半導体チップは完成後、エポキシ樹脂で固める「封止」工程を経て初めて製品になります。その装置で世界の約3分の2を京都の会社・TOWAが手がけています。AIチップの複雑なパッケージが増えるほど封止装置の重要性も増しています。
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TOWA(6315)はモールディング装置の世界シェア66%(2022年)を持つ後工程特化の装置メーカー。競合2位アピックヤマダが2025年にヤマハロボティクスへ統合されたことで市場集約が進み、チップレット世代の先端パッケージング需要が構造的な成長ドライバー。AI時代の後工程高度化とともに評価軸が変わりつつある。
なぜ半導体パッケージを樹脂で封じるのか
剥き出しのシリコンダイは、肉眼では見えない程度の衝撃・湿気・静電気で動作不良を起こす。封止(モールディング)工程とは、チップを金型の中でエポキシ樹脂に包み込み、硬化させて「外の世界」から隔離するプロセスだ。業界団体出典【半導体】モールディング(封止)とは?発行Semi Journal公開2024使用箇所封止工程の定義(物理的衝撃・汚染・水分からの保護)とトランスファーモールド(プランジャ圧送)が主流という位置づけ
封止材の主成分はエポキシ樹脂(ベース樹脂15〜20%)、シリカフィラー(重量比70%以上)、硬化剤(8〜10%)の三層構造になっている。シリカを大量に混ぜるのは、シリコンに近い熱膨張係数を与えて温度変化による剥離を防ぐためだ。業界団体出典半導体封止材とは発行フミテック公開2024使用箇所エポキシ封止材の組成(重量比シリカ70%以上・ベース樹脂15〜20%・硬化剤8〜10%)とシリカの役割(低熱膨張・放熱・強度)
工程フローは大きく二段階に分かれる。金型内での一次硬化(数十秒〜数分)でチップを固定した後、加熱炉でポストモールドキュア(150〜180℃・数時間)を行って強度と絶縁性を完全に発現させる。業界団体出典モールディング(半導体封止工程)とは?仕組み・方式をわかりやすく解説発行株式会社菅製作所公開2024使用箇所工程フロー(金型内一次硬化 数十秒〜数分→ポストモールドキュア150〜180℃・数時間)とトランスファー/コンプレッションの使い分け
封止材を供給する材料メーカーとして、住友ベークライトがエポキシ樹脂系半導体封止材で世界シェア首位、レゾナックが液状封止材でトップクラスに位置する。のサプライチェーンは装置と材料の2軸で構成されており、TOWAはその装置側の中核を担う。報道出典「車載封止材」販売100億円超え…住友ベークライトが戦略製品の展開加速発行ニュースイッチ(日刊工業新聞)公開2024-01-13使用箇所住友ベークライトがエポキシ樹脂系半導体封止材で世界シェア首位という順位
トランスファとコンプレッションの違いはどこにあるのか
封止工程には大きく2つの方式がある。トランスファモールドは、ポット(溜め)に入れた樹脂タブレットをプランジャで押して溶融させ、ランナーを通じてキャビティへ充填する方式だ。従来のリードフレームパッケージやBGA(ボールグリッドアレイ)に広く使われ、装置コストが低い。一次情報出典樹脂成形技術/トランスファモールド・コンプレッションモールド発行TOWA(公式)公開2025使用箇所トランスファ方式(溶融樹脂をキャビティに充填し硬化)とコンプレッション方式(薄型大判向き・樹脂流動ほぼなし)の方式説明
一方、TOWAが先行するコンプレッションモールド(圧縮成形)は、金型のキャビティ内に樹脂を直接置き、上下のプレスで均等に圧縮して硬化させる。樹脂の流動がほぼゼロに近いため、薄型・大判パッケージや**ファンアウトウェハーレベルパッケージ(FO-WLP)**との相性が高い。
コンプレッション方式は大判のパネルを一度に成形できるため、生産性が高く先端パッケージングのコスト競争を直撃する。TSMCのInFO、AMDやIntelが採用を拡大するチップレット向けパッケージなど、高機能パッケージが増えるほどコンプレッション方式の出番も増える構造になっている。
TOWAはなぜシェア66%を取れたのか
TOWAの2022年世界シェアは66%(2021年は60%)で、同社は日経クロステックにより「チップレットの鍵を握る装置メーカー」と位置づけられている。報道出典チップレットの鍵握るモールディング装置、シェア7割を握るTOWA発行日経クロステック公開2023-09-19使用箇所TOWAのモールディング装置世界シェア66%(2022年、2021年は60%)とチップレット時代に重要性が増す文脈
装置の中でも封止は「装置×材料×金型」が一体で最適化される世界であり、TOWAは長年の蓄積で金型温度管理・樹脂流動シミュレーション・プレス精度の三点を社内で磨いてきた。コンプレッション方式では特にプレスの均一性がを決定するため、精密機械加工の技術が参入障壁になっている。
競合構成は、国内のアピックヤマダと、オランダの**BESI(Besi)**が主な相手だった。しかしアピックヤマダは2025年2月にヤマハロボティクスホールディングスへの事業統合を完了し、実質的に独立装置メーカーとしての競争力を縮小した。一次情報出典ヤマハロボティクスホールディングスおよび傘下の会社統合について発行ヤマハ発動機(公式)公開2025-02-12使用箇所アピックヤマダ(樹脂封止装置)が新川・PFAとともに2025年にヤマハロボティクスへ統合された事実
OSAT(後工程受託)最大手のASMPT(旧ASM Pacific Technology)は組立・パッケージング装置の総合首位であり、ワイヤボンダやダイボンダではTOWAより大規模だ。一次情報出典ASMPT Semiconductor Solutions発行ASMPT公開不明使用箇所2002年に組立・パッケージング装置業界で世界一となり以降首位/ダイボンダ〜ワイヤボンダ〜フリップチップ〜TCBの製品範囲 しかしコンプレッション封止という特化領域ではTOWAが圧倒的な市場地位を持ち、棲み分けが成立している。
チップレットが増えるほど封止装置の価値が上がる理由
従来の1パッケージ=1チップの時代、封止は「単純な保護工程」だった。しかしAIアクセラレータの時代になり、を複数ダイで統合するパッケージ——NVIDIAのBlackwellやAMDのEPYC Zen4等——が普及すると、封止工程の難易度が跳ね上がる。
複数ダイを1つのキャビティで一括封止する場合、ダイ高さのわずかなバラつきが樹脂充填の均一性を損ない、封止界面の剥離やボイドを生む。コンプレッション方式の「均等加圧」はこの問題を物理的に抑制できる点が、チップレット時代に再評価されている理由だ。
加えて、「HBM4のTSV積層」でも見たように、高さのある積層パッケージ(HBMスタック)を基板と共封止する「オーバーモールド」技術は次世代AI向けに需要が急増している。封止工程は後工程の「締めくくり」から、パッケージ性能の「決め手」に変わりつつある。
「先端パッケージングの全体像」では、封止を含むOSATサプライチェーンの構造を、「チップレットとUCIe標準」ではダイを統合するもう一方の技術軸を詳しく解説している。
この記事のまとめ
- TOWAは1979年設立・京都市伏見区の後工程装置専業メーカーで、モールディング(封止)装置の世界シェア66%(2022年)を持つ。
- 封止工程はチップを湿気・衝撃・汚染から守るために不可欠で、エポキシ樹脂+シリカフィラーで一次硬化→ポストモールドキュアの2段階で固める。
- TOWAの強みはコンプレッション(圧縮)成形——樹脂を流動させない均等加圧により、薄型・大判・ファンアウトパッケージに対応できる。
- 競合2位のアピックヤマダが2025年にヤマハロボティクスへ統合され、市場集約がさらに進んだ。
- チップレット普及と積層パッケージ化が進むほど封止の難易度と付加価値が上がり、TOWAの市場地位は構造的に強化される方向にある。
この記事のまとめ
- TOWAは半導体モールディング(封止)装置で世界シェア66%を握る京都の専業メーカーで、東証プライム上場(6315)。
- 封止工程はチップを物理的衝撃・湿気・汚染から守るために不可欠な後工程の最終関門。
- TOWAの強みはコンプレッション(圧縮)成形方式——樹脂を流動させないため、薄型・大判・ファンアウトパッケージに対応できる。
- チップレット普及で1パッケージに複数ダイを封止する頻度が増え、TOWAの装置需要は構造的に伸びる。
- 競合2位のアピックヤマダは2025年にヤマハロボティクスへ統合、市場集約が進みTOWAの地位は一層安定している。
よくある質問(FAQ)
Q.TOWAはどんな会社ですか?+
TOWAは1979年創業の京都市伏見区に本社を置く半導体装置メーカーです。半導体チップを樹脂で封止(モールディング)する装置に特化し、世界市場シェア66%(2022年)を誇ります。東証プライム上場(証券コード6315)で、従業員は連結で約1,000人規模です。
Q.トランスファモールドとコンプレッションモールドは何が違いますか?+
トランスファモールドは溶融した樹脂をプランジャで押し出して金型のキャビティに充填する方式で、従来のリードフレームパッケージに広く使われます。コンプレッションモールドは金型内に直接樹脂を置き、上下のプレスで均等に圧縮する方式です。樹脂の流動がほぼないためファンアウト・ウェハーレベルパッケージや大判・薄型パッケージに向いており、TOWAが先行する領域です。
Q.なぜ半導体チップを封止(モールディング)する必要があるのですか?+
チップを物理的な衝撃・湿気・汚染・静電気から守るためです。剥き出しのシリコンダイは非常に脆く、わずかな水分や塵でも動作不良を起こします。封止材(エポキシ樹脂+シリカ)を固めることで機械的強度と絶縁性が確保され、基板への実装も可能になります。
用語集
- 後工程(OSAT)/ back-end / OSAT
- ウェハーから切り出したチップを検査・組み立て・パッケージする工程。
- パッケージング(先端パッケージング)/ advanced packaging
- 切り出したチップを基板に載せ、配線し、保護する工程。複数のチップを高密度につなぐ先端版もある。
- チップレット/ chiplet
- 1つの大きなチップを、小さな複数のチップに分けて1パッケージに集める設計手法。歩留まりとコストを改善できる。
- ウェハー/ wafer
- 半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。
- 歩留まり/ yield ヨミ:ぶどまり
- 1枚のウェハーから取れるチップのうち、欠陥のない良品の割合。
参考資料・引用元
- 【半導体】モールディング(封止)とは?業界団体Semi Journal(2024)— 使用箇所: 封止工程の定義(物理的衝撃・汚染・水分からの保護)とトランスファーモールド(プランジャ圧送)が主流という位置づけhttps://semi-journal.jp/basics/process/molding.html
- モールディング(半導体封止工程)とは?仕組み・方式をわかりやすく解説業界団体株式会社菅製作所(2024)— 使用箇所: 工程フロー(金型内一次硬化 数十秒〜数分→ポストモールドキュア150〜180℃・数時間)とトランスファー/コンプレッションの使い分けhttps://agus.co.jp/?p=9299
- 半導体封止材とは業界団体フミテック(2024)— 使用箇所: エポキシ封止材の組成(重量比シリカ70%以上・ベース樹脂15〜20%・硬化剤8〜10%)とシリカの役割(低熱膨張・放熱・強度)https://fumitec.jp/semiconductor-e/
- 樹脂成形技術/トランスファモールド・コンプレッションモールド一次情報TOWA(公式)(2025)— 使用箇所: トランスファ方式(溶融樹脂をキャビティに充填し硬化)とコンプレッション方式(薄型大判向き・樹脂流動ほぼなし)の方式説明https://www.towajapan.co.jp/jp/technology/molding/
- チップレットの鍵握るモールディング装置、シェア7割を握るTOWA報道日経クロステック(2023-09-19)— 使用箇所: TOWAのモールディング装置世界シェア66%(2022年、2021年は60%)とチップレット時代に重要性が増す文脈https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08380/
- 「車載封止材」販売100億円超え…住友ベークライトが戦略製品の展開加速報道ニュースイッチ(日刊工業新聞)(2024-01-13)— 使用箇所: 住友ベークライトがエポキシ樹脂系半導体封止材で世界シェア首位という順位https://newswitch.jp/p/40034
- ヤマハロボティクスホールディングスおよび傘下の会社統合について一次情報ヤマハ発動機(公式)(2025-02-12)— 使用箇所: アピックヤマダ(樹脂封止装置)が新川・PFAとともに2025年にヤマハロボティクスへ統合された事実https://global.yamaha-motor.com/jp/news/2025/0212/yrh.html
- 半導体材料(封止材)製品情報一次情報レゾナック(2024)— 使用箇所: エポキシ封止材・液状封止材の世界トップクラスシェア、CMPスラリーhttps://www.resonac.com/jp/products/semi-backend-process/76
- ASMPT Semiconductor Solutions一次情報ASMPT(不明)— 使用箇所: 2002年に組立・パッケージング装置業界で世界一となり以降首位/ダイボンダ〜ワイヤボンダ〜フリップチップ〜TCBの製品範囲https://semi.asmpt.com/en/company/semiconductor-solutions/
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