データセンターと聞くと、サーバーがびっしり並んだ部屋を思い浮かべるかもしれません。ですが、実際に建物の多くを占めているのは「冷やすための設備」です。そしてAIの普及で発熱が爆発的に増えたいま、データセンターは熱との戦いの場になっています。電力の事情は「AIデータセンターと電力危機」で扱っています。
この記事で動かせる図解
- 01データセンターの熱の旅(3Dモデル)ラック→CDU→チラー→冷却塔→大気まで、熱の通り道を段階ごとに追える
- 02空冷 vs 液冷(3Dモデル)サーバー1台をファンで冷やす空冷と、冷却液を直接当てる液冷の違いを切り替えて確認
データセンターの中には、サーバーの棚(ラック)と、それを冷やす設備があります。サーバーが出した熱は、水に移されて屋上の冷却塔まで運ばれ、湯気になって空へ逃げていきます。熱の通り道をたどると、データセンターの仕組みが見えてきます。
構造で言うと(投資家向け)も見る
DCの非IT電力の最大費目は冷却で、従来型では総エネルギーの最大4割程度。AI高密度ラック(GB200 NVL72で約120kW)が空冷→液冷シフトを強制し、CDU・チラー・冷却塔のCAPEXと、PUE/WUE(電力効率と水効率)の最適化が運用の論点になります。
データセンターの中には何があるのか
データセンターの中身は、大きく3つに分かれます。「サーバーを積んだラック(棚)」「冷やすための冷却設備」「止めないための電源(非常用発電機やバッテリー)」です。
このうち冷却は、最大級の設備です。従来型のデータセンターでは、使う電力の最大4割程度が冷却に消えるとされます。つまり、建物のかなりの部分が「熱を逃がすため」に存在しているのです。なぜそこまで冷やすのかというと、チップは熱に弱く、冷やせなければ性能を落とすか壊れてしまうからです(mlq.ai / Boyd)。
サーバーラックとは何か
とは、サーバーを縦に積み重ねて収める棚のことです。幅は19インチ(約48cm)に統一され、高さは「U(ユー)」という単位で数えます。1Uは約4.4cmで、42U(約1.9mの高さ)のラックが最も一般的です。
ラック1本が使う電力(発熱量)は、近年で大きく変わりました。従来は1ラック5〜10kW程度でしたが、AI向けのラック(NVIDIAのGB200 NVL72=GPUを72基まとめた最新システム)は約120kW級に達します。発熱が10倍以上に増えたわけで、これが冷却の常識をひっくり返しました。
ラックは、前面から冷たい空気を吸い、背面から熱い空気を出します。そこで、ラックを「前面どうし・背面どうし」で向かい合わせて並べ、冷たい通路(コールドアイル)と熱い通路(ホットアイル)に分けます。冷気と熱気を混ぜないこの並べ方が、効率よく冷やす基本です(TRG Datacenters / EIA-310)。
奪った熱は最後どこへ行くのか
ここがこの記事の核心です。チップが出した熱は、長い旅をして最後に大気へ捨てられます。その通り道を、3Dモデルで段階ごとに追ってみましょう。
順番に説明します。まず①ラックで発生した熱を、②冷却液や冷気が受け取り、CDU(冷却液分配ユニット=サーバー側の液と建物側の水を仲介する装置)やCRAH(冷水で空気を冷やす空調機)を通って「冷水のループ」に移します。
温まった冷水は、③チラー(冷凍機=冷水を冷やし直す装置)で再び冷やされ、サーバー側へ戻ります。
チラーが奪った熱は、④もう一本の水のループ(冷却水ループ)で屋上のへ運ばれます。そして⑤冷却塔が水の一部を蒸発させて熱を奪い、湯気として大気へ逃がします。チップの熱は、こうして「水→水→空気」とバトンを渡しながら、最後に空へ抜けていくのです(Dgtl Infra)。
サーバーそのものはどう冷やすのか(空冷と液冷)
熱の旅の出発点、つまりサーバー1台をどう冷やすかには、2つの方式があります。ファンで空気を送る「空冷」と、冷却液をチップに直接当てる「液冷」です。
空気は熱を運ぶ力が弱いため、発熱の大きいAIチップは空冷では冷やしきれません。そこで、水や専用の液体を使うが主役になりつつあります。液冷では、がサーバー側の冷却液と建物側の冷水を熱交換器(熱だけを受け渡す仕切り)で分け、安全に熱を移します。液冷の詳しい仕組みは「AIサーバーは、もう空気では冷やせなくなった」で解説しています(Vertiv)。
なぜ冷却塔は水を使うのか
冷却塔が水を使うのは、「水が蒸発するときに周りの熱を奪う」性質を利用しているからです。打ち水で涼しくなるのと同じ原理で、効率よく熱を捨てられます。その代わり、蒸発した分の水を補充し続ける必要があります。実際、1MW(メガワット)級のデータセンターで、年間およそ2,560万リットルもの水を使うとされます。
水を使いたくない場合は、ドライクーラー(水を使わず空気だけで冷やす方式)も選べますが、その分だけ電力を多く使います。つまり水と電力はトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たない関係)です。
さらに、外の空気が冷たい季節は、チラーを止めて外気で直接冷やす「フリークーリング(外気冷房)」で電力を節約します。どちらを優先するかは、立地の水事情や電力事情で決まります。立地条件は「データセンターはどこに建てられるか」を参照してください(Uptime Institute)。
冷却の効率はどう測るのか
データセンターの効率は、PUE(ピーユーイー)という指標で測ります。PUEとは、施設全体の消費電力を、IT機器(サーバー)が使う電力で割った値です。1.0に近いほど無駄が少なく、たとえばPUEが1.5なら、サーバーに1の電力を届けるのに、冷却や配電で0.5の電力を余計に使っている、という意味になります。
業界平均のPUEは約1.56で、ここ数年ほぼ横ばいです。一方、GoogleやMicrosoftなどの(超大規模な事業者)は、フリート(保有施設)平均で1.09前後と桁違いに効率的です。だからこそ、冷却をいかに賢く行うかが、そのままデータセンターの電力効率を左右します。電力が逼迫する時代に、冷却の最適化は経営課題そのものです(Uptime Institute)。
この記事のまとめ
- データセンターの中身は、サーバーラック・冷却設備・電源で構成され、冷却は最大級の設備(従来型で総エネルギーの最大4割程度)。
- ラックは19インチ・42Uが標準。AI向けは約120kW級まで高密度化し、冷却の前提を変えた。
- サーバーの冷やし方は、ファンの空冷と、冷却液を直接当てる液冷。高発熱のAIは液冷へ移行している。
- 熱の旅はチップ→CDU/CRAH→冷水→チラー→冷却水→冷却塔→大気。最後は湯気として空へ捨てられる。
- 冷却塔は水を蒸発させて排熱するため水を消費。水と電力はトレードオフで、効率はPUE(業界平均約1.56)で測る。
なお本記事は投資助言ではありません。
この記事のまとめ
- データセンターの中身は、サーバーラック・冷却設備・電源で構成され、冷却は最大級の設備(従来型で総エネルギーの最大4割程度)。
- ラックは19インチ・42Uが標準。AI向けは約120kW級まで高密度化し、冷却の前提を変えた。
- サーバーの冷やし方は、ファンの空冷と、冷却液を直接当てる液冷。高発熱のAIは液冷へ移行している。
- 熱の旅はチップ→CDU/CRAH→冷水→チラー→冷却水→冷却塔→大気。最後は湯気として空へ捨てられる。
- 冷却塔は水を蒸発させて排熱するため水を消費。水と電力はトレードオフで、効率はPUE(業界平均約1.56)で測る。
よくある質問(FAQ)
Q.データセンターの中には何がありますか?+
データセンターの中身は、大きく「サーバーを積んだラック」「冷やすための冷却設備」「止めないための電源・非常用電源」に分かれます。なかでも冷却は最大級の設備で、従来型では総エネルギーの最大4割程度を占めるとされます。建物の多くが、実は熱と戦うための空間です。
Q.サーバーラックとは何ですか?+
サーバーラックとは、サーバーを縦に積み重ねて収める棚です。幅は19インチ、高さの単位は「U」(1U=約4.4cm)で、42Uサイズが一般的です。従来は1ラック5〜10kWでしたが、AI向け(GB200 NVL72など)は約120kW級に達し、冷却の前提が大きく変わりました。
Q.サーバーが出した熱は最後どこへ行くのですか?+
チップの熱は、冷却液や冷気が受け取り、CDU(冷却液分配ユニット)やCRAH(冷水で空気を冷やす空調機)を通って冷水のループに移ります。冷水はチラーで冷やし直され、奪った熱は別の水のループで屋上の冷却塔へ運ばれます。冷却塔は水の一部を蒸発させ、熱を湯気として大気へ逃がします。これが熱の終着点です。
Q.なぜ冷却塔は水を使うのですか?+
冷却塔は水を蒸発させることで効率よく熱を奪うため、運転に水を消費します。水を使わないドライクーラー(空冷式)もありますが、その分だけ電力を多く使います。つまり水と電力はトレードオフの関係にあり、立地の水事情や電力事情で方式が選ばれます。
用語集
- データセンター/ data center
- 大量のサーバーをまとめて置き、24時間動かし続ける施設。クラウドやAIの計算はここで行われる。
- ラック/ server rack
- サーバーを縦に積み重ねて収める棚。高さの単位は「U」(1U=約4.4cm)で、42Uサイズが一般的。
- 液冷(液体冷却)/ liquid cooling
- 空気の代わりに冷却液でチップを冷やす方式。発熱の大きいAIチップを冷やすために急速に普及している。
- CDU(冷却液分配ユニット)/ Coolant Distribution Unit
- 液冷で、サーバー側の冷却液と建物側の冷水を、熱交換器で分けてつなぐ装置。ポンプで流量や温度を制御する。
- 冷却塔(クーリングタワー)/ cooling tower
- データセンターの熱を最後に外へ捨てる設備。水を一部蒸発させて熱を奪い、湯気として大気へ逃がす。
- PUE/ Power Usage Effectiveness
- データセンターの電力効率を表す指標。施設全体の消費電力をサーバーの消費電力で割った値で、1.0に近いほど無駄が少ない。
- ハイパースケール/ hyperscale
- クラウド大手(Google・Amazon・Microsoftなど)が運営する超大規模なデータセンター。
参考資料・引用元
- Explaining Server Rack Dimensions業界団体TRG Datacenters / EIA-310(2024)— 使用箇所: ラックの標準寸法。1U=1.75インチ(44.45mm)、搭載幅19インチ、42Uが最も一般的(搬送・設置の上限として定着)https://www.trgdatacenters.com/resource/explaining-server-rack-dimensions/
- NVIDIA GB200 NVL72一次情報NVIDIA(2024)— 使用箇所: AIラックの代表例。1ラックに72基のBlackwell GPU+36基のGrace CPU、第5世代NVLink 130TB/s、液冷設計。消費電力は公称約120kW(実装仕様では液冷115+空冷17=約132kW)https://www.nvidia.com/en-us/data-center/gb200-nvl72/
- CRAC / CRAH unit definitions & raised-floor air distribution業界団体TechTarget(2025-06-10)— 使用箇所: CRAC=冷媒+コンプレッサで空気を冷やす、CRAH=冷水コイルに空気を通し熱を水へ移す(コンプレッサ不要で高効率)。二重床→有孔タイルでコールドアイルを形成。ホットアイル/コールドアイルの封じ込めhttps://www.techtarget.com/searchdatacenter/definition/computer-room-air-conditioning-unit
- Understanding Coolant Distribution Units (CDUs) for Liquid Cooling業界団体Vertiv(2023-08-02)— 使用箇所: CDUは建物側の施設水系統(FWS)とIT側の技術冷却系統(TCS)を熱交換器で分離し、ポンプ・弁で流量/温度/圧力を制御。ダイレクト・トゥ・チップ液冷の要https://www.vertiv.com/en-us/about/news-and-insights/articles/educational-articles/understanding-coolant-distribution-units-cdus-for-liquid-cooling/
- Data Center Cooling — chilled water & condenser water loops報道Dgtl Infra(2023)— 使用箇所: 熱排出の全経路。冷水ループ(サーバ熱を吸収)と冷却水ループ(環境へ排熱)の2系統+チラー+冷却塔。チップ→CDU/CRAH→冷水→チラー→冷却水→冷却塔→大気https://dgtlinfra.com/data-center-cooling/
- Don't ignore water consumption調査会社Uptime Institute(2016-06-17)— 使用箇所: 冷却塔は蒸発で水を消費。1MW級DCで年間約2,560万L。水冷+冷却塔はPUE約1.6(省電力だが水大)、空冷式はPUE約1.8(水ゼロだが電力大)という水と電力のトレードオフhttps://journal.uptimeinstitute.com/dont-ignore-water-consumption/
- 2024 Global Data Center Survey(PUE平均)調査会社Uptime Institute(2024)— 使用箇所: 業界平均PUE 約1.56(横ばい)。ハイパースケールはGoogleフリート平均約1.09・Meta約1.08と桁違いに効率的https://uptimeinstitute.com/resources/research-and-reports/uptime-institute-global-data-center-survey-results-2024
- Energy consumption in data centers: air vs liquid cooling報道mlq.ai / Boyd(2024)— 使用箇所: 従来型施設では冷却が総エネルギーの最大4割程度を占める(施設タイプで変動)。冷却は最大の非IT電力消費。AI高密度化で空冷→液冷シフトが加速https://www.boydcorp.com/thermal/energy-consumption-in-data-centers-air-versus-liquid-cooling.html
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