「チップの土台も塗る薬も、ほとんど日本製だった」で見たように、半導体材料の多くは日本企業が握っています。とりわけチップを組み立てる「後工程・パッケージング」の材料で世界トップ級なのがレゾナックです。業界全体での位置づけは「半導体メーカーは、6つの役割で見ると一気にわかる」も合わせて読むと理解が深まります。
レゾナックは、半導体を組み立てる工程で使う材料を幅広く作る素材メーカーです。チップを研磨する薬剤や、チップを樹脂で封じる封止材などで世界トップ級。昭和電工と日立化成という2つの会社が2023年に一つになって生まれた、売上1.4兆円規模の大企業です。
構造で言うと(投資家向け)も見る
2024年12月期は連結売上高1兆3,893億円・営業利益787億円。利益の柱は半導体・電子材料セグメント(営業利益629億円)で、後工程材料の総合力が参入障壁。CMPスラリー・封止材・CCL・感光性材料をフルラインで握り、JOINT2など共創の場を主導する。一方、汎用化学(ケミカル)の市況変動と事業再編の途上というリスクを抱える。
レゾナックとはどんな会社か
レゾナックとは、半導体材料と化学品を幅広く手がける日本の素材大手です。2023年1月1日に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合して誕生しました。社名は「RESONATE(共鳴する)」と「CHEMISTRY(化学)」の頭文字Cを組み合わせた造語です。
成り立ちは少し複雑です。昭和電工は2020年に約9,600億円で日立化成を買収し、社名を昭和電工マテリアルズへ変更しました。その後2023年に両社が統合し、持株会社のレゾナック・ホールディングスと事業会社のレゾナックが発足しました。
化学に強い昭和電工と、半導体・電子材料に強い旧日立化成。この2社が合わさったことで、汎用化学から最先端の半導体材料までを一社で抱える素材コングロマリットが生まれました(レゾナック)。
レゾナックの売上はどの事業で構成されているか
レゾナックの事業は、大きく4つのセグメントで構成されています。汎用化学品などの「ケミカル」、半導体材料を含む「半導体・電子材料」、自動車向け材料の「モビリティ」、機能性化学品などの「イノベーション材料」です。
2024年12月期(FY2024)の連結売上高は1兆3,893億円、営業利益は787億円でした。セグメント別売上高は次の通りです。
| セグメント | 主な製品 | 売上高(2024年12月期) | 構成比 |
|---|---|---|---|
| ケミカル | 石化製品・産業ガス・黒鉛電極 | 約5,174億円 | 約37.3% |
| 半導体・電子材料 | CMPスラリー・封止材・銅張積層板(CCL)・感光性材料 | 約4,451億円 | 約32.0% |
| モビリティ | アルミ部材・リチウムイオン電池材料 | 約2,137億円 | 約15.4% |
| イノベーション材料 | 機能性化学品・電子部品材料 | 約972億円 | 約7.0% |
(出典:レゾナック・ホールディングス)
売上規模ではケミカルが最大ですが、利益の柱は半導体・電子材料です。2024年12月期は半導体市況の回復で同セグメントの売上が前期比約31%増え、営業利益は629億円(前期は赤字)へ急回復しました。全社営業利益787億円の大半を半導体・電子材料が稼いだ計算で、この事業がレゾナックの収益エンジンであることがはっきり示されました(レゾナック・ホールディングス)。
レゾナックの技術的な強みはどこにあるか
レゾナックの技術的な強みは、半導体の(チップを切り出してパッケージに組み立てる工程)の材料を、ほぼフルラインで握る総合力にあります。レゾナック自身も「半導体後工程材料グローバルNo.1」を掲げています(レゾナック)。
具体的には、次のような材料群を幅広く供給します。CMPスラリー(回路表面を平らに磨くための研磨剤の液)ではセリア系で世界上位、封止材(チップを湿気や衝撃から守るために樹脂で覆う材料)ではエポキシ封止材で世界トップクラスのシェアを持ちます。
さらに、銅張積層板(CCL=配線を形成する基板の素材で、絶縁体に銅箔を貼り合わせたもの)や、感光性フィルム(光で回路パターンを形づくる薄膜)も主力です(レゾナック)。
この「幅広さ」が単品メーカーにない優位性になります。先端のでは複数の材料を組み合わせて使うため、相性の作り込みが性能と(良品の割合)を左右します。封止材だけ、研磨剤だけを売る会社では、この組み合わせ最適化を一社で完結できません。
だからこそ、AI向けの「先端パッケージ」で(大きなチップを小片に分けて並べ直す方式)や(TSMCの代表的な先端パッケージ技術)が広がるほど、フルラインで材料を提供できる強みが効いてきます。
サプライチェーンの中でレゾナックはどんな役割か
レゾナックはサプライチェーンの中で、先端パッケージ材料の供給者であると同時に、後工程エコシステムの「まとめ役」という役割を担います。材料の主な納入先は、チップの組み立てを請け負う(後工程の受託専門企業)や、ファウンドリ、IDM(自社で設計から製造まで行う半導体メーカー)です。
特徴的なのが、コンソーシアム(共同開発の枠組み)を主導している点です。レゾナックは神奈川県川崎市の拠点を中心に、装置・材料・基板メーカー13社が参加する「JOINT2」を運営し、次世代パッケージの一貫評価ラインを束ねています。一社では揃えられない最先端の装置と材料を持ち寄り、顧客が試作・評価できる場を提供する取り組みです(レゾナック)。
2024年7月には、この枠組みを米国へ広げ、シリコンバレーに日米企業10社による「US-JOINT」を設立しました。後工程の主戦場が米国にも広がるなか、顧客の近くで評価できる体制を整える狙いです。材料を売るだけでなく、業界全体の開発の場を主導することで、レゾナックは標準づくりの中心に立とうとしています(レゾナック)。
レゾナックの市場ポジションと競争構造はどうなっているか
レゾナックは後工程材料の複数分野で世界トップ級に立ちます。エポキシ封止材で世界首位クラス、CMPスラリーで世界上位という二枚看板を軸に、フルラインの総合力で差別化しています。
この市場の競争構造を、「誰と、どんな力関係で戦っているか」という5つの視点で整理すると次のようになります。
| 力 | 主体 | 強さ | 理由 |
|---|---|---|---|
| 競合 | 信越化学・住友ベークライト・富士フイルム・CMC(旧Cabot)等の素材各社 | 中〜高 | 材料ごとに有力企業が多数。単品では競合が多いが、フルライン提供で差別化 |
| 買い手の交渉力 | OSAT・ファウンドリ・IDM | 中〜高 | 大口で価格圧力はあるが、認定済みの代替材料が少なく乗り換えが難しい |
| 供給者の交渉力 | 樹脂原料・希少金属・銅箔 | 中 | 原料市況に左右されるが調達先は分散 |
| 新規参入 | — | 低 | 顧客との認定と擦り合わせに長期を要する高い壁 |
| 代替品 | 個別材料の代替技術 | 低〜中 | 単一材料の置き換えはあっても、フルラインの組み合わせ最適化は代替しにくい |
最大の参入障壁は、顧客との認定と擦り合わせです。半導体材料はチップの性能と歩留まりに直結するため、採用前に長期間の評価を経て品質を作り込みます。そのため、いったん量産ラインに組み込まれると、簡単には他社へ乗り換えられません。価格だけで決まる市場ではなく、品質と総合提案力で競う構造のため、上位企業の地位が崩れにくくなっています。
レゾナックが抱える弱み・リスクは何か
最大のリスクは、汎用化学(ケミカル)の市況変動です。売上最大のケミカルセグメントは石油化学製品や黒鉛電極などを含み、原油価格や中国経済、需給バランスで採算が大きく振れます。実際にケミカルの営業利益は半導体・電子材料に比べて薄く、安定収益源としての色合いが強い反面、成長の牽引役にはなりにくい構造です。
もう一つのリスクが、事業ポートフォリオ再編の途上にあることです。レゾナックは半導体材料への集中を進める方針で、汎用化学などのノンコア事業の整理・分離を検討しています。再編が完了するまでは、収益構造が安定しにくく、一時的な費用も発生しえます。
加えて、半導体・電子材料の収益は半導体市況の波と無縁ではありません。向けのAI需要が追い風になる一方、半導体投資が一巡すれば材料需要も鈍ります。利益が半導体・電子材料に依存する構造は、強みであると同時に変動要因でもあります。
レゾナックの最近の動向はどうか
最近のレゾナックは、半導体材料への「選択と集中」を鮮明にしています。成長期待の大きい後工程・先端パッケージ材料に経営資源を寄せ、汎用化学事業の再編を進める方針を打ち出しています。
事業面では、研磨材料(CMPスラリー)の能力増強や、先端パッケージ向け材料の開発投資を継続しています。また、前述のJOINT2やUS-JOINTといった共創の場を国内外で広げ、顧客と一緒に次世代パッケージを評価する体制を強化してきました。AIチップの大型化・複雑化で後工程材料の重要性が増すなか、レゾナックはその中心に立とうとしています。
派手な完成品を作る会社ではありませんが、AI時代のチップが増えるほど「組み立てる材料」を幅広く握るレゾナックの存在感は静かに高まっています。
この記事のまとめ
- レゾナックは昭和電工と日立化成(旧)の統合で2023年に誕生した素材大手で、半導体後工程材料で世界トップ級である。
- 2024年12月期の連結売上高は1兆3,893億円で、ケミカル約37%・半導体・電子材料約32%・モビリティ約15%・イノベーション材料約7%の構成。
- 強みはCMPスラリー・封止材・銅張積層板(CCL)・感光性材料など先端パッケージ材料をフルラインで握る総合力にある。
- JOINT2やUS-JOINTといったコンソーシアムを主導し、後工程の一貫評価ラインを束ねる「まとめ役」を担う。
- リスクは汎用化学(ケミカル)の市況変動と、事業ポートフォリオ再編の途上にあることである。
この記事のまとめ
- レゾナックは昭和電工と日立化成(旧)の統合で2023年に誕生した素材大手で、半導体後工程材料で世界トップ級。
- 2024年12月期の連結売上高は1兆3,893億円で、ケミカル約37%・半導体・電子材料約32%・モビリティ約15%・イノベーション材料約7%の構成。
- 強みはCMPスラリー・封止材・銅張積層板(CCL)・感光性フィルムなど先端パッケージ材料をフルラインで握る総合力。
- JOINT2や米US-JOINTといったコンソーシアムを主導し、後工程の一貫評価ラインを束ねる役割を担う。
- リスクは汎用化学(ケミカル)の市況変動と、事業ポートフォリオ再編の途上にあること。
よくある質問(FAQ)
Q.レゾナックとはどんな会社ですか?+
レゾナックは、半導体材料と化学品を幅広く手がける日本の素材大手です。2023年1月に昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が統合して誕生しました。半導体の組み立て工程(後工程)で使う材料で世界トップ級のポジションを持ち、2024年12月期の連結売上高は1兆3,893億円でした。
Q.レゾナックの強みはどこにありますか?+
最大の強みは、半導体後工程材料を幅広く握る総合力です。研磨に使うCMPスラリー、チップを封じる封止材、配線基板の素材である銅張積層板(CCL)、感光性フィルムなど、先端パッケージに必要な材料をほぼフルラインで供給します。複数材料を組み合わせて評価できる点が、単品メーカーにない優位性です。
Q.レゾナックの半導体材料はどんな製品で世界一なのですか?+
半導体を樹脂で封じるエポキシ封止材で世界トップクラスのシェアを持つほか、回路表面を平らに磨くCMPスラリー(特にセリアスラリー)でも世界上位です。フリップチップ用の液状封止材でも高いシェアがあります。レゾナックはこれらを束ねて「半導体後工程材料グローバルNo.1」を掲げています。
用語集
- 後工程(OSAT)/ back-end / OSAT
- ウェハーから切り出したチップを検査・組み立て・パッケージする工程。
- パッケージング(先端パッケージング)/ advanced packaging
- 切り出したチップを基板に載せ、配線し、保護する工程。複数のチップを高密度につなぐ先端版もある。
- CoWoS(コーワス)/ Chip on Wafer on Substrate
- GPUと記憶用のHBMなど複数のチップを、1枚の土台(インターポーザ)の上に並べて1つのパッケージにまとめるTSMCの先端パッケージング技術。
- 歩留まり/ yield ヨミ:ぶどまり
- 1枚のウェハーから取れるチップのうち、欠陥のない良品の割合。
- チップレット/ chiplet
- 1つの大きなチップを、小さな複数のチップに分けて1パッケージに集める設計手法。歩留まりとコストを改善できる。
- データセンター/ data center
- 大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。
- OSAT/ Outsourced Semiconductor Assembly and Test
- チップの組み立て(パッケージング)と検査を専門に請け負う会社。後工程の外部委託先。
参考資料・引用元
- 2024年 通期(1〜12月)決算概要一次情報レゾナック・ホールディングス(2025-02)— 使用箇所: 2024年12月期 連結売上1兆3,893億円・営業利益787億円・半導体電子材料の営業利益629億円https://www.resonac.com/jp/jp/ir/financial/overview/overview2024-4qj.html
- 2024年12月期 決算説明資料一次情報レゾナック・ホールディングス(2025-02)— 使用箇所: セグメント別売上構成(ケミカル/半導体・電子材料/モビリティ/イノベーション材料)https://www.resonac.com/jp/ir
- 半導体後工程材料グローバルNo.1一次情報レゾナック(2024)— 使用箇所: 後工程材料の総合力・グローバルNo.1の位置づけhttps://www.resonac.com/jp/corporate/pioneering-semiconductors.html
- 半導体材料(封止材)製品情報一次情報レゾナック(2024)— 使用箇所: エポキシ封止材・液状封止材の世界トップクラスシェア、CMPスラリーhttps://www.resonac.com/jp/products/semi-backend-process/76
- 次世代半導体パッケージ実装技術開発コンソーシアム「JOINT2」を設立一次情報レゾナック(2021-10)— 使用箇所: JOINT2コンソーシアム(13社)と一貫評価ラインの主導https://www.resonac.com/jp/news/2021/10/29/2089.html
- シリコンバレーで日米10社による次世代半導体パッケージのコンソーシアム設立一次情報レゾナック(2024-07)— 使用箇所: 米US-JOINT設立(2024年7月)と後工程開発の米国展開https://www.resonac.com/jp/news/2024/07/08/3118.html
- 2023年1月1日、昭和電工はレゾナックに生まれ変わりました一次情報レゾナック(2023-01)— 使用箇所: 沿革:日立化成買収(2020,約9,600億円)・2023年統合・社名由来https://www.resonac.com/jp/corporate/name-change.html
この記事をシェア
次に読む
コメント
GitHub アカウントでログインしてコメントできます。