経済産業省が来年度予算の要求額を公表した。総額は7兆7,859億円で、過去最大規模になる。半導体とAIはその中心に置かれている。ただしこれは「請求書」であって、確定した予算ではない。

公表は2026年8月31日である。経産省は令和9年度(2027年度)の概算要求を、一次資料として公式サイトに掲載している。数字は大きいが、読み方には注意がいる。要求額と成立額は別物だからだ。

ひとことで言うと(初心者向け)

経済産業省が「来年こういうことにお金を使いたい」という要求書を出しました。合計は7兆7,859億円で、過去最大の規模です。その中でもAIと半導体には特に大きな金額が置かれています。たとえばロボットを動かすAI(フィジカルAI)の開発事業には8,964億円が要求され、今年度の3,873億円から2倍以上に増えました。ただし、これはあくまで「希望額」です。財務省が査定して減らし、年末に政府案が決まり、翌年の国会で成立して初めて実際に使えるお金になります。要求どおりに通ることはまずありません。

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構造で言うと(投資家向け)

①経産省の令和9年度概算要求は総額7兆7,859億円(一般会計+特別会計)で過去最大規模②通常歳出とは別枠の「強く豊かな日本」投資枠に6兆3,116億円を計上し、AI・半導体・GXへ集中配分する構成③AI・半導体産業基盤強化フレームは5,272億円④マルチモーダル基盤モデル開発事業は8,964億円(令和8年度当初3,873億円)へ増額⑤FNNはAI・半導体・ロボット分野合計を約1.4兆円と報道、分野合計額は公式資料の単一項目としては確認できていない⑥概算要求は査定前の要求額であり、成立予算とは別物である点に注意。

概算要求とは、そもそも何なのか

概算要求とは、各省庁が翌年度に使いたい予算額を財務省へ提出する要求書である。提出期限は毎年8月末に置かれている。つまり8月末に出てくる数字は、決定額ではなく希望額だ。

この後の流れは3段階になる。財務省が要求を査定して削り、年末に政府予算案がまとまる。そして翌年の通常国会で審議され、成立して初めて実際に使える予算になる。要求額がそのまま通ることは、まずない。

初心者向け
ざっくり言うと、8月末に出るのは「お小遣いの申請書」です。実際にもらえる金額が決まるのは、年末から翌年春にかけてです。

したがって報道の見出しにある金額は、上限の目安として読むのが正しい。それでも意味はある。どの分野に国が重点を置こうとしているかが、金額の配置から読み取れるからだ。

7兆7,859億円は、どういう構成になっているのか

要求総額は7兆7,859億円で、一般会計と特別会計を合わせた額である。過去最大の規模になった。日本経済新聞は、補正予算に頼る形からの脱却が要求額の膨張につながったと伝えている。

構成で目を引くのは、通常の歳出とは別枠で新設された「強く豊かな日本」投資枠だ。ここに6兆3,116億円が計上されている。総額の8割強がこの枠に入る計算になる。AI・半導体・GXといった成長分野へ集中的に配分する狙いが置かれている。

つまり今回の要求は、既存事業を少しずつ積み上げた形ではない。成長分野への集中投資という枠組みを先に作り、そこへ大半を流し込む構成になっている。

AIと半導体には、いくら置かれたのか

半導体分野の中核は「AI・半導体産業基盤強化フレーム」である。これは経産省がAIと半導体を一体で支援するために設けた枠組みで、令和9年度概算要求では5,272億円が計上された。

分野全体の合計については注意が必要だ。FNNプライムオンラインは、AI・半導体・ロボット分野への投資を約1.4兆円と報じている。ただしこの分野合計額は、公式資料の単一項目としては確認できていない。複数の事業を集計した報道値として読む必要がある。

金額の実感をつかむには、過去の投入額と比べるのが早い。「Rapidusの2nm量産には、これまで国費で2兆円規模が動いてきた」。単年度の要求と累計の投入額は直接比較できないが、桁としては同じ領域の話になる。

8,964億円の「フィジカルAI」とは何を指すのか

今回の要求で最も目立つ増額は、「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」である。令和9年度の要求額は8,964億円で、令和8年度当初予算の3,873億円から2倍以上になった。

フィジカルAIとは、画面の中で文章や画像を扱うAIではなく、ロボットなど現実世界の機械を動かすAIを指す。カメラの映像、音、力の感覚といった複数種類の情報をまとめて扱う必要があり、こうした複数モードの入力を扱うモデルがマルチモーダル基盤モデルと呼ばれる。

この事業自体は2026年6月30日に開始が発表されている。つまり新規事業の立ち上げではなく、走り始めた事業への大幅な積み増しという位置づけになる。

この予算は、半導体メーカーにどう届くのか

国の予算は企業へ直接配られるわけではない。補助事業や基金を経由し、公募と採択を通じて配分される。だから概算要求の段階では、どの企業にいくら渡るかは決まっていない。

これまでの代表例は2つある。1つは「Rapidusによる2nm量産の立ち上げ」、もう1つは「TSMCが熊本に建てたJASMへの補助」だ。どちらも受託製造を担うの拠点に、国費が直接投じられた事例になる。

一方で、装置や材料を作る国内メーカーへは、こうした拠点のを通じて間接的に需要が回る。「日本の材料メーカーが工程の各所を押さえている構図」を踏まえると、補助の効果は1社にとどまらず取引先まで広がることになる。

なお、半導体とは何かという基本から確認したい場合は、「半導体の性質を整理した入門記事」を先に読むと、国が何に投資しているのかがつかみやすい。

年末までに何を確認すればいいのか

確認点は3つある。第1に、財務省の査定でどの事業がどれだけ削られるかである。要求額が大きい事業ほど、削減幅も注目される。

第2に、「強く豊かな日本」投資枠という新しい枠組みが、そのまま維持されるかどうかだ。枠の規模が縮めば、AI・半導体への配分も連動して動く。

第3に、フィジカルAI関連の8,964億円が査定後にどこまで残るかである。倍増以上の要求が通るかどうかは、国の重点の置き方を測る目安になる。政府予算案は年末に、成立は翌年の通常国会になる。

この記事のまとめ

  • 経産省が2026年8月31日に令和9年度概算要求を公表した。総額は7兆7,859億円で過去最大規模になる。
  • 通常歳出とは別枠の「強く豊かな日本」投資枠に6兆3,116億円を計上し、AI・半導体・GXなどの成長分野へ集中させる構成である。
  • AI・半導体産業基盤強化フレームは5,272億円。FNNプライムオンラインはAI・半導体・ロボット分野への配分を約1.4兆円と報じている。
  • フィジカルAI向けのマルチモーダル基盤モデル開発事業は8,964億円で、令和8年度当初の3,873億円から大幅に増えた。
  • 概算要求は要求額であり決定額ではない。財務省の査定と年末の予算編成、翌年の国会審議を経て初めて確定する。

この記事のまとめ

  • 経産省が2026年8月31日に令和9年度概算要求を公表した。総額は7兆7,859億円で過去最大規模になる。
  • 通常歳出とは別枠の「強く豊かな日本」投資枠に6兆3,116億円を計上し、AI・半導体・GXなどの成長分野へ集中させる構成である。
  • AI・半導体産業基盤強化フレームは5,272億円。FNNプライムオンラインはAI・半導体・ロボット分野への配分を約1.4兆円と報じている。
  • フィジカルAI向けのマルチモーダル基盤モデル開発事業は8,964億円で、令和8年度当初の3,873億円から大幅に増えた。
  • 概算要求は要求額であり決定額ではない。財務省の査定と年末の予算編成、翌年の国会審議を経て初めて確定する。
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よくある質問(FAQ)

Q.概算要求とは何ですか?+

概算要求とは、各省庁が翌年度に使いたい予算額を財務省へ提出する要求書です。毎年8月末が提出期限になっています。これは希望額であって、決定額ではありません。財務省の査定と年末の予算編成を経て政府案がまとまり、翌年の国会審議で成立して初めて実際に使える予算になります。要求額から削られるのが通例です。

Q.経産省の令和9年度概算要求はいくらですか?+

総額は7兆7,859億円です。このうち通常の歳出とは別枠で新設された「強く豊かな日本」投資枠が6兆3,116億円を占めます。AI・半導体産業基盤強化フレームには5,272億円が計上されました。FNNプライムオンラインは、AI・半導体・ロボット分野への配分を約1.4兆円と報じています。

Q.フィジカルAIの基盤モデル開発に8,964億円とは何のお金ですか?+

「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」への要求額です。フィジカルAIとは、画面の中だけでなくロボットなど現実世界の機械を動かすAIを指します。令和8年度の当初予算3,873億円から大きく積み増された形です。この事業自体は2026年6月に開始が発表されています。

Q.この予算は半導体メーカーにどう届くのですか?+

国の予算は企業へ直接配られるのではなく、補助事業や基金を通じて配分されます。Rapidusの2nm量産やTSMC熊本のJASMへの補助が代表例です。ただし概算要求の段階では、どの企業にいくら配分されるかは決まっていません。事業ごとの公募や採択を経て具体化します。

用語集

設備投資(capex)/ capital expenditure
工場や機械など、長く使う設備を買うためにかけるお金。
ファウンドリ/ foundry
他社が設計した半導体を、受託して製造する工場。代表はTSMC。

参考資料・引用元

  1. 令和9年度概算要求・税制改正要望について公的機関
    経済産業省(公式)(2026-08-31)— 使用箇所: 令和9年度(2027年度)経産省概算要求の一次資料ページ。要求総額7兆7,859億円・「強く豊かな日本」投資枠6兆3,116億円の出所
    https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2027/index.html
  2. 令和9年度 経済産業省関係 概算要求等概要公的機関
    経済産業省(公式PDF)(2026-08-31)— 使用箇所: 概算要求額の内訳(一般会計・特別会計)を示す一次資料
    https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2027/pdf/01.pdf
  3. AI・半導体産業基盤強化フレーム公的機関
    経済産業省(公式)(2026)— 使用箇所: AI・半導体産業基盤強化フレームの制度説明。令和9年度概算要求における同フレーム5,272億円の位置づけ
    https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/ai_semiconductor_frame/ai_semiconductor_frame.html
  4. 「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」を開始します公的機関
    経済産業省(公式プレスリリース)(2026-06-30)— 使用箇所: マルチモーダル基盤モデル開発事業の内容・開始時期の一次発表(令和9年度概算要求で8,964億円へ増額、令和8年度当初は3,873億円)
    https://www.meti.go.jp/press/2026/06/20260630005/20260630005.html
  5. 経産省、概算要求7兆7859億円 「強く豊かな日本投資枠」でAI・半導体・ロボット分野に約1.4兆円投資へ報道
    FNNプライムオンライン(フジテレビ系)(2026-08-31)— 使用箇所: AI・半導体・ロボット分野への配分を約1.4兆円と報じた報道。分野合計額は公式資料の単一項目としては確認できず、報道値である点に注意
    https://news.yahoo.co.jp/articles/09d8238e9cb424981b01e4010b57f526f83022b1
  6. 経産省の概算要求、AI・半導体軸に7.7兆円 「補正脱却」で膨張報道
    日本経済新聞(2026-08)— 使用箇所: 概算要求が過去最大規模に膨らんだ背景(補正予算頼みからの脱却)という文脈
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA199M90Z10C26A8000000/

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