KOKUSAI ELECTRICは、3D NANDとの量産ラインに欠かせないバッチ式ALD装置で世界シェア約70%を握る日本の装置メーカーです。1回に100〜200枚のウェハーを縦型の炉に並べ、原子の層を均一に積む——この「まとめて焼く」技術が、AIメモリの積層化を陰で支えています。

半導体チップは、ウェハーの上に薄い膜を何十層も積み重ねて作られます。特に3D NANDは、絶縁膜と導電膜を200層を超えて積み重ねる構造で、その成膜工程を担う装置が量産の鍵を握ります。「成膜装置の全体像」と組み合わせて読むと、この会社の位置づけが鮮明になります。半導体づくりの全体像は「半導体とは何か」も参考になります。

ひとことで言うと(初心者向け)

KOKUSAI ELECTRICは、半導体の薄い膜を重ねる装置を作る日本のメーカーです。特に3D NANDやDRAMの量産に使われる「バッチ式縦型炉」で世界シェア約70%を持ちます。一度に100〜200枚のウェハーを炉の中に並べ、原子の薄い膜を均一に積めるのが強みです。元・日立グループで、2023年に東証プライム市場に上場しました(証券コード6525)。

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構造で言うと(投資家向け)

KOKUSAI ELECTRICはバッチ式ALD/LP-CVD(縦型成膜炉)で世界シェア約70%、急速熱処理(RTP)でもAMAT・Mattsonと並ぶ主要3社の一角(市場シェア計約77%)。3D NAND積層数増加・DRAM微細化・ロジックFinFET→GAA移行という3つの長期トレンドが装置更新需要を生む。証券コード6525、東証プライム。リスクは設備投資サイクルの波動と枚葉式との競合領域拡大。

順に事実を並べていくと、「そりゃそうなるわ」と納得できるはずです。

KOKUSAI ELECTRICとはどんな会社か

KOKUSAI ELECTRICとは、半導体製造に使うバッチ式装置を主力製品とする日本の装置メーカーです。本社は東京(千代田区)、製造拠点は富山県にあります(KOKUSAI ELECTRIC公式)。

もとは日立グループの「日立国際電気」として映像伝送や通信機器なども手がける複合企業でした。2018年、米プライベートエクイティのKKRが半導体装置事業を取得し、KOKUSAI ELECTRIC Co., Ltd.として分離独立させました。2023年10月には東京証券取引所プライム市場に上場し(証券コード6525)、半導体装置専業メーカーとして単独で資本市場と向き合う体制を整えました(東洋経済オンライン、2025年11月)。スリム化と専業特化がKKR傘下での変革の核心です。

バッチ式縦型炉とは何か

バッチ式縦型炉とは、チップに薄い膜を積む成膜工程で使う装置です。縦に立てた石英管(炉心管)の中に、100〜200枚のをボートと呼ばれる台車に並べて一括で炉内に入れ、温度や圧力を精密に制御しながら膜を積みます(KOKUSAI ELECTRIC公式)。

一枚ずつ処理する「枚葉式」に比べ、バッチ式は大量のウェハーを同時処理できるためスループット(単位時間あたりの処理枚数)が大きく有利です。一方、炉内すべてのウェハーに均一な膜厚を確保する難しさがあります。KOKUSAI ELECTRICは炉内のガス流量制御と温度分布を精緻に管理し、100〜200枚全てに均一な薄膜を形成する技術を長年磨いてきました。この均一性の実現がバッチ式縦型炉の競争力の源泉です。

初心者向け
バッチ式縦型炉は、大きなオーブンでクッキーを100枚以上いっぺんに焼くようなものです。1枚ずつ焼く(枚葉式)よりずっと速く仕上がりますが、オーブンのどこに置いたクッキーも同じ焼き加減にする、その温度と時間の管理こそが職人の腕の見せどころです。

なぜ3D NANDにバッチ式縦型炉が必要なのか

は、セルを垂直に積み重ねることで容量密度を高める方式です。キオクシアの第10世代(BiCS10)は332層に達しています(Kioxia公式、2025年2月)。この積層構造を作るには、シリコン窒化物とシリコン酸化物の絶縁膜を交互に何十〜何百回も成膜する必要があります。——ウェハー200枚を同時に、332層分ひたすら焼く。そりゃ世界シェア7割になるわ、という話です。

バッチ式縦型炉は、多数のウェハーをまとめて処理しながらこの超薄膜を均一に積める点で不可欠な存在です。特にバッチALD(原子層堆積法)は、「ALDの仕組み」で解説しているように1原子層ずつ確実に積める精度をバッチ式の生産性と組み合わせた最先端の成膜手法です。高アスペクト比の深い穴の側壁にも均一に膜が形成できる点が、3D NANDのチャネルホール内壁の絶縁膜形成で重宝されます(KOKUSAI ELECTRIC公式「強み」ページ)。

DRAMでも同様の事情があります。キャパシタの絶縁膜には、リーク電流を抑えるために酸化ハフニウム(HfO₂)などの高誘電体薄膜を使います。これも高アスペクト比構造への精密成膜が必要で、バッチALDの得意とする領域です。積層数が増えるほど、装置の使用回数が増える構造になっています。

競合との違いと市場での位置付け

装置全体を見ると、米アプライドマテリアルズ(AMAT)・米Lam Research・東京エレクトロン(TEL)の3社が圧倒的なシェアを持ちます。しかしバッチ式ALD装置という分野では、KOKUSAI ELECTRICが世界シェア約70%を握る独占的な存在です(東洋経済オンライン、2025年11月)。「TELとの棲み分け」は明確で、TELが枚葉式の成膜・洗浄でリードする一方、KOKUSAIはバッチ式量産ラインに特化しています。

急速熱処理(RTP)装置では、AMATとMattsonを加えた3社で世界シェア約77%を占めます(Intel Market Research、2026年)。RTPはイオン注入後のアニール(熱処理)などに使われる工程で、成膜と並ぶもう一つの事業柱です。

装置カテゴリKOKUSAI ELECTRICの立ち位置
バッチ式ALD・LP-CVD世界シェア約70%(独占的)
急速熱処理(RTP)AMAT・Mattsonと3社で世界シェア約77%の一角
枚葉式CVD全般TEL・AMAT・Lamが主流。KOKUSAIは特定工程で補完

成膜装置市場の全体像は「成膜装置の解説記事」で整理しています。KOKUSAI ELECTRICはそのバッチALDという特定領域に特化することで、世界最大手に伍する競争力を持ちます。

AI半導体の需要増とKOKUSAI ELECTRICへの影響

AI半導体の普及は、3D NANDとDRAMの生産拡大を加速しています。「3D NANDの積層競争」で述べたように、各社が332層を超えて400層・500層へ向かう競争は、バッチ成膜の工程数の増加を意味します。工程数が増えるほど、KOKUSAI ELECTRICの装置が必要になる回数も増えます。

からへのロジック(電流のオンオフを切り替える素子)の進化でも、高アスペクト比構造への精密成膜がより重要になります。KOKUSAI ELECTRICは「バッチ成膜装置と枚葉トリートメント装置で世界トップクラスのシェア」と公式で表明しています。同社は、この成長トレンドの直接的な受益企業の一つです(KOKUSAI ELECTRIC公式「強み」ページ)。

装置メーカーは半導体サイクルの波に業績が左右されやすいというリスクはあります。しかし3D NANDの多層化・DRAM微細化・ロジックGAA移行という3つの長期トレンドは、バッチ成膜装置の更新需要を生む構造的な後押しです。

ここまで見れば、そりゃ世界シェア7割になるわ、と言うほかありません。

この記事のまとめ

  • KOKUSAI ELECTRICは元・日立グループ。2018年にKKRが半導体装置事業を取得して独立させ、2023年東証プライム上場(証券コード6525)。
  • バッチ式ALD・LP-CVD縦型炉で世界シェア約70%。1回に100〜200枚のウェハーを同時に成膜し、量産ラインのスループットを支える。
  • 3D NANDの絶縁膜積層やDRAMキャパシタ絶縁膜など、高アスペクト比構造への精密成膜が主用途で、積層数の増加が装置需要の増加に直結する。
  • 成膜装置全体ではTEL・AMAT・Lamが主流だが、バッチALDという特化領域でKOKUSAIが圧倒的な市場地位を持つ。
  • AI需要が3D NAND・DRAMの設備投資を拡大させ、バッチ成膜装置への需要が中長期で増加する構造的追い風がある。

この記事のまとめ

  • KOKUSAI ELECTRICは元・日立グループ。2018年KKRが取得して独立させ、2023年東証プライム上場(証券コード6525)。
  • バッチ式ALD・LP-CVD縦型炉で世界シェア約70%。1回に100〜200枚のウェハーを同時に成膜し、量産ラインのスループットを支える。
  • 主用途は3D NANDの絶縁膜積層とDRAMキャパシタ絶縁膜。積層数の増加は装置需要の増加に直結する。
  • 急速熱処理(RTP)装置でもApplied Materials・Mattsonと並ぶ主要3社の一角を占める。
  • AI需要が3D NAND・DRAMの生産拡大を加速させ、バッチ成膜装置への設備投資が中長期で拡大する構造的追い風がある。
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よくある質問(FAQ)

Q.KOKUSAI ELECTRICとはどんな会社ですか?+

KOKUSAI ELECTRIC(証券コード6525)は、半導体製造に使うバッチ式成膜装置(縦型炉)を主力製品とする日本の装置メーカーです。元・日立グループの「日立国際電気」から半導体装置事業が分離独立した会社で、2018年に米KKRが取得して現在の社名になり、2023年10月に東証プライム市場に上場しました。

Q.バッチ式ALD装置で世界シェア7割とはどういう意味ですか?+

「バッチ式」とは、一度に100〜200枚のウェハーを炉の中に並べてまとめて処理する方式を指します。「ALD(原子層堆積)」は、1原子層ずつ確実に膜を積む超精密な成膜法です。この二つを組み合わせた装置カテゴリで、KOKUSAI ELECTRICが世界市場の約70%を握るという意味です。競合他社の多くは枚葉式(一枚ずつ処理)が主流で、バッチALD分野での独占的な地位を持ちます。

Q.なぜ3D NANDにバッチ式縦型炉が必要なのですか?+

3D NANDは絶縁膜と導電膜を200〜330層以上交互に積み重ねた構造です。各層の成膜を1枚ずつ処理していては時間がかかりすぎます。バッチ式縦型炉は100〜200枚のウェハーをまとめて同一条件で処理できるため、量産ラインの生産性を大幅に高めます。積層数が増えるほどこの装置の使用回数が増え、KOKUSAI ELECTRICの役割は大きくなります。

Q.KKRに買収された後、会社はどう変わりましたか?+

旧・日立国際電気は映像伝送システムや通信機器なども手がける複合企業でしたが、KKRが取得後に半導体装置事業に特化しました。2023年の東証プライム上場により独立した上場企業となり、半導体装置専業メーカーとして資本市場から直接評価を受ける体制に変わりました。スリム化と専業化がKKR傘下での変革の核心です。

用語集

成膜(せいまく)・塗布/ deposition / coating
ウェハー表面に、配線や絶縁体になる薄い膜を一様につける工程。液体を塗る『塗布』も含む。
ウェハー/ wafer
半導体を作る土台となる円盤状のシリコン。ここに多数のチップをまとめて作る。
3D NAND/ three-dimensional NAND
メモリのセルを縦に何百層も積み上げて容量を増やすNANDの構造。平面では限界に達したため縦方向へ伸ばした。
エッチング/ etching
レジストに覆われていない部分の膜を、気体や薬液で削り取り、回路パターンを膜に刻む工程。
DRAM/ Dynamic Random Access Memory
電源を切ると消える、高速な作業用メモリ。CPUやGPUが計算中のデータを一時的に置く。
FinFET(フィンフェット)/ Fin Field-Effect Transistor
薄い「ひれ(フィン)」を立て、ゲートが3面から囲む立体トランジスタ。平面型より電気の漏れを抑えられる。
GAA(ゲートオールアラウンド)/ Gate-All-Around
チャネルを上下左右の全周からゲートで囲む最先端トランジスタ。FinFETよりさらに電気の漏れを抑えられる。
トランジスタ/ transistor
電気のスイッチ。オン/オフで「0と1」を表し、計算と記憶の最小単位になる。
設備投資(capex)/ capital expenditure
工場や機械など、長く使う設備を買うためにかけるお金。

参考資料・引用元

  1. 国際電気 バッチ式成膜装置(ALD・LP-CVD)製品情報一次情報
    国際電気(Kokusai Electric)(2025)— 使用箇所: バッチ式縦型ALD/LP-CVD炉で国際電気(Kokusai Electric)が世界シェア約70%を占めるとされる(要確認)。1回に100〜200枚のウェハーを同時処理してスループット問題を解消。3D NAND・DRAMの量産ラインで広く採用される
    https://www.kokusai-electric.com/en/products/
  2. KOKUSAI ELECTRICの強み一次情報
    KOKUSAI ELECTRIC(公式)(2026)— 使用箇所: バッチ成膜装置・枚葉トリートメント装置で世界トップクラスのシェア(公式表明)・バッチALD技術(高アスペクト比への高ステップカバレッジ成膜と高生産性の両立)
    https://www.kokusai-electric.com/company/strength
  3. 「世界シェア7割」を誇るKOKUSAI ELECTRICの“魔法の成膜技術”とは?報道
    東洋経済オンライン(2025-11-14)— 使用箇所: KOKUSAI ELECTRICはバッチ式ALD装置で世界シェア約7割・成膜全体ではTELが強いがALD方式ではKOKUSAIが圧倒的というバッチ市場の競合構図
    https://toyokeizai.net/articles/-/913199
  4. Rapid Thermal Processing Equipment Market Outlook 2026-2032調査会社
    Intel Market Research(調査会社)(2026)— 使用箇所: RTP(急速熱処理)装置はApplied Materials・Mattson・Kokusai Electricの3社で世界シェア約77%との集計(調査会社ベース)
    https://www.intelmarketresearch.com/rapid-thermal-processing-equipment-market-21381
  5. Kioxia and Sandisk Unveil Next-Generation 3D Flash Memory Technology Achieving 4.8Gb/s NAND Interface Speed一次情報
    Kioxia(公式)(2025-02-20)— 使用箇所: 第10世代(332層):ビット密度+59%・NAND I/F速度+33%(4.8Gb/s)、比較対象は第8世代(218層)
    https://www.kioxia.com/en-jp/business/news/2025/20250220-1.html
  6. KOKUSAI ELECTRIC 会社概要一次情報
    KOKUSAI ELECTRIC(公式)(2026)— 使用箇所: KOKUSAI ELECTRICの事業概要・沿革。旧・日立国際電気の半導体装置事業がKKRに2018年に取得されて分社独立し、KOKUSAI ELECTRIC Co., Ltd.に改称。2023年10月に東証プライム市場に上場(証券コード6525)。本社=東京(千代田区)・製造拠点=富山県(要確認・2026年時点)
    https://www.kokusai-electric.com/company/

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