メモリには「速いが消える」と「遅いが消えない」という、なかなか両立しない2つの性質があります。その間を埋める新しいメモリの開発が、長年続いています。メモリの基礎は「AIの性能を決めていたのは、GPUより「メモリ」だった」で確認しつつ、3つの新方式を見ていきます。
いまのパソコンやスマホは、作業用の速い記憶(DRAM)と、保存用の消えない記憶(NAND)を分けて使っています。DRAMは電源を切ると忘れ、NANDは遅い——この弱点を同時に解決する『速くて消えない』新しいメモリを作ろうとしているのが、ReRAM・PCM・FeRAMです。原理はそれぞれ違いますが、目指すゴールは同じです。
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3方式はストレージクラスメモリ(DRAMとNANDの中間層)や組込み用途を狙う。技術的には魅力的だが、DRAM/NANDのビット単価とエコシステムの優位が壁。Intel Optane(3D XPoint)の2022年撤退が、性能だけでは普及しない難しさを示す。当面はIoT・車載・MCU組込み(特にFeRAM/MRAM系)など、コストより信頼性・低消費電力が効く市場が現実解。
なぜ次世代メモリが必要なのか
次世代メモリが求められるのは、現在の主役であるDRAMとNANDが、それぞれ弱点を抱えているためです。
は高速で、コンピュータの作業机の役割を担いますが、電源を切るとデータが消える「揮発性」メモリです。しかも微細化が物理的な限界に近づき、これ以上の大容量化が難しくなっています。一方、型フラッシュは電源を切っても消えない「不揮発性」ですが、読み書きがDRAMより桁違いに遅いという弱点があります。
この「速いが消える」と「消えないが遅い」のすきまを埋め、両方の良さを併せ持つメモリ——それが次世代不揮発メモリの狙いです。DRAMほど速く、NANDのように消えない記憶があれば、コンピュータの構造そのものが変わります。たとえば電源を入れた瞬間にすぐ使える、消費電力の小さい機器が当たり前になります。さらに、AIの普及で扱うデータ量が爆発的に増えるなか、この“中間のメモリ”への期待は年々高まっています。
ReRAM(抵抗変化メモリ)とはどんな仕組みか
ReRAMとは、材料に電圧をかけて電気の通りやすさ(抵抗)を変化させ、その抵抗の高い・低いでデータの0と1を記録するメモリです。
仕組みは比較的単純です。2つの電極で薄い金属酸化物をはさみ、電圧をかけると内部に電気の通り道(フィラメント)ができたり消えたりします。この通り道の有無で抵抗が変わり、それを読み取ります。構造が単純なため微細化しやすく、低消費電力で高速、という長所があります。次世代メモリの有力候補の一つです。
PCMとFeRAMはどう違うのか
残る2方式、PCMとFeRAMは、データの記録に使う物理現象が異なります。
PCM(相変化メモリ)は、特殊な材料を熱で「結晶状態」と「アモルファス状態(バラバラの状態)」に切り替え、その抵抗の差でデータを記録します。書き換えが速く、Intelが「Optane」という製品で実用化しました。
一方、FeRAM(強誘電体メモリ)は、強誘電体という材料の中で電気の向きを反転させてデータを記録します。書き換えが非常に速く、書き換え可能な回数(寿命)が桁違いに長いのが特徴です。
3方式の違いを整理すると、次のようになります。
| 方式 | 記録に使う現象 | 主な強み | 代表例 |
|---|---|---|---|
| ReRAM | 抵抗変化(電気の通り道の有無) | 微細化しやすい・低消費電力 | 各社が研究・一部量産 |
| PCM(相変化) | 結晶/アモルファスの状態変化 | 高速・大容量化しやすい | Intel Optane(終了) |
| FeRAM | 強誘電体の分極の反転 | 超高速・長寿命・低消費電力 | 富士通・組込み用途 |
(出典:調査各社)
なお、電子の磁気(スピン)を使うMRAMも同じ次世代不揮発メモリの仲間です。その仕組みは「電子の“自転”を使う半導体が、電源を切っても記憶を保つ」で詳しく扱っています。
次世代メモリはDRAMやNANDを置き換えるのか
結論から言えば、完全な置き換えは当面起きません。最大の理由はコストです。
DRAMとNANDは数十年の改良で、ビットあたりの単価を極限まで下げてきました。新方式がいくら高性能でも、この安さと、すでに普及した製造・設計のエコシステムに追いつくのは容易ではありません。実際、Intelの相変化メモリ「Optane」は高性能でしたが、コストで普及せず2022年に事業終了しました(Intel)。
そのため当面は、DRAMとNANDの中間を埋める「ストレージクラスメモリ」や、IoT・車載・マイコン組込みといった、コストより低消費電力や信頼性が効く特定用途で実用化が進む見込みです。半導体そのものの基礎は「半導体とは何か」で確認できます。
この記事のまとめ
- 次世代不揮発メモリは、「速いが消えるDRAM」と「消えないが遅いNAND」のすきまを埋めるのが狙い。
- ReRAMは抵抗変化、PCMは結晶/アモルファスの状態変化、FeRAMは強誘電体の分極でデータを記録する。
- 3方式は高速・低消費電力・長寿命など強みが異なり、用途で使い分けが進む。
- DRAM・NANDはコストが圧倒的に安く、全面的な置き換えは難しい(Optaneは2022年に終了)。
- 当面はストレージクラスメモリやIoT・車載など特定用途で実用化が進む。
この記事のまとめ
- DRAMは速いが消える・NANDは消えないが遅いという“すきま”を埋めるのが次世代不揮発メモリの狙い。
- ReRAMは抵抗変化、PCM(相変化)は結晶/アモルファスの状態変化、FeRAMは強誘電体の分極でデータを記録する。
- それぞれ高速・低消費電力・長寿命など強みが異なり、用途によって使い分けが進む。
- DRAM・NANDはコストが圧倒的に安く、新方式が全面的に置き換えるのは難しい(Optaneは2022年に終了)。
- 当面はストレージクラスメモリやIoT・車載などの特定用途で実用化が進む。
よくある質問(FAQ)
Q.次世代メモリはなぜ必要なのですか?+
現在の主役であるDRAMは高速ですが電源を切るとデータが消え、微細化も限界に近づいています。一方NAND型フラッシュは電源を切っても消えませんが、読み書きが遅いという弱点があります。この『速いが消える』と『消えるが遅い』のすきまを埋め、両方の良さを併せ持つメモリが求められているためです。
Q.ReRAM(抵抗変化メモリ)とは何ですか?+
ReRAMとは、材料に電圧をかけて電気の通りやすさ(抵抗)を変え、その高低でデータの0と1を記録するメモリです。構造が単純で微細化しやすく、低消費電力で高速という特徴があります。電源を切ってもデータが消えない不揮発メモリの一種です。
Q.相変化メモリ(PCM)とFeRAMの違いは何ですか?+
PCM(相変化メモリ)は、材料を結晶状態とアモルファス状態に切り替え、その抵抗差でデータを記録します。Intelの『Optane』に使われました。FeRAM(強誘電体メモリ)は、強誘電体という材料の分極(電気の向き)の向きでデータを記録し、書き換えが非常に速く長寿命です。記録に使う物理現象が、PCMは『状態変化』、FeRAMは『分極』という点で異なります。
Q.次世代メモリはDRAMやNANDを置き換えますか?+
完全な置き換えは当面起きません。DRAMやNANDは長年の改良で安く大量に作れるため、コストで新方式が追いつくのが難しいからです。実際、Intelの相変化メモリOptaneは2022年に事業終了しました。当面は、DRAMとNANDの中間を埋めるストレージクラスメモリや、IoT・車載などの特定用途で使われていく見込みです。
用語集
- DRAM/ Dynamic Random Access Memory
- 電源を切ると消える、高速な作業用メモリ。CPUやGPUが計算中のデータを一時的に置く。
- NAND(NANDフラッシュ)/ NAND flash
- 電源を切ってもデータが消えない記憶装置。SSDやスマホのストレージに使われる。
- ノード(プロセス)/ process node
- 製造プロセスの世代を表す呼び名(例:3nm)。小さいほど高性能・省電力になりやすい。
- 歩留まり/ yield ヨミ:ぶどまり
- 1枚のウェハーから取れるチップのうち、欠陥のない良品の割合。
参考資料・引用元
- 次世代不揮発メモリ(ReRAM/PCM/FeRAM)の方式と市場調査会社調査各社(媒体集計)(2025)— 使用箇所: ReRAM(抵抗変化)/PCM(相変化)/FeRAM(強誘電体)の動作原理比較と、DRAM/NANDの中間を埋めるストレージクラスメモリの位置づけhttps://www.imec-int.com/en
- IntelがOptane(3D XPoint/相変化系)事業を終了報道Intel(報道集計)(2022-07)— 使用箇所: 3D XPoint採用のOptaneが2022年に事業終了・新方式メモリの商用化の難しさの実例https://www.intc.com/
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