途では髪の毛より薄い数十μmまで削る。
- 薄くする理由はパッケージ薄型化・放熱・チップ積層の3つ。最新のHBMは12段積むため極薄化が必須。
- 薄いほど反り・割れのリスクが増すため、ディスコのTAIKO(外周にリングを残す)やDBG(先ダイシング)で対策する。
- グラインダもダイシングも、装置・消耗品でディスコが世界約7〜8割を握る。
この記事のまとめ
- バックグラインドは、回路を作り終えたウェハーの裏面を削って薄くする後工程の入り口。
- 300mmウェハーの約775μmを、用途に応じ100μm前後〜数十μmまで削り込む。
- 薄くする理由はパッケージ薄型化・放熱・チップ積層の3つ。HBMは12段積むため極薄化が必須。
- 薄いほど反りや割れのリスクが上がり、ディスコのTAIKO(外周にリングを残す)やDBGで対策する。
- グラインダもダイシングも装置・消耗品でディスコが世界約7〜8割を握る。
よくある質問(FAQ)
Q.バックグラインドとは何ですか?+
バックグラインドとは、回路を作り終えたウェハーの裏面を砥石で研削して薄くする後工程の最初の工程です。製造中のウェハーは割れずに搬送できるよう300mm品で約775μmの厚みがありますが、製品にはそれほどの厚みは不要です。用途に応じて100μm前後、積層メモリ向けでは数十μmまで削り込みます。
Q.なぜウェハーを薄く削る必要があるのですか?+
パッケージを薄くする、熱を逃がしやすくする、チップを何段も積み重ねる——という3つの理由からです。とくにAI向けのHBM(広帯域メモリ)はDRAMのチップを8〜12段以上積むため、同じ高さに収めるには1枚1枚を極薄まで削る必要があります。薄くするほど放熱性も上がります。
Q.TAIKO(タイコ)プロセスとは何ですか?+
TAIKOプロセスとは、ディスコが開発したウェハー薄化技術で、ウェハーの外周に幅約3mmのリング(縁)を残し、内側だけを薄く削る方法です。和太鼓のように縁が厚く中央が薄い形にすることで、薄化したウェハーの反りや割れを抑え、扱いやすくします。
Q.バックグラインドとダイシングはどう違うのですか?+
バックグラインドはウェハーを「薄く削る」工程、ダイシングはウェハーを「1つずつのチップに切り分ける」工程です。どちらも後工程の入り口にあたり、装置・消耗品ともに日本のディスコが世界約7〜8割を握っています。近年は薄化してから切る順序を入れ替える先ダイシング(DBG)も使われます。
用語集
- バックグラインド/ back grinding
- 回路を作り終えたウェハーの裏面を砥石で削り、薄くする後工程の入り口。約775μmのウェハーを用途に応じて100μm前後〜数十μmまで削る。
- ダイシング/ dicing
- 1枚のウェハーを格子状に切り、1つずつのチップ(ダイ)に切り分ける後工程。ブレードやレーザーで切断する。
- ウェハー/ wafer
- 半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。
- 後工程(OSAT)/ back-end / OSAT
- ウェハーから切り出したチップを検査・組み立て・パッケージする工程。
- HBM/ High Bandwidth Memory
- DRAMを積み重ねて広帯域にした高性能メモリ。AI半導体とセットで使われる。
- パッケージング(先端パッケージング)/ advanced packaging
- 切り出したチップを基板に載せ、配線し、保護する工程。複数のチップを高密度につなぐ先端版もある。
参考資料・引用元
- TAIKO Process — Grinding Solutions一次情報DISCO CORPORATION(公式技術ページ)(2024)— 使用箇所: TAIKOプロセス=ディスコ開発・ウェハー外周に約3mmのリングを残し内側のみ薄研削、反り・割れ・ハンドリングリスクを低減https://www.disco.co.jp/eg/solution/library/grinder/taiko_process.html
- Leading Memory Innovation with HBM3E一次情報Samsung Semiconductor(技術ブログ)(2024)— 使用箇所: HBM3Eは24GbのDRAMダイを12段積層し36GBを実現、8段と同じ高さに収めるため各ダイを極薄化(TSV接続)https://semiconductor.samsung.com/news-events/tech-blog/leading-memory-innovation-with-hbm3e/
- DISCO 企業分析(IR数値に基づく集計)報道Senrigan Analytics(2025-09)— 使用箇所: DISCO 2025年3月期 約3,933億円・ダイシング装置の世界シェア(要一次確認)https://senrigan.tech/en/report/6146_20250906
- Global Total Semiconductor Equipment Sales Forecast to Reach Record $109 Billion in 2024業界団体SEMI(2024)— 使用箇所: 2024年 前工程装置(WFE)約1,010億ドル・総装置約1,090億ドル(過去最高)https://www.semi.org/en/semi-press-releases/global-total-semiconductor-equipment-sales-forecast-to-reach-record
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