米国の規制で最先端のNVIDIA製チップを買いにくくなった中国は、Huaweiなど国産チップへの切り替えを進めてきました。その国産チップが、今度は「メモリが足りない」ことで値上がりし始めています。なお本記事の価格情報は、Reutersの取材に基づく報道ベースの内容で、各社の公式発表ではありません(2026年9月30日時点)。半導体の基本から知りたい方は「半導体とは、電気を「通す・通さない」を切り替えられる物質——それだけの性質が世界を動かしている」をご覧ください。
AIチップは、計算する頭脳と、データをためておく「HBM」というメモリがセットで働きます。中国のAIチップ会社は、そのHBMを十分に手に入れにくくなり、チップの値段を上げ始めたと報じられました。安いNVIDIAの代わりになるはずの国産チップが、値上がりしてしまった形です。ただし、値段は取引先にしか示されない情報で、報道が根拠です。
構造で言うと(投資家向け)も見る
Reuters報道(2026年9月10日):Ascend 950DTは25万元超(2カ月前比20〜50%高)、950PRは年初約6万元から8万元超(約30%高)、910Cは約9万元から11万元超、Cambricon次期690は20〜30%高、MetaX・Iluvatar CoreXも同様。値上げの共通要因は先端HBMの寡占と輸出管理。含意は、国産AIチップのコスト優位が崩れ、中国の脱NVIDIAが計算資源の価格面で制約されること。数値は非公開の商談情報を報じたもので、各社は確認していない。
なぜHuaweiのAIチップは2カ月で最大50%も値上がりしたのか
Reutersによると、Ascend 950DTは2026年第4四半期の提供が予定されている最上位品です。その提示価格が25万元超に引き上げられました。上げ幅は契約条件によって20〜50%と幅があります。
ほかの製品も上がっています。Ascend 950PRは年初の約6万元から8万元超へ、約30%の上昇です。旧世代の910Cも約9万元から11万元超になったと報じられました。
Reutersは、価格が公表されていない商談情報だと伝えています。Huawei、Cambricon、MetaX、Iluvatar CoreXはコメント要請に応じませんでした。つまり数字は「提示価格」であり、実際の成約価格ではありません。
HBMとは何か、なぜ調達が難しいのか
は、メモリのチップを縦に積み、AIチップの真横に置く高速メモリです。AIは膨大なデータを絶えず読み書きするため、計算力が高くてもメモリが遅ければ性能が出ません。仕組みは「AIの性能を決めていたのは、GPUより「メモリ」だった」で詳しく扱っています。
先端HBMの市場は、韓国のSK hynixとSamsung Electronics、米国のMicronの3社が握っています。Reutersは、米国が2024年12月に先端HBMの対中輸出管理を強化して以降、中国のチップ各社がグレーマーケット(正規ルート外の流通)に頼る場面が増えたと報じています。
たとえるなら、レストランが客席(計算力)を増やしても、食材(メモリ)が入ってこなければ料理を出せない状態です。食材の仕入れ値が上がれば、料理の値段も上げざるをえません。
HuaweiはHBMを自前で作れないのか
Huaweiは自社開発のHBMを持つ方針を掲げています。TrendForceによると、Huaweiは2026年3月20日に発表したAtlas 350(Ascend 950PR搭載)で、自社開発HBM「HiBL 1.0」を採用しました。950DTには「HiZQ 2.0」を使うと説明しています。
ただしReutersは、Huaweiがこのメモリをどこでどう製造するのかを明らかにしていないと伝えています。自社設計の方針があっても、量産に必要な製造能力と、それを支える調達網が整っているかは確認できていません。
なお、HBM不足の原因が輸出管理なのか、世界的な需要増なのか、両方なのかを切り分けた公式データは見つかっていません。本記事は、Reutersが伝えた背景説明の範囲にとどめます。
値上げは中国の「脱NVIDIA」にどう響くのか
国産AIチップは、米国製の代替として選ばれてきました。中国当局が自国企業にNVIDIA製品の購入を控えさせる動きは、「H200の対中輸出は解禁された。それでも中国では、ほとんど売れていない」で扱ったとおりです。
その受け皿である国産チップが値上がりすれば、買い手の負担は増えます。Reutersも、HBMの高騰が、その不足を埋めるはずの国産アクセラレーターの価格を押し上げていると指摘しています。
一方で、国産チップの需要そのものは強いままです。Reutersは、Iluvatar CoreXがTikTok運営元のByteDance向けGPU出荷を今年10万個へ倍増させたと伝えています。Huaweiは、ByteDanceにとって国内最大の供給元だともいいます。値上げがあっても、代わりの選択肢が少ないことがうかがえます。
世界のメモリ高騰と中国の国産化は今後どうなるのか
世界のメモリ価格は2026年に急騰してきました。TrendForceの予測を整理した「+90%、+58%、次は+13〜18%。メモリ値上げの狂乱は終わり、「減速」が始まった」では、値上がりの勢いは鈍る見通しでした。ただしHBMは通常のとは別に、先端品の供給が限られています。
中国の国産化戦略の全体像は「制裁が、かえって中国の半導体を本気にさせた」で解説しています。今回の値上げは、チップ設計だけでなくメモリまで含めた自給が、まだ道半ばであることを示す一例です。
今後の焦点は3つあります。Huaweiが自社HBMを量産できるか、950DTの提供が予定どおり2026年第4四半期に始まるか、そして提示価格が実際の契約でどこまで通るかです。いずれも現時点で公式の確認はありません。
この記事のまとめ
- Reutersは2026年9月10日、中国AIチップ4社がHBM不足を理由に値上げしたと独自報道した。価格は非公開情報で、各社はコメントしていない。
- Huawei Ascend 950DTは25万元超で、2カ月前の提示価格から20〜50%高い。950PRは年初の約6万元から8万元超へ約30%上昇した。
- Cambricon次期690は提示価格が20〜30%上昇。MetaXとIluvatar CoreXも同様に値上げしたと報じられた。
- 背景は先端HBMの寡占と、2024年12月以降の対中輸出管理強化。グレーマーケット依存が進んだとされる。
- 値上げは国産チップが安価なNVIDIA代替になるという前提を弱める。ただし報道ベースの数値であり、実際の取引価格は確認できていない。
この記事のまとめ
- Reutersは2026年9月10日、中国AIチップ4社がHBM不足を理由に値上げしたと独自報道した。価格は非公開情報で、各社はコメントしていない。
- Huawei Ascend 950DTは25万元超で、2カ月前の提示価格から20〜50%高い。950PRは年初の約6万元から8万元超へ約30%上昇した。
- Cambricon次期690は提示価格が20〜30%上昇。MetaXとIluvatar CoreXも同様に値上げしたと報じられた。
- 背景は先端HBMの寡占と、2024年12月以降の対中輸出管理強化。グレーマーケット依存が進んだとされる。
- 値上げは国産チップが安価なNVIDIA代替になるという前提を弱める。ただし報道ベースの数値であり、実際の取引価格は確認できていない。
よくある質問(FAQ)
Q.Huawei Ascend 950DTはいくら値上がりしたのですか?+
Reutersの報道(2026年9月10日)によると、Ascend 950DTの提示価格は25万元超で、2カ月前に顧客へ示した価格より20〜50%高い水準です。上げ幅は契約条件によって異なるとされています。これは非公開の商談情報に基づく報道で、Huaweiは公式に確認していません。
Q.HBMとは何ですか?+
HBM(High Bandwidth Memory:広帯域メモリ)とは、DRAMチップを縦に積み重ね、AIチップのすぐ隣に置いて大量のデータを高速に受け渡すメモリです。AIチップの性能はHBMの容量と速度に左右されるため、HBMが足りなければAIチップ自体を出荷できません。先端品は主にSK hynix・Samsung・Micronが供給しています。
Q.なぜ中国のAIチップ各社はHBMを調達しにくいのですか?+
Reutersは、米国が2024年12月に先端HBMの対中輸出管理を強化して以降、中国のチップ各社がグレーマーケット(正規ルート外の流通)に頼る場面が増えたと報じています。先端HBMは韓国と米国の3社が握る寡占市場で、そこに世界的な需要増が重なったことが値上げの背景です。
Q.Huaweiは自社開発のHBMを持っていないのですか?+
Huaweiは、Ascend 950シリーズに独自のHBM「HiBL 1.0」(950PR用)と「HiZQ 2.0」(950DT用)を採用すると公表しています。ただしReutersは、そのメモリをどこでどう製造するのかは明らかにされていないと伝えています。自社開発の方針と、実際の調達難が並存している状況です。
用語集
- HBM/ High Bandwidth Memory
- DRAMを積み重ねて広帯域にした高性能メモリ。AI半導体とセットで使われる。
- DRAM/ Dynamic Random Access Memory
- 電源を切ると消える、高速な作業用メモリ。CPUやGPUが計算中のデータを一時的に置く。
参考資料・引用元
- Exclusive-China's AI chipmakers raise prices as high-bandwidth memory shortage bites報道Reuters(Investing.com配信)(2026-09-10)— 使用箇所: Ascend 950DTの提示価格が25万元超(2カ月前比20〜50%高)、950PRが年初約6万元から8万元超、910Cが約9万元から11万元超、Cambricon次期690が20〜30%高、MetaX・Iluvatar CoreXも同様と報道。HBM輸出規制強化(2024年12月)以降グレーマーケット調達に依存が進んだこと、各社はコメント要請に応じていないことも報道(価格は非公開の商談情報で、Reuters独自取材=報道ベース)https://www.investing.com/news/stock-market-news/exclusivechinas-ai-chipmakers-raise-prices-as-highbandwidth-memory-shortage-bites-4894950
- Huawei Debuts Atlas 350 on Ascend 950PR with In-house HBM, Touting 2.8X H20 Performance調査会社TrendForce(2026-03-23)— 使用箇所: Huaweiが2026年3月20日にAscend 950PR搭載のAtlas 350を発表し、自社開発HBM「HiBL 1.0」を採用したこと。ロードマップ(950PR=2026年Q1、950DT=Q4、960=2027年Q4、970=2028年Q4)。HBMの製造場所は記事に記載なしhttps://www.trendforce.com/news/2026/03/23/news-huawei-debuts-atlas-350-on-ascend-950pr-with-in-house-hbm-touting-2-8x-h20-performance/
この記事をシェア
次に読む
コメント
GitHub アカウントでログインしてコメントできます。