先端パッケージの分類は、たった2つの軸で整理できます。「チップを横に並べて土台でつなぐ(2.5D)」か、「チップを縦に積んで直結する(3D)」か——CoWoSもSoICもEMIBもファンアウトも、すべてこの地図のどこかに収まります。本記事は、用語に飲み込まれないための分類体系をまとめます。

AI半導体の解説には、CoWoS・SoIC・EMIB・InFO・インターポーザ・RDL・TSV・ハイブリッドボンディングといった用語が一気に並びます。一見バラバラに見えますが、これらは「並べ方(2.5D/3D)」と「土台の作り方」という共通の物差しで分類できます。(チップの組み立てを専門に請け負う会社)や先端パッケージ全体の概観は「こちらの記事」で扱っており、本記事ではその分類と用語そのものを深掘りします。

ひとことで言うと(初心者向け)

チップの組み立て方は大きく2種類です。1つは複数のチップを横に並べて、下の土台(インターポーザ)で配線をつなぐ『2.5D』。もう1つはチップを縦に積み重ねて、上下を直接つなぐ『3D』です。CoWoSは横並び、SoICは縦積み——名前は違っても、この2つのどちらかに必ず当てはまります。

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構造で言うと(投資家向け)

先端パッケージの差別化軸は『2.5D/3D』と『土台の種類』。シリコンインターポーザは高性能・高コスト、RDL/ファンアウトは低コスト、ハイブリッドボンディングは最微細で3D高密度の主役。CoWoS-S/R/L、SoIC、EMIB、Foverosの位置づけを地図化すると、各社の技術投資の方向性が読めます。

2.5D・3Dパッケージとは何か

2.5Dパッケージとは、複数のチップを横に並べ、その下に敷いた「土台(インターポーザ)」の微細配線でチップ同士をつなぐ実装方式です。3Dパッケージとは、チップを縦に積み重ね、上下の層を貫通配線などで直接つなぐ実装方式です。横に並べるか、縦に積むか——これが両者を分ける最も基本的な軸です。

なぜ「2.5D」という中途半端な呼び名なのか。普通のは、チップを基板の上に1つ載せるだけの「2D」です。一方、チップを縦に積む真の立体構造が「3D」です。2.5Dは、チップ自体は横並び(2D的)でも、その下に微細配線の層を1枚はさむことで、2Dと3Dの中間的な密度を実現するため「2.5D」と呼ばれます。

3Dのほうが配線距離が短くなり、接続密度も高くなります。半導体研究メディアSemiEngineeringの整理でも、2.5Dは横並びのチップをインターポーザでつなぐ構成です。3Dはチップを縦積みしてTSV(貫通配線)やハイブリッドボンディングで直結する構成として区別されています(Semiconductor Engineering)。

インターポーザ・RDL・ファンアウトはどう違うのか

2.5Dの「土台」をどう作るかには、大きく3つの系統があります。シリコンインターポーザ、RDLインターポーザ、そしてファンアウトです。違いは「材料」と「配線の細さ」、そして「コスト」にあります。

シリコンインターポーザとは、シリコン(と同じ素材)でできた土台に極めて微細な配線を作り込み、TSVで下の基板まで電気を通す方式です。TSV(Through-Silicon Via=貫通配線)とは、シリコンを垂直に貫いて銅などを詰めた電気の通り道のことです。最も微細な配線が引ける反面、シリコンを土台に使うため高価で、サイズにも制約があります。

RDL(Redistribution Layer=再配線層)とは、樹脂とメッキ(銅)で作る配線層のことです。シリコンほど微細ではありませんが、ずっと安価です。シリコンインターポーザの代わりにRDLを土台にしたものを「RDLインターポーザ」と呼びます。

ファンアウト(FOWLP=Fan-Out Wafer-Level Packaging、TSMCの商品名はInFO)とは、インターポーザという別部品を用意しない方式です。チップの周囲に直接RDLを広げて端子を「外側へ展開(fan-out)」します。高価なシリコンインターポーザが見合わない用途で、低コストに高密度を実現する手段として使われます。整理すると、シリコンインターポーザ=最微細・高価、RDL=中間、ファンアウト=土台レスで低コスト、という関係になります。

そして縦方向の接続では、従来のマイクロバンプ(チップ間をつなぐ微小なはんだの粒)が、ハイブリッドボンディングへ置き換わりつつあります。ハイブリッドボンディングとは、はんだバンプを使わず銅と銅を直接接合する技術です。

TSMCのSoICはバンプ接合の数十〜百µm級ピッチに対し、0.9µm級の極微細ピッチまでスケーリングする計画を示しています。バンプを廃するほど、接続は細く・密に・短くできます。詳しくは「ハイブリッドボンディングとSoIC」で扱っています(TSMC / IEEE Hot Chips)。

CoWoSやSoICはどこに当たるのか

ここまでの地図に、実際の製品名を置いてみます。(Chip on Wafer on Substrate、TSMC)とEMIB(Intel)は、いずれも横並びの2.5Dです。SoIC(TSMC)とFoveros(Intel)は、縦に積む3Dです。名前の派手さに惑わされず、まず「横か縦か」で仕分けるのが分類のコツです。

CoWoSは、土台の違いでさらに3種類に分かれます。CoWoS-Sはシリコンインターポーザを使う最微細タイプ、CoWoS-RはRDLインターポーザを使う低コストタイプです。CoWoS-LはLSI(Local Silicon Interconnect=局所的なシリコンの橋)とRDLを組み合わせたタイプです。

EMIBは、シリコンの橋を基板に埋め込んで必要な場所だけ微細配線でつなぐ点で、CoWoS-Lの発想に近い2.5Dです。AI向けGPUとHBMの実装は、この「CoWoSによる先端実装」が中心になっています。

一方SoIC(System on Integrated Chips)は、TSMCが「フロントエンド3D」と位置づける縦積み技術で、ハイブリッドボンディングでチップ同士を直接接合します。CoWoSが完成したチップを横に並べる「の組み立て」なのに対し、SoICは前工程に近い工程でウェハー/チップを銅接合する点が決定的に異なります。実際の最先端品では、SoICで縦に積んだ塊をさらにCoWoSで横に並べる、という3Dと2.5Dの組み合わせも使われます。チップを小さく分けて組み合わせる「チップレット」設計と、これらの実装技術は一体で進化しています(Semiconductor Engineering)。

なぜAIチップに必須なのか

AIチップで2.5D/3Dが事実上の必須技術になっているのは、GPUと(広帯域メモリ)を「できる限り短い配線」でつなぐ必要があるからです。AIチップは計算のたびに膨大なデータをメモリとの間で往復させるため、データを運ぶ帯域がボトルネックになります。配線が長いほど遅延と消費電力が増えるため、両者を物理的に近づけ、太く短くつなぐことが性能に直結します。

普通の基板に1つずつチップを載せる2D実装では、GPUとメモリの距離が遠く、必要な帯域を確保できません。そこで横並びでも極短配線にできる2.5D(インターポーザ)や、縦に積んで距離をほぼゼロにする3D(ハイブリッドボンディング)が選ばれます。さらに、GPUが大型化して1枚のチップ製造限界(レチクル)を超える局面でも、複数チップを並べて1つに見せる2.5D/3Dが解になります。AI半導体の品薄が、GPU本体よりむしろこのパッケージ能力で決まってきたのは、ここに理由があります。

今後

分類軸そのものは「2.5D/3D」「土台の種類」で当面安定しますが、その内側では微細化が続きます。縦接続はマイクロバンプからハイブリッドボンディングへ移り、ピッチはサブミクロン級へ向かいます。横方向では、シリコンインターポーザのサイズ制約や反りを避けるため、「ガラス基板」を土台に使う動きも始まっています。

重要なのは、新しい商品名が次々に登場しても、本記事の地図——横か縦か、土台は何か、接続はバンプかハイブリッドボンディングか——に当てはめれば、その正体はほぼ把握できる点です。用語の洪水に飲まれず、まず分類軸に戻ることが、先端パッケージを読み解く近道になります。

この記事のまとめ

  • 先端パッケージの分類は「2.5D(横並びを土台でつなぐ)」と「3D(縦に積んで直結する)」の2軸で整理できる。
  • 2.5Dの土台はシリコンインターポーザ(最微細・高価)、RDLインターポーザ(中間)、ファンアウト(土台レスで低コスト)の3系統に分かれる。
  • 縦の接続はTSV(貫通配線)が基本で、最先端ではマイクロバンプを廃したハイブリッドボンディングが0.9µm級ピッチへ向かう。
  • CoWoS・EMIBは2.5D、SoIC・Foverosは3D。CoWoSはS(シリコン)/R(RDL)/L(橋+RDL)で土台が異なる。
  • AIではGPUとHBMを極短配線でつなぐ必要があり、2.5D/3Dと微細な接続が事実上の必須技術になっている。

この記事のまとめ

  • 先端パッケージの分類は「2.5D(横並びを土台でつなぐ)」と「3D(縦に積む)」の2軸で整理できる。
  • 土台の選択肢はシリコンインターポーザ(最微細・高価)、RDLインターポーザ(安価)、ファンアウト(土台なしで周囲に再配線)の3系統。
  • 縦の接続はTSV(貫通配線)が基本で、最先端ではマイクロバンプを廃したハイブリッドボンディングが0.9µm級ピッチを実現する。
  • CoWoS・EMIBは2.5D、SoIC・Foverosは3D。CoWoSはS(シリコン)/R(RDL)/L(橋+RDL)で土台が異なる。
  • AIチップでは巨大なGPUとHBMを極短配線でつなぐ必要があり、2.5D/3Dと微細な接続が事実上の必須技術になっている。
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よくある質問(FAQ)

Q.2.5Dパッケージと3Dパッケージの違いは何ですか?+

2.5Dは複数のチップを横に並べ、その下のインターポーザ(微細配線つきの土台)でつなぐ方式です。3Dはチップを縦に積み重ね、TSV(貫通配線)やハイブリッドボンディングで上下を直結する方式です。横に並べるか縦に積むかが両者を分ける基本軸で、3Dのほうが配線が短くなり密度も高くなります。

Q.シリコンインターポーザとRDL・ファンアウトはどう違うのですか?+

シリコンインターポーザはシリコン製の土台に微細配線を作り込み、TSVで基板へ電気を通す方式で、最も微細ですが高価です。RDL(再配線層)は樹脂とメッキで作る配線層で、より安価です。ファンアウト(FOWLP/InFO)はインターポーザを使わず、チップ周囲に直接RDLを広げて端子を「外側へ展開」する方式です。

Q.CoWoSやSoIC、EMIBは分類のどこに当たりますか?+

CoWoS(TSMC)とEMIB(Intel)は横並びの2.5Dです。CoWoS-Sはシリコンインターポーザ、CoWoS-RはRDLインターポーザ、EMIBは基板に埋めたシリコンの橋を使います。SoIC(TSMC)は縦に積む3Dで、バンプを使わず銅同士を直接つなぐハイブリッドボンディングを用い、0.9µm級の極微細ピッチを狙います。

用語集

CoWoS(コーワス)/ Chip on Wafer on Substrate
GPUと記憶用のHBMなど複数のチップを、1枚の土台(インターポーザ)の上に並べて1つのパッケージにまとめるTSMCの先端パッケージング技術。
HBM/ High Bandwidth Memory
DRAMを積み重ねて広帯域にした高性能メモリ。AI半導体とセットで使われる。
チップレット/ chiplet
1つの大きなチップを、小さな複数のチップに分けて1パッケージに集める設計手法。歩留まりとコストを改善できる。
パッケージング(先端パッケージング)/ advanced packaging
切り出したチップを基板に載せ、配線し、保護する工程。複数のチップを高密度につなぐ先端版もある。
後工程(OSAT)/ back-end / OSAT
ウェハーから切り出したチップを検査・組み立て・パッケージする工程。
ウェハー/ wafer
半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。
OSAT/ Outsourced Semiconductor Assembly and Test
チップの組み立て(パッケージング)と検査を専門に請け負う会社。後工程の外部委託先。

参考資料・引用元

  1. 2.5D / 3D Packaging (Advanced Packaging Knowledge Center)業界団体
    Semiconductor Engineering(2024)— 使用箇所: 2.5D(横並び+インターポーザ)と3D(縦積み+TSV/ハイブリッドボンディング)の定義と区別、インターポーザ・RDL・TSVの役割(要確認)
    https://semiengineering.com/knowledge_centers/packaging/advanced-packaging/2-5d-3d/
  2. TSMC Packaging Technologies for Chiplets and 3D (Hot Chips 33 Tutorial)一次情報
    TSMC / IEEE Hot Chips(2021-08)— 使用箇所: 3DFabric分類(SoIC=Frontend 3D、CoWoS/InFO=Backend 3D/2.5D)、CoWoS-S/R/Lの土台の違い、SoICハイブリッドボンディングの0.9µm級ピッチスケーリング
    https://hc33.hotchips.org/assets/program/tutorials/2021%20HotChips%20TSMC%20Packaging%20Technologies%20for%20Chiplets%20and%203D_0819%20publish_public.pdf
  3. The Race To Next-Gen 2.5D/3D Packages業界団体
    Semiconductor Engineering(2023)— 使用箇所: CoWoS・EMIB(2.5D)とSoIC・Foveros(3D)の位置づけ、マイクロバンプからハイブリッドボンディングへの移行、ファンアウト(FOWLP/InFO)の役割(要確認)
    https://semiengineering.com/the-race-to-next-gen-2-5d-3d-packages/

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