2025年、AI用広帯域メモリ(HBM)の売上シェアでSK hynixは約61%を握り、NVIDIAは事実上その1社に頼り続けていた。しかし2026年6月から量産が始まったNVIDIA「Vera Rubin」向けHBM4には、サムスン・SK hynix・マイクロンの3社が並んで採用された。AIメモリの独占が崩れた背景と、それでも変わらない構造を解説する。

AI用メモリの仕組みと需給全体は「HBMとCoWoSの基礎」で、GPUがAI計算に向く理由は「CPUとGPUの違いは“手数”だった——GPUがAIの主役になれた理由」で扱っています。ここでは「誰が供給し、どのように競争構造が変わったか」に絞ります。

ひとことで言うと(初心者向け)

AI用の超高速メモリ(HBM)は、これまでSK hynixというメーカーが約6割を独占供給していました。2026年、NVIDIAの最新GPUにサムスン・SK hynix・マイクロンの3社が同時採用され、初めて「1社独占」が崩れました。ただし需要先はNVIDIAほぼ1社で、メモリ不足の状況は変わっていません。

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構造で言うと(投資家向け)

2025年HBM売上シェア:SK hynix約61%・Micron約21%・Samsung約17%(要確認)。Vera Rubin向けHBM4で3社が初めて揃って採用。SK hynixはMR-MUFと先行投資で優位を維持し、HBM4E(48GB・16Gbps/pin・電力効率+20%)を6/18先行出荷。Samsungは初期HBM3E歩留まり問題から復帰しHBM4採用を獲得。MicronはBlackwell向けHBM3Eを経てHBM4へ。需要はNVIDIA集中が継続。

HBMとは何か、なぜAI GPUに欠かせないのか

は、(メモリのチップ)を何段も縦に積み重ねた高性能メモリです。チップを貫く数千本の配線で直結し、一度に運べるデータ量(帯域幅)を桁違いに高めています。通常のメモリの帯域幅が毎秒最大約100GBであるのに対し、JEDECが2025年4月に標準化したHBM4は積層1つで毎秒最大2TBを実現します。前世代のHBM3Eに比べて、データの通り道の本数を2倍に増やしたためです。

AI GPUで大型モデルを動かすには、数千億個に達するモデル本体の数値(パラメータ)や、会話の文脈を保持する作業データを高速で読み書きする必要があります。演算性能を上げても、データを送り込む帯域が不足すれば性能は出ません。このためNVIDIA「Vera Rubin」はGPU1基あたり最大288GBのHBM4を搭載し、毎秒22TBのデータを流し込めます。

なぜSK hynixが61%のシェアを握れたのか

は世代ごとに、積んだチップを固めて封止する技術の習熟度が問われます。SK hynixは、溶かした樹脂でチップの隙間を一括で埋める独自の封止技術「MR-MUF」を確立し、積層後の反りと不良率を低減しました。そのため2023年、NVIDIAの主力GPU向けに当時の最新世代HBM3を先行供給することに成功し、続く世代のHBM3Eでもリードを維持しました。

この先行者利益が積み重なった結果、2025年のHBM売上シェアはSK hynix約61%・Micron約21%・Samsung約17%(要確認)に達しました。SK hynixはHBMの需要が今後3年分の生産能力を超えると予測し、を前年比4倍超に積み増しています。

サムスンはなぜHBM3Eで遅れたのか

サムスンは長年DRAMで世界首位を維持してきましたが、HBM3Eの量産では封止工程の壁にぶつかりました。サムスンが採用した「TC-NCF」(チップの間にフィルムを挟み、熱で圧着する方式)は、積層後の反りへの耐性でSK hynixのMR-MUFに比べて量産の安定化に時間を要しました。その結果、NVIDIA向けの大口採用が遅れました。

この遅れがシェアを直撃しました。SK hynixとMicronがシェアを固める間、Samsungの2025年HBMシェアは約17%(要確認)にとどまりました。しかし2026年に入りサムスンはHBM3Eの量産を安定化させ、HBM4の開発も加速させました。一部報道によれば、サムスンは2026年5月末に12層HBM4Eのサンプルを出荷しており、SK hynixの6月18日出荷と競り合っています。

マイクロンの追い上げと米国勢の存在感

Micronはメモリ3強の中で規模が最も小さく、HBMへの参入も後発でした。しかし2026年2月にはNVIDIAの前世代GPU向けに12層HBM3Eの供給を開始し、約30%の電力効率優位を訴求してシェアを確立しました。

Micronにとって重要なのは地政学的なポジションです。米国唯一のDRAM/HBMメーカーとして、半導体産業の国内製造を重視する政策と整合します。Micronは米国内への約2,000億ドル規模の投資計画を公表しており、HBMの(チップを積層・封止する組み立て工程)を含む製造体制を国内で整備する方針です。Vera Rubin向けHBM4の3社採用は、Micronがサプライヤーとして確固たる地位を得たことを示しています。

NVIDIA Vera Rubin向けHBM4で3社が初めて並んだ意味

2026年6月から量産が始まったNVIDIA「Vera Rubin」は、サムスン・SK hynix・マイクロンの3社がHBM4の供給元として名を連ねた、初の「3社体制」世代です。

HBM3EまではSK hynixとMicronが中心で、Samsungは主要受注から大きく遅れていました。3社が揃ったことで、NVIDIAは特定の1社への調達依存リスクを分散でき、サプライヤー間の競争を促す立場にもなります。さらにのと組み合わせることで、AI加速器システム全体の供給安定化が図られます。

SK hynixは2026年第1四半期のHBMシェアを約58〜61%(要確認)で維持し、2026年6月18日にはHBM4Eの12層サンプルを主要顧客に出荷しています。容量は48GBで、データの転送速度を高めながら、電力効率を20%・熱への強さを17%改善しました。

独占は崩れたが「需要の集中」は変わっていない

HBMのサプライヤーが3社に広がっても、需要の行き先の集中は変わっていません。AIの・の主力GPUをNVIDIAが圧倒的なシェアを持つ限り、HBMの最大顧客はNVIDIAであり続けます。HBM4Eの需要もNVIDIAへの集中が続いており、この構図はVera Rubin後の世代でも当面変わらないとみられています。

メーカー2025年HBMシェア(要確認)HBM3Eの主な採用HBM4対応
SK hynix約61%NVIDIA H200/B200 先行供給Vera Rubin採用・HBM4E先行
Micron約21%NVIDIA Blackwell(2026-02出荷)Vera Rubin採用
Samsung約17%HBM3E後発・限定採用Vera Rubin採用・HBM4Eサンプル競争

3社競争の深化は「AIメモリのスーパーサイクル」、「Vera Rubinの全容」で確認できます。

この記事のまとめ

  • 2025年のHBM売上シェアはSK hynix約61%・Micron約21%・Samsung約17%で、SK hynixが圧倒的首位だった。
  • NVIDIA Vera Rubin向けHBM4では、サムスン・SK hynix・マイクロンの3社が初めて揃ってサプライヤーになった。
  • Samsungは初期HBM3EのTC-NCF封止課題で遅れたが、HBM4でVera Rubin採用を得て競争に復帰した。
  • Micronは米国唯一のHBMサプライヤーとして地位を固め、約2,000億ドルの国内投資でさらに強化する。
  • 需要はNVIDIAに集中したまま。3社体制はリスク分散を促すが、AIメモリ全体の逼迫は続く。

この記事のまとめ

  • 2025年のHBM売上シェアはSK hynix約61%・Micron約21%・Samsung約17%で、SK hynixが圧倒的首位だった。
  • NVIDIA Vera Rubin向けHBM4では、3社が初めて揃ってサプライヤーに名を連ねた。
  • Samsungは初期HBM3Eの歩留まり課題で遅れたが、HBM4でVera Rubin採用を得て競争に復帰した。
  • Micronは米国唯一のHBMサプライヤーとして地位を確立し、Vera Rubin採用で存在感を高めた。
  • 需要はNVIDIAに集中したまま。3社体制はリスク分散を促すが、AIメモリ全体の逼迫は続く。
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よくある質問(FAQ)

Q.HBMとHBM4はどう違うのですか?+

HBMはAI GPU向けの広帯域積層メモリ規格の総称です。世代が上がるにつれ帯域幅・容量・電力効率が向上します。HBM4はJEDECが2025年4月に標準化した現行最新世代で、ビット幅が2048ビット(前世代HBM3Eの1024ビットから倍増)となり、1スタックで最大2TB/sの帯域幅と最大64GBの容量を実現しています。

Q.SK hynixはなぜHBM市場でリードできているのですか?+

SK hynixはNVIDIAと早期から密接に協業し、独自封止技術MR-MUFでスタック時の接合不良を低減しながら、NVIDIA H100向けHBM3を2023年に先行供給しました。この先行者利益が積み重なり、2025年にHBM売上シェア約61%を獲得しました。サムスンは初期HBM3Eで歩留まり課題を抱えて出遅れ、マイクロンは規模で劣る状況が続き、SK hynixのリードが固まりました。

Q.サムスンはHBM競争で立て直せますか?+

2026年6月時点では、NVIDIAのVera Rubin向けHBM4にサムスンが採用されており、HBM3E期の劣勢から一歩踏み出した形です。一部報道ではHBM4Eのサンプル出荷でSK hynixと拮抗したとも伝えられています。ただしSK hynixは設備投資を大幅に拡大しており、量産シェアの逆転には相応の時間がかかるとみられています。

Q.なぜHBMの需要がNVIDIA1社に集中するのですか?+

AI学習・推論の主力GPUをNVIDIAが大きなシェアを持つためです。GPUには大量のHBMが必要で、NVIDIA Vera Rubin(NVL72)では72基のGPUで最大288GBのHBM4を搭載します。AWS・Google・Microsoftも自社ASICを開発していますが、HBMの採用規模ではNVIDIAが依然として圧倒的に大きく、HBM4Eの需要はNVIDIAに集中している状況が続いています。

用語集

HBM/ High Bandwidth Memory
DRAMを積み重ねて広帯域にした高性能メモリ。AI半導体とセットで使われる。
DRAM/ Dynamic Random Access Memory
電源を切ると消える、高速な作業用メモリ。CPUやGPUが計算中のデータを一時的に置く。
CoWoS(コーワス)/ Chip on Wafer on Substrate
GPUと記憶用のHBMなど複数のチップを、1枚の土台(インターポーザ)の上に並べて1つのパッケージにまとめるTSMCの先端パッケージング技術。
推論(インファレンス)/ inference
学習済みのAIを実際に使って答えを出す処理。質問に答える・文章を生成するなど、利用時の計算がこれにあたる。
学習(トレーニング)/ training
大量のデータからAIモデルを作り込む処理。膨大な計算力を一度に必要とし、巨大なGPUクラスタを使う。
後工程(OSAT)/ back-end / OSAT
ウェハーから切り出したチップを検査・組み立て・パッケージする工程。
設備投資(capex)/ capital expenditure
工場や機械など、長く使う設備を買うためにかけるお金。
ファウンドリ/ foundry
他社が設計した半導体を、受託して製造する工場。代表はTSMC。
パッケージング(先端パッケージング)/ advanced packaging
切り出したチップを基板に載せ、配線し、保護する工程。複数のチップを高密度につなぐ先端版もある。

参考資料・引用元

  1. JEDEC Releases JESD270-4 HBM4 Standard: Advancing Bandwidth, Efficiency, and Capacity for AI and HPC業界団体
    JEDEC(2025-04-16)— 使用箇所: HBM4の2048-bitインターフェース・最大8Gb/s・最大2TB/s・チャネル16→32・4/8/12/16-Hi・最大64GB/スタック・2025年4月16日公開
    https://www.jedec.org/news/pressreleases/jedec%C2%AE-and-industry-leaders-collaborate-release-jesd270-4-hbm4-standard-advancing
  2. Nvidia Vera Rubin Enters Full Production: Samsung, SK Hynix, Micron Named HBM4 Suppliers報道
    Tech Times(2026-06)— 使用箇所: GTC Taipei 2026での量産入り・HBM4供給3社(Samsung・SK hynix・Micron)・Vera Rubin Ultra(2027後半)とHBM4Eサンプル出荷(要確認)
    https://www.techtimes.com/articles/317539/20260602/nvidia-vera-rubin-enters-full-production-samsung-sk-hynix-micron-named-hbm4-suppliers.htm
  3. SK Hynix overtakes Samsung to become South Korea's most valuable company報道
    Reuters(KED Global経由)(2026-06-22)— 使用箇所: 2026年6月22日にSK hynixの時価総額(約2,080兆ウォン)がSamsung(約2,067兆ウォン)を抜き韓国最大の上場企業になったこと、2026年に株価が340%以上上昇したこと、2025年の世界HBMシェアがSK hynix約61%・Micron約21%・Samsung約17%であること(要確認)
    https://www.kedglobal.com/korean-chipmakers/newsView/ked202606220002
  4. 2026 Market Outlook: Focus on the HBM-led Memory Supercycle一次情報
    SK hynix Newsroom(2026-01-15)— 使用箇所: 2026年がHBM主導のメモリ・スーパーサイクルになるという見通し、HBM供給が当面タイトに推移するという需給観(要確認)
    https://news.skhynix.com/2026-market-outlook-focus-on-the-hbm-led-memory-supercycle/
  5. Leading Memory Innovation with HBM3E一次情報
    Samsung Semiconductor(技術ブログ)(2024)— 使用箇所: HBM3Eは24GbのDRAMダイを12段積層し36GBを実現、8段と同じ高さに収めるため各ダイを極薄化(TSV接続)
    https://semiconductor.samsung.com/news-events/tech-blog/leading-memory-innovation-with-hbm3e/
  6. HBM4 Sticks With Microbumps, Postponing Hybrid Bonding報道
    Semiconductor Engineering(2025-11)— 使用箇所: HBM4が当面マイクロバンプ(MR-MUF/TC-NCF)継続・ハイブリッドボンディング延期・Samsung早期採用検討(要確認・日付概算)
    https://semiengineering.com/hbm4-sticks-with-microbumps-postponing-hybrid-bonding/
  7. HBM market share 1Q26(SK hynix首位)調査会社
    Counterpoint/TrendForce(報道経由)(2026)— 使用箇所: HBM市場シェア1Q26でSK hynixが約58〜61%で首位・Samsung/Micronが各約21%・HBM4E現需要はNVIDIAに集中(要確認・調査会社/報道集計)
    https://www.counterpointresearch.com/
  8. SK hynix Ships Samples of 12-Layer Next-Gen 'HBM4E'一次情報
    SK hynix Newsroom(公式)(2026-06-18)— 使用箇所: SK hynixが2026-06-18に12層HBM4Eサンプルを主要顧客へ出荷・容量48GB(12段)・最大16Gbps/pin・電力効率20%超改善・耐熱性17%改善(対HBM4)・Advanced MR-MUF採用・『予定通り(on schedule)』出荷と表明
    https://news.skhynix.com/12-layer-hbm4e-sample/
  9. SK hynix Ships 12-Layer HBM4E Samples Ahead of Schedule, Tightening the Race With Samsung報道
    Tech Times(2026-06-19)— 使用箇所: 4月決算で示した下期予定より前倒しとの媒体評価・Samsungとの競争激化(Samsungは5月末に12層HBM4Eサンプル出荷)・需要はNVIDIA中心という構図(要確認・公式は『予定通り』表現)
    https://www.techtimes.com/articles/318633/20260619/sk-hynix-ships-12-layer-hbm4e-samples-ahead-schedule-tightening-race-samsung.htm
  10. Micron Announces First Dual Shipping of HBM3E and SOCAMM for AI Servers (GTC 2025)一次情報
    Micron Technology(2025-03)— 使用箇所: 12層HBM3EのNVIDIA Blackwell向け供給・約30%の電力効率優位
    https://www.micron.com/about/newsroom/news-releases
  11. Micron Announces Expanded U.S. Investment of ~$200 Billion一次情報
    Micron Technology(2025-06)— 使用箇所: 米国投資総額約2,000億ドル計画・ボイシ/NY新工場・HBM後工程
    https://www.micron.com/about/newsroom/news-releases
  12. SK Hynix overtakes Samsung as S.Korea's most valuable company報道
    KED Global(The Korea Economic Daily)(2026-06-22)— 使用箇所: SK hynixの連騰と時価総額が約2,000兆ウォン規模に達したこと、HBM4需要が今後3年分の生産能力を上回るとされること(要確認)
    https://www.kedglobal.com/korean-chipmakers/newsView/ked202606220002

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