NVIDIAブラックウェル(Blackwell)は、AIの計算を担う最新世代のGPUです。2枚のチップをつなぎ合わせた独特の構造で208億個のトランジスタを積み、前世代より大幅に多くのAIメモリを搭載しました。1ラックあたりの消費電力が急増したため、データセンターで液冷が標準になりつつあります。
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BlackwellはB200 GPU(2ダイ・208億Tr・TSMC N4P)+Grace CPUのプラットフォーム。HBM3Eは192GB/8TB/s(H100比容量2.4倍・帯域2.4倍)。第5世代NVLink 1.8TB/s/GPU、NVL72で72GPU/36CPU・130TB/s集約。B200 SXM TDP約1,000W→液冷専用。NVIDIA FY2026データセンター売上1,937億ドル(FY2024比約4倍)。後継Vera Rubinは2026年H2〜。
NVIDIAブラックウェルとは何か
NVIDIAブラックウェル(Blackwell)とは、2024年3月にNVIDIAがGTC(GPU Technology Conference)で発表したデータセンター向けGPUアーキテクチャの世代名称だ。前世代「Hopper(H100・H200)」の後継であり、製品の中核はB200 GPUと、それをGrace CPU(Arm Neoverse設計)と組み合わせたGB200 NVL72システムだ。B200 GPUは208億個のを集積し、TSMCの4nmクラスプロセス(N4P)で製造される。Blackwellという名称は、統計決定理論の先駆者であるアメリカ人数学者デービッド・H・ブラックウェルに由来する。
NVIDIAはH100でAIアクセラレータ市場を押さえたが、大規模言語モデル(LLM)のパラメータ数増加が止まらないなかで、さらなるメモリ容量と帯域幅の拡大が不可欠になった。Blackwellはその要求に応えるために設計を根本から見直した世代だ。
一次情報出典NVIDIA Blackwell Platform Arrives to Power a New Era of Computing発行NVIDIA Newsroom公開2024-03使用箇所Blackwell B200 GPU:208億トランジスタ・2ダイ構造(2枚のGPUダイをNVLink-C2C 900GB/sで接続)・TSMCの4nmクラスプロセス(N4P)を採用・HBM3E 192GB/8TB/s搭載・FP8推論性能がH100比大幅向上(要確認)。GB200 NVL72システム:72基のB200 GPUと36基のGrace CPUで構成。GTC 2024(2024-03-18)での発表内容(URL要確認)なぜH100の後継は2枚のダイを貼り合わせたのか
B200 GPUの最大の構造的特徴は、2枚のダイをNVLink-C2C(chip-to-chip)インターコネクトで接続した2ダイ構成だ。これは設計の考え方を応用したものだ。
なぜ分割したのか。半導体製造では、ダイが大きいほど製造工程で微細な欠陥に当たる確率が高くなり、が悪化する。B200のように数がH100の約80億から208億へと2.6倍に増えると、単一ダイに収めようとすると製造コストが急騰する。2ダイに分割することで1枚あたりの面積を抑え、歩留まりと製造コストを現実的な水準に維持できる。
2枚のダイをつなぐNVLink-C2Cは片方向900GB/sの帯域を持ち、GPU内部通信のボトルネックを最小化する。これはPCIeバスとは比較にならない速度であり、2ダイを実質的に1つのGPUとして動作させることを可能にしている。
HBM3Eとは何か、なぜ搭載量がH100の2倍以上に増えたのか
Blackwellが採用する3Eは、DRAMダイを縦方向に8層積み重ね、B200 1基あたり192GBのメモリ容量と8TB/sの帯域幅を実現する。前世代H100(HBM3:80GB・3.35TB/s)と比べると、容量は2.4倍、帯域も2.4倍だ。
一次情報出典NVIDIA H100 Tensor Core GPU データシート発行NVIDIA公開2023使用箇所H100 SXM5のスペック:FP32約67 TFLOPS・FP16 Tensor Core約1,979 TFLOPS・FP8 Tensor Core約3,958 TFLOPS・HBM3メモリ帯域幅3.35 TB/s・HBM3容量80GB・TDP 700W(要確認・NVIDIAの公式データシートを参照)なぜこれほどメモリが重要なのか。大規模言語モデルの処理では、質問が届くたびにモデルの全パラメータをGPUメモリから読み出す。GPT-4相当のモデルは数百GBのメモリを必要とし、H100の80GBでは複数GPUに分散しなければならなかった。Blackwellの192GBはこの分散コストを削減し、レイテンシと電力効率を改善する。「AIのメモリが学習・推論の性能を決める仕組み」は別記事で詳しく解説している。
MicronはNVIDIA向けに12層HBM3Eを供給し、その電力効率が前世代比で約30%改善したと発表した。HBM3EはSK hynix・Samsung・Micronの3社が製造し、TSMCの実装でGPUダイと同一パッケージに収める。
一次情報出典Micron Announces First Dual Shipping of HBM3E and SOCAMM for AI Servers (GTC 2025)発行Micron Technology公開2025-03使用箇所12層HBM3EのNVIDIA Blackwell向け供給・約30%の電力効率優位NVL72はなぜ72基のGPUを1ラックに詰め込んだのか
GB200 NVL72は、NVIDIAが設計したラックスケールのAIコンピュータだ。1ラックあたり72基のB200 GPUと36基のGrace CPUを搭載し、第5世代NVLinkが全GPUを130TB/sの帯域で相互接続する。第5世代NVLinkはGPU1基あたり1.8TB/sの帯域幅を持ち、18本のリンク(1本あたり100GB/s)で構成される。単一のNVL72ドメイン内では最大576基のGPUまでスケールアップできる。
一次情報出典NVIDIA Blackwell Architecture (Fifth-generation NVLink, NVLink Switch, NVL72)発行NVIDIA公開2024使用箇所第5世代NVLinkの帯域(GPUあたり1.8TB/s、18リンク×100GB/s)、NVL72ドメイン(72GPU・130TB/s)、最大576GPUスケールアップ(要確認) 一次情報出典NVIDIA GB200 NVL72発行NVIDIA公開2024使用箇所AIラックの代表例。1ラックに72基のBlackwell GPU+36基のGrace CPU、第5世代NVLink 130TB/s、液冷設計。消費電力は公称約120kW(実装仕様では液冷115+空冷17=約132kW)AI学習や推論のボトルネックがGPU演算速度からメモリ帯域へ移行しつつある今、GPU間通信の速度がモデル並列化の効率を左右する。「1ラックあたりの電力密度がどこまで膨らんでいるか」は、このNVL72の登場とともに業界の焦点になった。NVL72がこれほど多数のGPUを1ラックに収めた背景には、「NVIDIAが20年かけて構築したCUDAエコシステム」がある。競合のInfiniBandや汎用イーサネットでは同等の帯域を実現するためにラックをまたぐケーブル配線が必要だが、NVL72はNVLinkで完結させる。
なぜブラックウェルは液冷専用になったのか
B200 SXM(サーバー向け)のTDP(熱設計電力)は約1,000Wだ。前世代H100 SXMの700Wから約43%増加した。NVL72ラック全体では公称約120kWに達し、従来の空冷設備では排熱しきれない。
ラック電力密度が5〜10kWだった時代は、空調でサーバーを冷やせた。しかしNVL72の約120kWは同じ床面積あたりの発熱量が15倍以上になる。水は空気に比べ体積比熱が約3,500倍大きく、同じ体積でより多くの熱を運べる。配管をGPUの直近に配置する「ダイレクト・トゥ・チップ液冷」だけが、この熱量を現実的なコストで処理できる。NVIDIAはBlackwellから液冷を事実上の標準とし、データセンターの設計が電力・冷却の両面で大規模な改修を余儀なくされている。
調査会社出典Electricity Demand and Grid Impacts of AI Data Centers: Challenges and Prospects発行arXiv(査読前論文)公開2025使用箇所ラック電力:従来7〜10kW、AI向けは30〜100kW超(NVIDIA GB200 NVL72で約120kW) 報道出典The data center cooling state of play (2025): Liquid cooling is on the rise発行Tom's Hardware公開2025使用箇所2025年に液冷が主流化。ダイレクト・トゥ・チップは最大250kW級・空気の約1,000倍の除熱。空冷は8〜12kW想定ブラックウェルはNVIDIAの業績をどう変えたのか
NVIDIAのFY2026(2026年1月期)データセンター売上は1,937億ドルに達した。FY2024(2024年1月期)の475億ドルと比べると、2年で約4倍の規模だ。この成長の大半はBlackwellプラットフォームの急速な出荷拡大が牽引した。
一次情報出典NVIDIA Announces Financial Results for Fourth Quarter and Fiscal 2026発行NVIDIA Newsroom公開2026-02使用箇所FY2026総売上2,159億ドル・データセンター1,937億ドル・ネットワーク売上・顧客構成NVIDIAがここまでの規模の収益を上げられた背景のひとつが、2ダイ構造による製造コストの抑制だ。単一ダイでは実現が難しかった大容量メモリと高帯域を実現しつつ、歩留まりを現実的な水準に保てたためだ。次世代の「Vera Rubin(Rubin GPUは336億トランジスタ・HBM4最大288GB)は2026年後半から出荷が始まっており」、Blackwellとの世代交代が進む。
Blackwellの普及は「HBMサプライチェーン全体」の拡大も後押しした。SK hynix・Samsung・MicronがBlackwell向けHBM3Eを供給し、TSMCがCoWoS実装を担う構造は、AIインフラへの投資が半導体バリューチェーン全体に波及する典型例となった。
この記事のまとめ
- NVIDIAブラックウェルは2024年3月発表のGPUアーキテクチャで、B200 GPUとGB200 NVL72システムが中核。
- B200は208億トランジスタを2ダイ(NVLink-C2C)構成で集積し、単一ダイ時の歩留まり悪化を回避した。
- HBM3Eは192GB・8TB/sで、H100の80GB・3.35TB/sから容量・帯域ともに約2.4倍に拡大。
- NVL72は72基のGPUを第5世代NVLink(130TB/s)でつなぎ、576GPU規模へのスケールアップも可能。
- B200 SXMのTDPは約1,000WでNVL72ラック全体が120kW级に達し、液冷が不可欠な設計になった。
- NVIDIA FY2026のデータセンター売上は1,937億ドルで、2年で約4倍の成長をBlackwellが牽引した。
この記事のまとめ
- NVIDIAブラックウェルは2024年3月発表のGPUアーキテクチャで、B200 GPUとGB200 NVL72システムが中核。
- B200は208億トランジスタを2ダイ(NVLink-C2C接続)構成で集積し、歩留まりと計算性能を両立した。
- HBM3Eは192GB・8TB/sで、H100の80GB・3.35TB/sから容量・帯域ともに2.4倍に拡大。
- NVL72は72基のGPUを第5世代NVLink(130TB/s)でつなぎ、576GPU規模へのスケールアップも可能。
- B200 SXMのTDPは約1,000W、NVL72ラック全体で120kW级に達し液冷が不可欠になった。
- NVIDIA FY2026のデータセンター売上は1,937億ドルで、Blackwellが2年で約4倍の成長を牽引した。
よくある質問(FAQ)
Q.NVIDIAブラックウェル(Blackwell)とは何ですか?+
2024年3月にNVIDIAがGTC(GPU Technology Conference)で発表したデータセンター向けGPUアーキテクチャの世代名称です。前世代H100(Hopper)の後継で、2枚のダイをNVLink-C2Cで接続した2ダイ構成、208億トランジスタ、HBM3E 192GB(帯域8TB/s)を特徴とします。システム製品GB200 NVL72は1ラックに72基のGPUと36基のGrace CPUを搭載します。
Q.H100とブラックウェル(B200)の主な違いは何ですか?+
最大の違いはメモリと設計構造です。H100はHBM3を80GB・3.35TB/s搭載するのに対し、B200はHBM3Eを192GB・8TB/sと約2.4倍の容量・帯域を持ちます。また、H100が単一ダイなのに対しB200は2ダイ構成でトランジスタ数も約80億から208億に増加しました。消費電力はH100の700WからB200 SXMの約1,000Wへと上昇しています。
Q.なぜブラックウェルは液冷が必要なのですか?+
B200 SXM(サーバー向け)の熱設計電力(TDP)が約1,000Wと、前世代H100の700Wから約43%増加したためです。GB200 NVL72ラック全体では120kW級の発熱になり、従来の空冷設備では排熱しきれません。水は空気と比べ体積比熱が約3,500倍大きく、ダイレクト・トゥ・チップ液冷だけがこの熱量を現実的なコストで処理できます。
Q.GB200 NVL72とはどのようなシステムですか?+
NVIDIAが設計したラックスケールのAIコンピュータです。1ラックあたり72基のB200 GPUと36基のGrace CPUを搭載し、第5世代NVLink(GPUあたり1.8TB/s・18リンク)で全GPUを相互接続します。ラック全体の集約帯域は130TB/s、単一ドメインで最大576基のGPUまでスケールアップできます。消費電力は公称約120kWで、全面液冷設計が必須です。
Q.ブラックウェルの次世代はいつ出るのですか?+
後継世代の「Vera Rubin」が2026年後半から出荷を開始しています。Rubin GPUは336億トランジスタ・HBM4最大288GB(帯域22TB/s)を搭載し、Blackwell比で推論性能最大5倍・トークン単価最大1/10を謳っています。Vera RubinはNVL72ラックで72基のGPUと36基のVera CPUを搭載し、NVLink6で260TB/sを実現します。
用語集
- トランジスタ/ transistor
- 電気のスイッチ。オン/オフで「0と1」を表し、計算と記憶の最小単位になる。
- HBM/ High Bandwidth Memory
- DRAMを積み重ねて広帯域にした高性能メモリ。AI半導体とセットで使われる。
- CoWoS(コーワス)/ Chip on Wafer on Substrate
- GPUと記憶用のHBMなど複数のチップを、1枚の土台(インターポーザ)の上に並べて1つのパッケージにまとめるTSMCの先端パッケージング技術。
- チップレット/ chiplet
- 1つの大きなチップを、小さな複数のチップに分けて1パッケージに集める設計手法。歩留まりとコストを改善できる。
- 推論(インファレンス)/ inference
- 学習済みのAIを実際に使って答えを出す処理。質問に答える・文章を生成するなど、利用時の計算がこれにあたる。
- 液冷(液体冷却)/ liquid cooling
- 空気の代わりに冷却液でチップを冷やす方式。発熱の大きいAIチップを冷やすために急速に普及している。
参考資料・引用元
- NVIDIA Blackwell Platform Arrives to Power a New Era of Computing一次情報NVIDIA Newsroom(2024-03)— 使用箇所: Blackwell B200 GPU:208億トランジスタ・2ダイ構造(2枚のGPUダイをNVLink-C2C 900GB/sで接続)・TSMCの4nmクラスプロセス(N4P)を採用・HBM3E 192GB/8TB/s搭載・FP8推論性能がH100比大幅向上(要確認)。GB200 NVL72システム:72基のB200 GPUと36基のGrace CPUで構成。GTC 2024(2024-03-18)での発表内容(URL要確認)https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-blackwell-platform-arrives-to-power-a-new-era-of-computing
- NVIDIA Blackwell Architecture (Fifth-generation NVLink, NVLink Switch, NVL72)一次情報NVIDIA(2024)— 使用箇所: 第5世代NVLinkの帯域(GPUあたり1.8TB/s、18リンク×100GB/s)、NVL72ドメイン(72GPU・130TB/s)、最大576GPUスケールアップ(要確認)https://www.nvidia.com/en-us/data-center/technologies/blackwell-architecture/
- NVIDIA GB200 NVL72一次情報NVIDIA(2024)— 使用箇所: AIラックの代表例。1ラックに72基のBlackwell GPU+36基のGrace CPU、第5世代NVLink 130TB/s、液冷設計。消費電力は公称約120kW(実装仕様では液冷115+空冷17=約132kW)https://www.nvidia.com/en-us/data-center/gb200-nvl72/
- NVIDIA H100 Tensor Core GPU データシート一次情報NVIDIA(2023)— 使用箇所: H100 SXM5のスペック:FP32約67 TFLOPS・FP16 Tensor Core約1,979 TFLOPS・FP8 Tensor Core約3,958 TFLOPS・HBM3メモリ帯域幅3.35 TB/s・HBM3容量80GB・TDP 700W(要確認・NVIDIAの公式データシートを参照)https://www.nvidia.com/en-us/data-center/h100/
- Micron Announces First Dual Shipping of HBM3E and SOCAMM for AI Servers (GTC 2025)一次情報Micron Technology(2025-03)— 使用箇所: 12層HBM3EのNVIDIA Blackwell向け供給・約30%の電力効率優位https://www.micron.com/about/newsroom/news-releases
- Electricity Demand and Grid Impacts of AI Data Centers: Challenges and Prospects調査会社arXiv(査読前論文)(2025)— 使用箇所: ラック電力:従来7〜10kW、AI向けは30〜100kW超(NVIDIA GB200 NVL72で約120kW)https://arxiv.org/html/2509.07218v3
- The data center cooling state of play (2025): Liquid cooling is on the rise報道Tom's Hardware(2025)— 使用箇所: 2025年に液冷が主流化。ダイレクト・トゥ・チップは最大250kW級・空気の約1,000倍の除熱。空冷は8〜12kW想定https://www.tomshardware.com/pc-components/cooling/the-data-center-cooling-state-of-play-2025-liquid-cooling-is-on-the-rise-thermal-density-demands-skyrocket-in-ai-data-centers-and-tsmc-leads-with-direct-to-silicon-solutions
- NVIDIA Announces Financial Results for Fourth Quarter and Fiscal 2026一次情報NVIDIA Newsroom(2026-02)— 使用箇所: FY2026総売上2,159億ドル・データセンター1,937億ドル・ネットワーク売上・顧客構成https://nvidianews.nvidia.com/news/nvidia-announces-financial-results-for-fourth-quarter-and-fiscal-2026
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