「トランジスタが平面から立体へ変わった理由」で、平面→→GAAと進んできた流れを見ました。ではGAAの次に何が来るのか。答えは「トランジスタ単体の縮小」から「トランジスタの詰め方・積み方」への発想の転換です。
この記事で動かせる図解
- 01面積縮小の3DモデルGAA横並び→forksheet→CFET縦積みで面積が半分になる様子を立体で確認
トランジスタはn型とp型がペアで働きます。これまでは横に並べていましたが、もう単体を小さくできません。そこで、間に壁を立てて詰めたり(forksheet)、n型をp型の上に積んだり(CFET)して、回路全体の面積を縮めます。CFETなら同じ機能を約半分の面積に収められます。
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単体縮小の鈍化で、面積縮小の主役はトラックハイト。forksheet(壁でn-p間隔をFinFET比約35%、5T→4.3T)→CFET(縦積みで4T以下、面積ほぼ半減)。imecはA7(〜2031)からCFETを想定。Intel/TSMC/SamsungがIEDM 2023で実証。製造難度は高く裏面給電と併用。
なぜ単体の縮小ではなく「詰め方」が主役になったのか
トランジスタはn型とp型がペア(CMOS)で働きます。これまでの微細化は、トランジスタ1個を小さくすることが中心でした。しかしに到達して、単体をこれ以上小さくする物理的な余地はわずかになりました。
そこで競争の軸が移ります。鍵は「n型とp型をどれだけ詰めて配置できるか」、つまり標準セルの高さ(トラックハイト)をどれだけ縮められるか、です。回路は無数の標準セルでできているので、セルが小さくなれば、単体を縮めなくてもチップ全体の面積が縮みます。次の2つの構造は、まさにこの「詰め方・積み方」の革新です。
下の3Dモデルは、GAA(横並び)→forksheet(壁で仕切る)→CFET(縦積み)の3つを切り替えて、占有面積(赤い床)が縮んでいく様子を見られます。
forksheetとは何か、なぜ間隔を詰められるのか
とは、n型とp型のトランジスタの間に絶縁の「壁」を立て、両者を近づけて並べる構造のことです。GAA(ナノシート)とCFETのちょうど中間にあたります。
GAAでは、n型とp型の間にある程度の距離(n-p分離)が必要でした。一方、forksheetは両者の間に絶縁体の壁を先に作り、その壁を基準に作り分けます。これにより、n型とp型の間隔を最先端FinFETの約35%にあたる17nmまで詰められます。
結果として、標準セルの高さを5T(5トラック)から4.3Tへ縮小しつつ、性能の向上も得られます。imecが2017年にSRAM向けに提案し、その後に動作実証されました(imec)。
CFETはなぜ面積を半分にできるのか
とは、n型のトランジスタをp型の真上に縦に積み重ねる構造のことです。これまで横に並べていたn型とp型を縦に重ねるため、横方向の距離そのものが消えます。マンションの1階と2階を分けて建てれば、同じ土地の面積でも部屋数を増やせます。CFETはこれと同じ発想で、横に必要だった面積をまるごと省きます。
これが決定的です。forksheetが「横の間隔を詰める」のに対し、CFETは「横の間隔をゼロにする」。n-p分離が標準セルの高さの計算から外れるため、トラックハイトを4T以下へ押し下げ、同じ機能の回路を約半分の面積に収められます。
imecはCFETをA7世代(2031年見込み)から導入すると想定し、その先のA3世代までロードマップを描いています。作り方には、1枚の基板の上にそのまま積み上げる方式と、別々に作ってから貼り合わせる方式があり、前者が最も早く実現しやすいとされます(imec)。
研究はどこまで進んでいるのか
CFETはまだ研究段階ですが、最先端の企業はすでに動く回路を作り始めています。2023年のIEDM(半導体の最重要学会)では、Intel・Samsung・TSMCがそろってCFETのインバータ(最も基本的な回路)を実証しました。Intelは3層のn型を3層のp型の上に積んだ構造を示しました。TSMCは2024年に、量産級に近い微細な寸法で実際に動作するCFETインバータを作っています(IEEE Spectrum / TechPowerUp)。
ただし課題も大きく、縦に積むほど製造は難しくなり、上下のトランジスタをつなぐ配線や、発熱の処理が壁になります。そのためCFETは、電力配線を裏側に回す「裏面給電(PowerVia等)」と組み合わせて使われます。Intelは最新世代の18AですでにGAAと裏面給電を実装しており、これが次のCFET世代への布石になっています(Intel/ Tom's Hardware)。
CFETの先には何があるのか
CFETでも、いずれシリコンの薄さが限界になります。そこで研究が進むのが、原子わずか数層の「2次元材料」(MoS₂など)をチャネルに使う構想です。なぜなら、シリコンより薄い層でも電気をよく制御できるためで、究極の微細化の候補としてimecのロードマップに登場しています。
こうした構造の進化は、「チップに回路を焼き付ける製造技術」の限界を絶えず押し広げます。そして、より少ない面積と電力で多くのトランジスタを積む流れは、膨大な計算を求める「AI半導体」の要求そのものです。トランジスタの「積む」革新は、AI時代の性能を支える土台になります。なお本記事は投資助言ではありません(imec)。
この記事のまとめ
- GAAでも単体トランジスタの縮小は限界に近く、面積縮小の主役は「n型とp型をどれだけ詰めるか」へ移った。
- forksheetはn/pの間に絶縁の壁を立てて間隔を詰める。間隔をFinFET比約35%・トラックハイト5T→4.3Tに縮小。
- CFETはn型をp型の真上に縦積みし、横の距離をゼロに。トラックハイト4T以下で面積をほぼ半減できる。
- imecはCFETをA7世代(2031年見込み)から想定。Intel・TSMC・SamsungがIEDM 2023でインバータを実証。
- CFETは製造が極めて難しく裏面給電と併用。さらに先は原子数層の2次元材料が候補に挙がる。
この記事のまとめ
- GAAでも単体トランジスタの縮小は限界に近く、面積縮小の主役は「n型とp型をどれだけ詰めるか」へ移った。
- forksheetはn/pの間に絶縁の壁を立てて間隔を詰める。n-p間隔をFinFET比約35%・トラックハイト5T→4.3Tに縮小。
- CFETはn型をp型の真上に縦積みし、横の距離をゼロに。トラックハイト4T以下で面積をほぼ半減できる。
- imecはCFETをA7世代(2031年見込み)から想定。Intel・TSMC・SamsungがIEDM 2023でインバータを実証。
- CFETは製造が極めて難しく、裏面給電と併用。さらに先は原子数層の2次元材料が候補に挙がる。
よくある質問(FAQ)
Q.CFETとは何ですか?+
CFET(相補型FET)は、n型のトランジスタをp型の真上に縦に積み重ねる構造です。これまで横に並べていたn型とp型を縦に重ねることで、横方向の距離がなくなり、同じ機能の回路を約半分の面積に収められます。GAAの次の世代として、imecはA7ノード(2031年見込み)からの導入を想定しています。
Q.forksheetとは何ですか?+
forksheet(フォークシート)は、n型とp型のトランジスタの間に絶縁の「壁」を立て、両者を近づけて並べる構造です。GAA(ナノシート)とCFETの中間にあたり、n-p間隔を最先端FinFETの約35%(17nm)まで詰められます。imecが提案し、2nm・1nm級でナノシートを延命する技術です。
Q.なぜ単体の縮小ではなく面積(縦積み)が主役になるのですか?+
トランジスタ単体を小さくする余地が物理的に小さくなったためです。そこで「n型とp型をどれだけ詰めて配置できるか」=標準セルの高さ(トラックハイト)を縮める方向に競争が移りました。forksheetで壁を使って詰め、CFETで縦に積むことで、単体を小さくしなくても面積を縮小できます。
用語集
- GAA(ゲートオールアラウンド)/ Gate-All-Around
- チャネルを上下左右の全周からゲートで囲む最先端トランジスタ。FinFETよりさらに電気の漏れを抑えられる。
- forksheet(フォークシート)/ forksheet FET
- n型とp型のトランジスタの間に絶縁の「壁」を立て、両者を近づけて並べる構造。GAAとCFETの中間。
- CFET(相補型FET)/ Complementary FET
- n型のトランジスタをp型の真上に積み重ねる構造。横に並べないので、同じ機能を約半分の面積に収められる。
- トランジスタ/ transistor
- 電気のスイッチ。オン/オフで「0と1」を表し、計算と記憶の最小単位になる。
- FinFET(フィンフェット)/ Fin Field-Effect Transistor
- 薄い「ひれ(フィン)」を立て、ゲートが3面から囲む立体トランジスタ。平面型より電気の漏れを抑えられる。
参考資料・引用元
- Imec Reports First Electrical Demonstration of Integrated Forksheet Devices to extend Nanosheets beyond 2nm一次情報imec(プレスリリース)(2021)— 使用箇所: forksheetはn/pの間に絶縁の壁を立て、n-p間隔を17nm(最先端FinFETの約35%)まで詰める。トラックハイトを5T→4.3Tに縮小。nanosheetとCFETの橋渡しhttps://www.imec-int.com/en/press/imec-reports-first-electrical-demonstration-integrated-forksheet-devices-extend-nanosheets
- CFET (complementary FET) — imec technology roadmap調査会社imec(2024)— 使用箇所: CFETはn型とp型を縦に積み、n-p分離をセル高から排除。トラックハイトを4T以下へ。imecはA7ノード(2031年見込み)からのCFET導入を想定。monolithic CFETが最も実現が早いhttps://www.imec-int.com/en/articles/imec-puts-complementary-fet-cfet-logic-technology-roadmap
- Intel, Samsung, and TSMC Demo 3D-Stacked Transistors (CFET) at IEDM 2023調査会社IEEE Spectrum / TechPowerUp(2023-12)— 使用箇所: IEDM 2023でIntel・Samsung・TSMCがCFETインバータを実証。Intelは3層nFETを3層pFET上に積層(垂直分離30nm)・裏面コンタクト。TSMCは2024年にゲートピッチ48nmの動作インバータ。量産は2023年から7〜10年先との見方(要確認)https://spectrum.ieee.org/cfet-intel-samsung-tsmc
- Intel 18A — RibbonFET(GAA)とPowerVia(裏面給電)一次情報Intel(Foundry)/ Tom's Hardware(2024)— 使用箇所: Intel 18AはRibbonFET(GAA)とPowerVia(裏面給電)を採用。Intel 3比で密度30%超向上。裏面給電は配線を信号と電力で分離し性能・密度を改善https://www.intel.com/content/www/us/en/foundry/process/18a.html
- 2D-material based devices in the logic scaling roadmap調査会社imec(2024)— 使用箇所: CFETのさらに先、原子数層の2次元材料(MoS2等)をチャネルに使う構想がロジック微細化ロードマップに登場https://www.imec-int.com/en/articles/introducing-2d-material-based-devices-logic-scaling-roadmap
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